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真実(1)



「んん・・」


温かい。


でも、なんだか固い?


「ん?」


ゆっくりと瞳を開ける。


「起きた?」


くすり。


どこか聞き覚えのある、けれど、明らかに男の人のものだとわかる声に私は寝ぼけていた目を思い切り見開いた。


「あ、あなたは!」

「おっと。危ないよ」


彼の膝で膝枕をされていた私は飛び起きたせいで危うく頭突きをしてしまうところだった。

でも、彼がよけてくれたから大事はなかった。

ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、


「おはよう」


さらりと頬を撫でられる。

びっくりして思わず後ずさ―――ろうとして、腕を引かれてそのまま腕の中におさまる。


ぽすっ


腕の中におさまった私に、


「どうして離れるの?」


不思議そうに尋ねられても困る。



「聞きたいのは私の方です。こ、これは一体どういうことですか?!あなたは」

「ああ。名前を名乗っていなかったよね。僕としたことがそのことに後で気づいたんだ。“失敗”をしたのは生まれて初めてで驚いたよ」


そう言って、彼―――三年前に再開を約束した青年はにこりと微笑んだ。


「僕の名前はミカエル。ミカエル=シャル=エルラード。エルラードの第二王子だよ。王位継承権は第一位だけど」

「ミカエル=シャル=エルラード・・・エルラードの王太子殿下・・・」


呆然と呟いた私に、殿下は首を横に振る。


「ミカ、だよ。君にだけは愛称で呼ばれたい」


ふふ、と幸せそうに笑って私の手を取る仕草はまさに王子様。

普通ならばうっとりと心奪われてしまいそうな仕草だけれど、私はそれどころじゃなかった。


(ま、まさか)


「ミカ?ということは、まさか、ミカ様?!」

「今頃気づいた?そうだよ。ミカ様、は僕だ」

「だって髪が。それに」


しゃべり方や態度は彼女そのままだけれど。

ミカ様は確かに声も全体的な大きさも女性だった。

今の彼は明らかに男性だとわかるくらいに背が高いし、声も低い。


「魔法だよ。魔法で女性になっていたんだ。でも、あまり長持ちする魔法じゃないから時々部分的に男に戻ったりする。だから、手袋やたくさんの布を使った服で体系を誤魔化していたんだよ」

「そん、な」

「ふふ。こんな高度な魔法が使えるのはごく一部の限られた人間だけなんだけどね」


殿下の言葉に私は呆然とした。

魔法。

実際にこの目でみたことはないけれど、聖国エルラードの王族やそれにつながる血脈には魔法を使うものが多いと聞く。

イスターシュにも魔術省があり国中から魔法を使える者が集められていた。

けれど、魔法使いはとても貴重な存在で一介の下働きが拝見できるようんな機会は一度もなかった。

ただ、噂ではきいていた。

魔法は無限の可能性を秘めているが、使える内容は個人によって大きく異なると。


炎を操ったり、水を操ったりできるものもいれば、

小さな物を浮かせるのが精いっぱいだったりもする。


たしかに女性に化けるというのは非常に限られた人間にしか無理だろう。


「そんなにすごい魔法を使ってなでイスターシュの王宮に入り込んだのはイスターシュを制圧するためですか?」


尋ねれば、


「それは違うよ」


ぴしゃりと彼にしては厳しい口調でそう言い切られた。


「だったらどうして」


どうして、あんなことが起こったの?

と言いかけて、一気に起こった出来事がフラッシュバックした。

爆発に、逃げ惑う人々。

アンナさんや皆。

そして、あの、バルコニーでのことも。


「っ!」


(そうだわ。どうしてこんなことを忘れていたのかしら!)


見たことがないほどの群衆の目の前で。

この人と。


かああっと頬が熱を持ち、どくんどくんと心臓が早鐘を打つ。

それなのに、動揺して目までうるんできた私に対して、


「赤くなった。ふふ、思い出してくれたんだね」


殿下は余裕綽々で。

むしろ、嬉しそうに微笑んでいる。

私はますます恥ずかしくなった。


「あ、ああ、あれは!」

「うん。みんなの前で口づけしたね。これでもう、僕が君のものだって国中が知っている」


満足そうに嬉しそうに微笑む殿下に私はくらりと気が遠のきそうになる。


「殿下、そのようなお戯れを」

「殿下じゃない。ミカ。ちゃんと呼ばないと」


また絶食による抗議をするのだろうか。


「皆の前で口づけ以上のことするよ?」


にこっと微笑まれる。

ぞくっと背筋に悪寒が走ったのは、気のせいと思いたい。


「本気じゃ」

「ふふ」


笑顔が怖い。

試してみるなんて、やめたほうがいいような気がする。


「・・・ミカ様」

「様?よし、じゃあ、バルコニーに」

「ミ、ミカ!」

「残念。僕が君を愛しているって世界中に広めたかったのに。でも、嬉しいよ」

「・・・」

「さて、そろそろお腹が減ってない?」

「それよりもお聞きしたいことがあります」

「うん。僕も君にたくさん話したいことやしたいことがある。だから、先にご飯を食べて体力を整えてから」


「はいはーい!爆破するわよ。この変態王子!」


突如、高い、女性の声が聞こえた。


と思ったら、



どーん!!



「?!」


爆音と振動が扉の向こうから聞こえた。

そして、


ぎいい


寝室の扉が音を立ててゆっくりと崩れ落ち、


どおおんっ


床に倒れ落ちた。




崩れ落ちた扉の向こうに見えたのは。




感想をくださった方々。

本っ当にありがとうございました!

今日は、正直、とても疲れていたのでアップしない予定だったのですが。

嬉しくて頑張れましたvv

お越しくださっている皆さんも本当にありがとうございます!

これからもよろしくお願いいたします。

それでは、最大限の感謝をこめて。

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