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秘密の、後で


ミカ様のお世話をさせて頂いて早一月。

ミカ様は未だ私に飽きられず、私は部屋から一歩も外に出ていない。

切り傷だらけで、荒れていた私の手はまるでお姫様のようにつややかになってしまった。


(ミーシェ)


ミーシェは今頃どうしているだろう。

私がいなくなったことで仕事を押し付けられたりはしていないだろうか。

いや。

むしろ、新しい下働きがやってきて、今頃は彼女と仲良くやっているかもしれない。


「その花、気に入らなかった?」

「ミカ様」


いつもほとんど外出なさることのないミカ様。

でも、今日は朝から出かけられていたはずなのに一体いつの間に帰られていたのだろう。


「おかえりなさいませ」


いつも同じ時間を過ごさせて頂いているミカ様がいらっしゃらなくて本当は少し淋しかった。

だから、嬉しくて思わず安堵に頬が緩んでしまう。


「・・・うん。ただいま」


頬を少し朱に染め、ミカ様は視線を逸らしてそうおっしゃった。


(何かあったのかしら)


不機嫌というのともどこか違う、まるで照れたかのようなお顔つきに、私は心の中で首を傾げる。


「それより、アリシア。何か気になることがあったの?」

「あ」


ミカ様に申しあげるようなことじゃない。

でも、お尋ねになったことに答えないのは失礼だ。


(どうしよう)


言葉を探していると、


「言わないと・・・お仕置きだよ?」

「!」

「ああ。痛いことじゃないから大丈夫。私が君を傷つけるわけないだろう?」

「は、はい。ミカ様はとてもお優しい方ですから」

「ふふ。そうだよ。私は君にだけ優しいんだ」

「?」


なんだかニュアンスが違うような気がしたけれど、ミカ様がとても満足そうなので私はほっと胸をなでおろした。


「それで?何か気になることがあったんだよね。君の心を一時でも奪う存在。ふふ。教えてくれるよね?」

「えっと」


なんだか怖い感じがするのはもちろん気のせい、よね?


「アリシア」

「そ、その」


その時。


トントン。


扉が叩かれた。


「・・・どうしたの?」

「王の側近の方がいらっしゃいました。すぐに御前に参上するようにと」


ミカ様はため息をつくと、面倒、と小さくつぶやいたけれど。


「わかった。行くよ。それじゃあ、アリシア。後でちゃんと教えてね」


そう言うと、私の頬を撫でてミカ様は扉へと向かう。

まるで見えていたみたいに扉が開けられる。


「エミカ様。申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」


王の側近の方はミカ様に頭を下げると案内のため、先に歩き始めた。

その時、その方は一瞬部屋の中にいた私を視界に止め、次には眉を顰められた。


びくっ


久しぶりの視線に体が震えた。


(こんなのおかしい)


こん目をされるのは当たり前のことなのだ。

これが当たり前の反応なのだ。


(それなのに、私は)


「部屋の中を覗くなんて、首を刎ねられたいの?大臣殿」


底冷えのするような冷たい声を発せられたミカ様の背がすっと私の視線を遮る。


(ミカ様?)


まるで大臣様の視線から私をかばってくださったようにうぬぼれてしまいそうになる。


(そんなはずないわ)


「い、いえ」

「陛下がお待ちなのでしょう。早く案内しなさい」

「は、はい」


カツカツと大臣様の足音が響きだす。

その音に私は慌てて扉まで駆け寄った。


「行ってらっしゃいませ」


そう言って頭を下げようとしたとき、ミカ様が振り返った。


後でね。


声に出さず、秘密を囁くように唇だけが言葉を形作る。


(後で?)


何かがひっかかったけれど、私は、足音が消えるまで頭を下げてお見送りした。



一度書いたのに間違って消してしまいました・・・

書き直したけれど、甘いところがたくさん消えたまま・・・

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