ミカエル視点:歩き出す君へ(2)
長くなったので分けていたのですが。
ちょっと、短いアップです。
そして、部屋には僕一人になる。
残された僕は誰もいなくなった部屋で静かに瞳を閉じた。
彼女の不安を思う。
でも。
「大丈夫だよ」
受け取らない人間がいたら奇跡を起こしてあげるから。
そうしたら、きっと皆が君からの皿を競うようにして欲しがるだろう。
人と言うのはとても単純だから。
「きっとうまくいくから」
そう考えて、頭の中の彼女が、咎めるように眉を寄せる。
(そうだね。君はズルは嫌だよね)
だったら僕には何が出来るだろう。
この手にある無限の魔力、無限の力。
全てを彼女のためだけに使いたいのに、
彼女が本当に欲しがるものは与えてあげられない。
もどかしい。
けれど、生まれて初めての“不可能”に燃える自分もいる。
(君が望むものを必ず掴ませてあげるから)
だから、
“一緒に”
がんばろう。
「本当は他の人間なんかに見せるのも嫌なんだけど」
(でも、僕の一番の願いは、君の願いを叶えること)
君が幸せになること。
だから、この心のうちに広がる、君には想像もつかないだろう想いを隠して。
君とともにまともに世界を生きてみよう。
「大丈夫、僕がいるからね」
心の中で彼女が微笑む。
よかった。いい笑顔だ。
「君は僕のご主人様、かな」
その笑顔があれば、君は僕を自由に操れるよ。
愛しい黒髪の御使い。