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真実(5)

たくさんのお気に入り登録、また、アクセスを頂き、本当にありがとうございます!!

一月ほどアップできない状態が続いていたのに、

見捨てずに、こうして来てくださる方がたくさんいてくださって、

とてもとても励みになります。

皆さんのおかげで作品をアップすることができました。

本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします。




「困惑なさるのも勿論だと思います。ですが、これはどうしようもない事実ですので」


ハンカチさえ用意して目元を拭いながら、アルティウスさんは同情いっぱいの瞳で私を見つめた。


「でも、このアリシアバカ。アリシアのためだったら、意外といいこともするのよ」


ミーシェの言葉にグレンさんが深く頷く。


「今から三年前だ。

アリシア様と出会った王子は、国に帰ってくるなり、王や他の王子たちに宣言した。

今から隣国を傘下にいれることにした、自分を王位第一継承者にしろ、と」


「?!」


びっくりする私の横で、ミーシェがカラカラと笑う。


「あの時はびっくりしたわよね~。あたしはこの王子の従姉妹で爆破バカなんだけど、そのときは自分が吹っ飛ばされた気分だったわ」


「ば、爆破?従姉妹?!」


「そうなの。さっきアリシアが心配したって言ってくれた爆発。

私が陽動のために仕掛けたものだったのよ」


「!」


驚きすぎて声が出ない私に、ミーシェはしゅんと肩を下ろす。

そして、まるで小動物のような上目づかいで、私の様子を伺うように見つめた。


「心配かけたのにごめんね。でも、誓って、誰にも怪我がないようにしたから!

だからアリシア。お願い、私を嫌いにならないで!」


必死に言い募るミーシェに、私はとても驚いたけれど、こくりと頷く。


(ミーシェが好きで人を傷つけるようなことをするはずがないわ)


「理由があったんでしょう?嫌ったりするわけないわ」


(私が嫌われることがあっても、私がミーシェを嫌うなんてありえないわ)


