しゃくでば! 蒼の危険
「波音さん、波音さん!」
家のドアがバンバン叩かれた。
せっかくの日曜日だというのに誰だろう。
玄関の扉を開けた。
「おやおや、蒼さんじゃん。どうしたんだ?」
息を切らせ走ってここまで来たようである蒼は頬を赤く染め苦しそうだった。
「た、助けてください!」
「へ?」
蒼さんが俺に助けを?
「とりあえず中に入んな?」
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「実は……ネメシエルを操れなくなったんです」
へ?
「ネメシエルってあの戦艦だよな?」
あの一六二四メートル、二千五百万トンの?
「……はい」
「いつから?」
今はシエラもメイナも、詩乃もみんなして日曜日なのに学校に泊まり込みの勉強会中で誰もいない。
「今朝からです……」
時計は午後二時。
「本当に動かないの?」
再度念のため聞く。
「はい。何回やっても何回やっても何回やっても何回やっても……ダメだったんです」
「そぉんな事があるんしゃくか?
とんだ災難しゃくねぇ、蒼ォ?」
出たー。
流石、主人公。
出るときも突然だな。
「あ……クソ顎……」
美鶴はくちゃくちゃと俺の冷蔵庫中にあったケーキを食べていた。
クリームが顔中にくっつき美鶴の顔は真っ白だ。
「なんでそうなった?」
ケーキぐらい綺麗に食えんのか。
「食ってたらこうなったしゃく。そんなことより、蒼ぉ?」
蒼さんは首をかしげた。
「何ですか、クソ顎?」
「そのクソ顎っていうのやめた方がいいと思うしゃくよぉ?」
にやける美鶴。
なんか調子にのってる顔だ。
「へ、ど、どうしてですか?」
「わーからないしゃくかぁ?
今の蒼はヴォくには勝てないからしゃくよぉ?」
ぎろんと怪しい目つきで蒼を挑発する美鶴。
「う……」
確かに蒼さんの体や力を考えれば美鶴に勝てるのかどうかすら……。
「で、でも私が負けるわけがありません!
クソ顎なんかに負けてたまるかですよ!」
「ならやってみるしゃくかぁ?」
あー、暴れるなら家の外で頼むぜ。
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「しゃ……しゃ……」ピクピク
「えー……」
結論から言うとあっさり美鶴が負けた。
蒼さんがえいっとばかりに突き出したパンチが顎に当たったのだ。
「しゃ、しょおんなぁ……しゃく……」
「勝っちゃいました……」
「まあそれはさておき」
地面でびくんびくん波打っている美鶴を無視して蒼との話に戻る。
外だけど。
「原因が分からんな。
なんでネメシエルが動かせないのかも」
「私このままじゃ……核としてクビになっちゃいますよ……。
ベルカ軍からも追い出されて……うぅ……」
半泣きになっている蒼。
「ん?
蒼一体何を頭につけているんしゃくか?」
いつも以上に早く復活した美鶴が蒼の頭についた何かを取った。
「へ?
何がついていたんですか?」
「これしゃくよ、これ。
アルミホイルしゃく」
アルミ……?
「アルミですか……!?
わ、わ、ありがとうございます、クソ顎!
これで……」
蒼は目をつぶった。
急に空が暗くなり見上げた。
押しつぶされるように低い高度をネメシエルが浮いている。
「やったっ!」
アルミホイル……ね。
「どうしゃく?
ヴォくのおかげだったしゃくよね?」
「あ、クソ顎さん。
最後にこれだけ試してもいいですか?」
威張る美鶴に蒼がお願いする。
「んー?
当然しゃくよぉ。
なーんでもばっちこいしゃく!」
「ありがとうございます。
では……」
ゴンゴン……とネメシエルの砲塔が動いた。
「発射♪」
「しゃ!?」
オレンジ色の光が目をつぶらせたかと思うと美鶴はもうそこには……いなかった。
いや、いるけど。
黒こげで。
「やった、完璧に元に戻りましたっ」
「しゃくぅ……。
何でいっつも最後はこうなるしゃくかぁ……?」
運命だからな。
つづくかも~
あまりいいネタが浮かばなかった&なんか美鶴いじめたかったからこうなった(笑)
ごめんね、美鶴。
受験で更新金曜日にできなくてすいませんでしたっ!