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28章

 薫が屋上で一人になってから数分後。

「……誰か近づいてきている」

 薫は何者かの気配に気づいたが、もうすでに遅かった。

「神崎颯人、夜白薫、君たちにはついてきてもらう」

 感情の感じさせない声音で告げる人物。その人物はフードを被っており、男性か女性かもわからない。

「あなたたちの目的はなに? 私と颯人くんになにをするつもりなの?」

 薫は逃げるタイミングを窺いつつ、質問をして相手の気を逸らそうとする。

 だが、

「逃げようとするのなら、君は自分の周りをもう少し確認したほうがいい」

 フードの人物にはお見通しのようであった。諦めた薫は言われたとおりに周囲を見渡す。辺りには目の前にいる人物と同じ格好の人たちが数人いることが確認できた。

 しかし、たかが数人である。薫には逃げられる自信があった。

「私に警告して逃げることを諦めさせようとしているの? だけどそれはできないと思うよ。――お願い、《時の審判》!!」

 そして薫の能力が発動する。すべての時を支配する夜白薫のスレイド。すべての時間が薫の命令なしでは動くことが許されない。

 はずだった。

『それで逃げているつもりなのか?』

 どこからともなく聞こえてくる声。その声の主は目の前の人物であった。

「ここは私が時間を支配しているはずなのに、なんであなたの声が聞こえてくるのっ!?」

 薫の支配の中では誰も動くことはできない。ましてや、薫が動くことを許した覚えはない。けれど、先程のフードの人物の声が聞こえてくる。ここで一つのおかしな点に気づいた。

「ど、どうして口を動かさないで話せているの!?」

 フードの人物は口も身動きすら一切できていない。なのに、なぜ話すことができている。

『君だけがスレイドを使えるわけではない。そう、すでに君は私のスレイドの中にいたのさ』

 どうして気づくことができなかったのか。スレイドが使えるのは、相手も同じだということに。

 薫は内心でなにもできない自分自身を責めていた。そして焦りから生まれてしまった隙を敵は見逃すわけがない。

「――これで終わりだ」

 フードの人物は腕を振り上げる。そしてスレイドの効果によって動けなくなっている薫に向けて振り下ろした、その時だった。

「こんな可愛い女性に手を上げちゃ、隊長の名が廃れちゃいますぜ」

 そう言って薫の前に現れた人物は、振り下ろされた腕を右手で掴み制止させた。

「新入りの桜花か……。私に歯向かっておいてただで済むと思うなよ」

「この人、ちょっとオレの知り合いなもんで。傷つけられるのは見てられなくて、つい助けに入ったんですよ」

 薫を助けに入ったのは、以前別の世界で一緒に戦ったりした、生徒会長兼王でもある桜花駿であった。彼は不敵な笑みを浮かべており、なにを考えているのか誰もわからない。

「隊長、夜白薫は動けないことだし、早く神崎颯人も連れて本部に戻りましょう」

「そうだな。――本任務は完了した。これより本部へと帰還する」

 隊長は通信機でほかのメンバーに帰還命令を出し、いまだに気を失っている神崎颯人を肩に担ぐ。それと同時に桜花も後ろで動くことができない薫を背中にのせて、隊長の後に続くように移動を開始した。二人を先頭にしてほかのメンバーも合流し、ついていく。

 そして連れて行かれた先は本部の下層に位置する牢屋であった。

こんばんは、境界線上の日々です。

次回も今月中に投稿したいなと思ってます。でもテストとかあるのでもしかしたら来月になるかもしれないです。

それでは。


読んでいただきありがとうございました。

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