微笑んでそう言えば、


「アリシア・・・ありがとう」


ミーシェが安堵の息を零す。


その表情に私もほっとする。


「話を戻してくれるかな」


どこか苛立ったようなミカ様の声が話を切るように入った。


アルティウスさんはくすりと笑うと、


「わかりました。それでですね。

とにかく王子はアリシアバカになられたので、貴女を手に入れるために色々と考えられたのです」





『アリシアを急に連れてきて正妃にしても、余計なことを言う人間は後を絶たないだろうね』


『そのためには、黒い髪と目にくだされる異形という評価を変えるしかない』


『むしろ、それを神聖なものにすればいい。異形と神聖は紙一重。少し手を加えるだけですぐにひっくり返る』


『そのためには劇的なシナリオが必要だ』


『しかも、アリシアが後で知って気にやまないような、人道にのっとったストーリーが』





「そして、彼は一つのシナリオを書きあげます。

それが今回の腐敗した大国イスターシュの解放とそれを導いた黒髪の御使いというストーリーです。

イスターシュは貴族が権力をふるい、もはや泥船でのパーティー状態。

放っておいても国内から内乱が起きたでしょうが、それでは戦争によって多くの命が奪われる。

アリシア様の村も辺境とはいえイスターシュの領内です。

万が一にでも火の粉をかぶることがあればいけないですから、一石二鳥でした」


「だが、穏便かつクリーンな計画を行うためには兵や協力者がいる。

今まで、政治のことは王に任せきりだった王子には、側近や協力者がほとんどいなかった」


「力やあくどい感じでやるなら、この変態王子ならお茶の子さいさいだったでしょうけど」


「そうでしょうね。

けれど、心にあるアリシア様の笑顔を前にすれば。王子も形無しです。

そして、側近を増やすことから始めた王子はまず私を起こしにやってきました」


「起こす?」


私の疑問にアルティウスさんは底の見えない笑みを浮かべる。


「まあ、それはいいとして。

とにかく辺境の地にいた私に仲間になってくれるよう負かしに、いえ、挑みに、間違えました。

頼みにやってきました」


「負かす?」


「いいえ。言葉のあやです。忘れてください。

とにかく、彼の強い意思に心ひかれた私は面白そうだったので協力することにしました。

決して、殺すと脅されたからではありませんよ」


「はあ」


「次に俺やミーシェ。他にも何人かを招集した」


「私みたいに王族に連なる者やグレンみたいに公爵家っていう位が高い者だけじゃなく、

王子が目を付けた者だけを、ね。

まあ、皆超個性的だったんで最初は微塵も言うことなんて聞くつもりなかったんだけど」


「負かしてやったら言うことを聞くようになったんだよね」


くすりと笑うミカ様。


こ、怖いです。


「違うわよ!

なんか、今までのあんたとは全然違ったし、

言うこと聞いてやってもいいかなって思うようになったのよ。

あと、一応、隣国の悲惨さは聞いてたから、良いことなら協力した方がいいかなとも思ったし」


「ふふ、爆弾娘が何を言う」


「おいコラ」


「とにかく、こうして仲間を増やした王子は、

貴女を迎え入れたときに、貴女を守る盾が出来るよう基盤を作りました。

これに一年ほどかかりましたが。

ああ、忘れていました。もちろん、一年間貴女を放っておくはずがありません。

貴女の様子を逐一報告し、また、彼女を守る者として王国の騎士団将軍を貴女の村に派遣しました。

覚えていらっしゃいますか?レオンという」


「レオン?!もちろんです!忘れるはずありません!」


「よかった。

彼は貴女をとても大切に思っていたので忘れられていては可哀そうですから」


「でも、レオンがそんなに偉い方だっただなんて」


屈託のない明るい笑顔を思い出す。


おばあさまがいなくなって、人との会話なんてほとんどなくなって。


淋しくて苦しかった日常に自然と入り込んでくれたレオンは私の宝物のような人だ。


(でも、レオンはとても偉い人で)


そして、命令であの村に来ていただけだったんだ。


鉛を飲んだみたいに胸が苦しくなる。


(ごめんなさい)


心の中でレオンに謝る。


ミカ様がどうして私なんかに意味を見出してくださったのか、

整理のつかない頭は未だに受け止められていない。


でも、レオンの自由を奪ってしまったのだということはわかる。


本当なら目通りさえできないような方だったのに、あんな辺境の土地で。


(今度会えたら謝りたい)


ぎゅっと両手を胸の前で強く結ぶ。


「アリシア」


ルカ様にそっと唇を押さえられる。


「呼び捨てはダメだよ」


「え?」


思いがけない言葉に現実に引き戻される。

きょとんとミカ様を見つめれば、


「呼び捨てはダメだよ」


もう一度言われる。

私は慌ててコクコクと頷いた。


「はい。そんな偉い方を呼び捨てにするなんていけませんね。

教えてくださってありがとうございます、ミカ様」


「レオンは呼び捨てで僕は様付?」


また間違えてしまった。私は慌てて言い直す。


「ミカ、です」

「うん」


ミカ様がとても満足そうに頷かれたから、一瞬浮かんだ、

将軍よりも地位の高い王子様を呼び捨てにする方がおかしいのでは、

という疑問は自然と消えてしまった。


そんな私たちの向こう側で


「ああ、かわいそ。今頃あっちの王宮で事後処理に追われているだろうに。

見知らぬうちに三年間の友情は消し去られ返礼は他人行儀な呼び方。

さすがの将軍も泣くんじゃないかしら」


「まあ、彼だけ三年も彼女と一緒にいたんです。このくらいはされて当然ですよ」


「ああ、そのとおりだ」


「・・・グレン。あんたも実はえげつない奴だったのね」


「敵に塩は送らない。常識だ」


「あー、なるほど。はいはい」



よく聞こえないくらい小さな声で何か話し合い、

そして、最後にミーシェが呆れたようにため息をついていた。



少し長くなるのでここで切りました。

レオンはヤラレキャラなので、早く出したいです。

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