56話<会えない夜は>side ミカエル
<会えない夜は>side ミカエル
「爆破したい」
僕は眼下に広がる町を見ながら、ぽつりと呟いた。
イスターシュを離れてから、3日が経っている。
捕まえた反乱因子たちは、小規模で、ポリシーもバラバラ。
けれど、とにかく、数が多い。
なぜ、この数の、それも、意志を同じくしないものたちが、同時期に問題を起こすのか。
答えは簡単だ。
必ず、裏で糸引く者がいる。
そいつ、もしくは、そいつらを日の下に引きずり出さなければならない。
それなのに。
解決できないまま、現在進行形で事件が起こっていながら、時間だけが過ぎて行く。
こんなこと、今までなかったのに。
「焦りは禁物なんだけどな」
アリシアと会えない日が続くと、己を保てなくなってくる。
以前は、離れていても、平気だったのに。
この半年で、僕の想いは、以前よりも、もっともっと深くなっている。
「あれ以上があるなんて、知らなかった」
彼女は本当に、僕に初めてばかりを与える。
「喜び」
「幸せ」
「生きがい」
そして、恐怖。
自分の思ったとおりにいかないと、彼女に何か起きるのではないかと、不安が込み上げてくる。
そうなると、全ての要因を消したくなる。
全てがなくなって、二人だけになれば、これほど、安全なことはない。
「でも・・・君の笑顔が曇ってしまう」
それだけは、あってはならないことだ。
だから。
不安を、焦燥を、欲望を。
抑え込む。
きっと、これこそが、愛している、ということだと信じて。
「君に会いたい」
イスターシュに魔法で戻ることもできる。
けれど、今、ここで全力に事に当たらなければ、全てを失う気がする。
だから。
「出来る手は打ってある。今は、ここで」
眼下を見下ろし、僕は拳を握りしめた。