57話<会えない夜は>side アリシア
<会えない夜は>side アリシア
ミカと会えないまま、三日が経った。
レオンの話では、エルラードでも、反乱者が出ており、それの収束と対応、解決。その他の通常政務と、仕事詰めなのだという。
(体調を崩されたりはしていないかしら)
大変な時に、何も出来ない。
それが、悔しくて、辛い。
(離れていると、前よりも一層、ミカのことを考えてしまう)
目を閉じれば、思い出す。
出会ってから交わした、たくさんの言葉を。思い出を。
『ミカ、だよ。君にだけは愛称で呼ばれたい』
『うん。みんなの前で口づけしたね。これでもう、僕が君のものだって国中が知っている』
『アリシアは僕のお姫様だから』
『僕には心がなかったんだよ』
『アリシア。僕を幸せにして』
『ほら。やっぱりアリシアはわかっていない。
アリシアがくれるものなら、僕にとってはどれほど幸せなものか。
でも、君にそんな顔をさせるのは僕も嫌だよ。
君が笑ってくれる方がずっともっと嬉しい。
そして、君が幸せなら僕も幸せを感じられる』
『アリシアのためなら、僕は何でも出来るよ』
そう言って、作ってくれた、ひつじとうさぎのチョコレート。
砂糖菓子のような優しい時間の数々。
勇気と力をくれた時間の数々。
二人で過ごしたどの時間も、覚えている。
(私は)
この気持ちは何?
この先にある答えって?
私は何を恐れているの?
(答えはすぐそばにあるのに)
胸が痛んで、前が見えない。
(でも)
何度も考える。
きっと、この答えを、ミカは待っていてくれるから。
窓から、空を見上げた。
今夜は下弦の月。
月からの光は淡く、犯罪者たちの心をかきたてるかもしれない。
(どうか、静かな夜が続きますように)
届かぬ月に、けれど、心から、祈る。