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25章

あれから颯人と鏡の戦いには終止符が打たれようとしていた。

「くそっ! 俺たちが負けるのか……」

颯人は手に持っていた聖なる剱を支えにして立つのがやっとであった。冬島は両足を深く切りつけられており、歩くことができず屋上のフェンスにもたれ掛かっている。

二人ともいたるところに切り傷がある。屋上の地面は颯人と冬島の血で赤く染まっていた。

「残念でしたね。僕の方がお二人よりずっと強いんです。そろそろ終わりにしましょうか」

ゆっくりとした動作で堅剣を颯人に構える鏡。そして勢いよく振り下ろす。

(……ここで俺が死んだら薫が泣いてしまう!どうすれば、どうすればいいんだっ!!)

ろくに力も残っていない颯人は堅剣をなんとか横に回避する。その勢いで地面に倒れ込んでしまう。

「早く殺されてくださいよ、神崎颯人くん。そうすれば全世界は救われるんですから!あなたの犠牲で全てが救われるんです」

鏡は声高らかに颯人に向かって告げる。

「俺の犠牲で、なんで世界が救われる?」

「あなたはなにもわかっていない。何で殺される目に今あっているのかも。だから教えてあげますよ、神崎颯人くんは――」

その時、俺の頭が割れてしまうくらい激しい頭痛が襲ってきた。

(なんだ……この痛さは)

――少年。この声を覚えているか?

周りの音はなにも聞こえないほどの痛さのはずなのに、その声は脳内に直接響いてくる。

(お、お前はっ!俺を生き返らせてくた人かっ!)

――なんだ覚えていたのか。ってこの喋りはあんま慣れねぇな。

(……お前は一体誰なんだ?)

――まあ焦るな。お前の近くにいる餓鬼の話には耳を傾けるなよ。それを誓うならオレはお前を勝たせてやる。

もし本当に生きて帰ることができるのなら、薫の笑顔が見れるなら迷うことはないはずだ。

(誓うぞっ!いま俺を勝たせてくれっ!)

――了解だ。

瞬間、颯人の頭痛が治まったと同時に体の傷が癒えていった。

(この力は一体……。って声がでないっ!?)

颯人は自分の体が動かせないことに気づいた。けれど体は言うことを聞かない。まるで誰かに動かされているようだ。

「世界で戦うのも久しぶりだな。さあてめぇの泣きっ面でも見せてもらおうかっ!」

(この話し方、そうか。俺の身体を操っているのはあの声の主だ)

一人納得していると、目の前にいた鏡は復活した颯人の姿に驚いた顔をしていた。

「僕に何度挑もうが全ては同じだよ。神崎颯人くんが死ぬのは運命で決められているからねっ!」

堅剣を構えて再び姿を消す鏡。

「さあ死になよ!」

そして頭上から姿を表し、颯人に向けて堅剣を振り下ろす。

「弱者はオレには勝てねえ」

顔色ひとつ変えない颯人は、堅剣を左手で掴んだ。左手に少しの力を加え、堅剣が粉砕する。

「なにっ!?」

「オレにそんな力は通じない。だからお前らは弱者のままなんだ」

空中で態勢を崩した鏡にすかさず颯人は右の拳を喰らわす。

フェンスに背中からぶつかり口から血を吐きだす鏡。

「ぐはっ……。僕のが壊されるなんて。いままでとは動きが違う、君は本当に神崎颯人なのか……?」

圧倒的な力量に鏡は颯人の事をまるで別人のように感じてしまう。

「そうだ。オレは神崎颯人でもあるが、神崎颯人ではない。お前らが殺そうとしている――《破壊の神》がオレ自信だ」

オレが告げたとき、俺の中でいままで狙われていた理由がなんとなく理解できてしまった。

――《破壊の神》を殺す。

それが全ての理由だったわけだ。


◇◇◇


俺と鏡の戦いは破壊の神の力によって俺の勝利で終わった。

鏡はフェンスにぶつかった衝撃で気を失っている。勝利に導いてくれた破壊の神は颯人の身体の制御をいつの間にか止めており、いまは俺の意思で動くことができている。

屋上の入り口の壁に腰をおろし一息つく。

「なあ、さっき言っていたけどお前は破壊の神でいいんだよな?」

数秒立った後に、『そうだ』と俺の脳内に破壊の神の声が響いてきた。

『オレは破壊の神だ。いまはお前の身体を借りて生きているが、本物だ』

「そうか」

たくさん聞きたいことはあったがいまは聞かないことにしよう。お互いに戦いで疲れているはずだ。このまま眠っても大丈夫かな。

夕陽を浴びながら颯人はゆっくりと目を閉じた。


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