しゃくでば! くりすます
「そーんなわけで……!
クリスマスとやらを楽しむしゃくぅ!」
もう遅い。
美鶴、もう遅いのだ。
あきらめろ。
クリスマスは当の昔に終わってる。
「クリスマスを……」
「美鶴……」
二五日がクリスマスだと知らなかった男……。
美鶴。
そう、彼はその日もひとりだったのだ。
「クリスマスを……しゃく……」
涙が余計に哀愁を誘う。
クリスマスか……。
俺は何してたっけなぁ。
ゲームして飯食って普通に寝た記憶しかない。
アリルさん?
ああ……。
「く、くりす……しゃぐすっ」
泣くなよ。
な。
「そーんなわけで、波音!」
なんだよ。
今回はそう巻き込むパターンか。
「ケーキ買ってこいしゃく!」
「金」
「しゃく?」
「金」
俺はずい、と手を突き出した。
金を寄越せクソ野朗。
「えっと……。
はい、しゃく」
俺の手の上にちりんと乗せられる硬貨たち。
えっと……合計一二〇円。
「いってらっしゃい「かえるかあぁああああああ」
とび蹴りぃぃぃいい!!
美鶴の体を突き飛ばす。
アホか!
「どこに一二〇円で買えるケーキがあるんだよ!
おい!
言ってみろよ、おい!」
「えー、スーパーに行けば……」
「ない!」
世間知らずな男め。
なぜかケーキは高いのだよ。
「でもみつる(※ちっちゃいほう)はクリスマスに買ってたしゃくよ?
ケーキ、一二〇円で」
ちっちゃいほうのみつるひっさしぶりに出てきたな。
から揚げと顎の融合体。
ぶっちゃけ存在忘れてたし。
「それはアレだろ。
偶然だろ、ちなみに店の名前は?」
「鬼灯ケーキ製造所しゃく」
鬼灯財閥の傘下じゃねーか!
「……詩乃いただろ?」
「しゃくしゃく」
そりゃ一二〇円で買えるわ……。
財閥の娘だぜ、アイツ。
あんなアホでドジで……。
何で俺みたいな一般人と関り持ってるのかが不思議なぐらいのお嬢様だぜ、アイツ。
「まぁ、とりあえずケーキはない。
あきらめろ」
「いんやぁしゃくぅ!!!!」
じたばたとだだをこねる美鶴。
お前高校生か、本当に!
「じゃあもう知らん!」
俺はもういいや、と思ってな。
道端をごろごろする美鶴をほったらかして帰宅したんだよ。
もういいやん、だって。
だるいし。
☆おまけ☆
「しゃくぅ……。
みんなの目が痛いしゃくぅ……」
美鶴は俺がいないのに気がつくまで約二十分かかったようだ。
アホやな、マジで。
ありがとです。
明日はセンター試験。
頑張ってきます。