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しゃくでば! みんなもエコしよっ!

時はやはり夏。

深い意味はない。

蝉が鳴いている。

その中をワンピースに身を包んだ少女が

ビニールの中に大量の食品を入れてさまよっていた。


「あ、あつい……。

 詩乃姉様、分かってて私をお使いにいかせましたね……」


もうお分かりいただけただろう。

超空要塞戦艦ネメシエルの核。

空月・N・蒼さんだ。


(BGM はじめてのおつかい)


~♪

~~♪


「…………うるさいっ!!」


空からどこからとも無くビームが飛んできておいてあるラジカセに命中する。

でっかい穴が開きました。


「嗚呼、重い。

 重いし、暑い、暑すぎます。

 あの公園でちょっと休憩……しましょうか……」


汗が地面に点々と水滴を残す。

夏だから暑いのは仕方ないな。


      ・

      ・

      ・


「よう」


俺颯爽登場。

とはいってもYシャツをだらしなくズボンから出して

団扇で顔を仰ぎながらだが。


「なんという意外な組み合わせ……。

 何でここに?」


意外言うな。

確かに意外な組み合わせだけど。

俺と蒼さんはなんだかんだであまり面識がないからなぁ。

それよりも俺はついさっき悟った出来事を皆さんにお伝えしたい。


「実はな。

 この『しゃくでば!』は俺がいないと成り立たないことに

 ついさっきアイス食ってるときに気がついたんだ。 

 それでいやいやながらもここに来たと。

 案の定蒼さんいるし」


「……へ?」


「もっと正確に言おう。

 このお話をとあるウェブ上に書く人が困るということなんだ」


蒼はあぁ……というように頷いた。


「つまり、波音さんの近くには必ず

 あのクソ顎が登場するというわけですね?」


ぐさっと来た。

分かっていても厳しいものがあるのだ。


「……そうだ」


「コ●ン君体質なんですね?」


ぐぬぬ。

認めたくねぇ……。


「…………そ、そうだ……(泣)」


「帰ります……」


蒼はぱんぱんとお尻に付いた汚れを払い

ビニール袋を両手で持った。


「待って!

 きつい、精神的にも話の流れ的にもきつい!!」


      ・ 

      ・

      ・


夏風に身を任せる。

そろそろ涼しくなってきてもおかしくない午後四時。

公園で二十分ほどのんびりとしているわけだ。


「……クソ顎来ませんねぇ……」


蒼がぼそりと呟く。

いいんだよ、来なくて。

ってか来ることを望むんじゃねぇ!


「あぁ、ハトとガキしかいないなぁ……」


きゃっきゃと公園の噴水の水の中で

べたべたにぬれながらはしゃぐ子供達。

ハトもでぼっぼーでぼっぼーとよちよち歩いている。


「ふと思ったんですが……」


蒼さんが俺をキラキラした目で見た。

何か良いことでも思いついたのだろうか。


「ハトにBB弾食べさせたらどうなるんでしょうか?」


何この子怖い。

クルッポークルッポー。

ハトは平和の象徴とか言われてるけど

糞とかで町を結構汚すよな。

クルッポークルッポー。

クルッポーシャクルッポー。

ん?

違和感を感じた。


「おい、今何か聞えなかったか?」


蒼に話しかけた。


「へ?」


俺の団扇で顔に風を当てて涼んでいた蒼は

何を言っているんですか?と言いたげに聞き返してくる。


「いやだからさ……」


シャクルッポーシャクルッポーシャクルッポー。


「………………」


なんてこった……。

目の前にハトのコスプレをした一隅突出型顔人間が存在していたのだ。

目を合わせたくない。

ってかむしろ頼むから消えてくれ。

ディサペヤーしてくれ。


「シャクルッポー!(お豆をくれしゃくー!!)」


いやそうは聞こえねェんだけど

物語の進行上しかたねぇんだよな。

俺の耳がおかしいとかそういうわけじゃねぇんだよ。


「ママー変なのがいるー」


六歳ぐらいの男の子がとたとたと母親の元にかけていった。

俺でも怖いんだから男の子には刺激が強すぎたに違いない。


「お、お家に帰りましょケンちゃん!

 ほら早くいらっしゃい!」


「シャクルッ!シャクルップー!!

 (待って!待ってくれしゃくぅ~!!)」


いらっ。

俺は立ち上がると美鶴のケツに思いっきりけりを入れた。


「シャクルPOOO!!!」


悶絶するハト顎人間。


「おいアホ何やってんだ」


「シャクルクルシャクポッポー!!」


「日本語でおk」


      ・

      ・

      ・


美鶴はハトの衣装を脱ぐといつもの衣装に着替えた。

そしてぽつりぽつりと話始める。


「今日ママがお仕事で北海道に……うぅっ……。

 出張に行っちゃったんしゃくぅぅぅ……ずずっ」


んなことでいちいち泣くなよ。

ガキか。


「ママって……」


蒼、そういうところは突っ込み始めると止まらないぞ。


「それでッ……食べるものがなくてっ……しゃくぅ……」


普通はお金と一緒に何かメモがついてて

何かこれで食べてねはーとみたいな感じで置いてあるだろ。


「チンして食べてね☆みたいなのなかったんですか?」


やれやれと呆れ顔で蒼がたずねた。


「それがしゃくぅ……」


美鶴はごそごそとポケットから一枚のメモのようなものを取り出した。

書置きだろうか?

なんだ、あるじゃん。


『大変おいしくいただきました。

 byゴキブリ(ジミー・トミー・サミー)

  ネズミ(トム・マンティ・コジロウ)』


oh……。

なんとそれは居候からのお手紙だったのだ。

全て……言いたくないんだがフンでかかれている。

当然臭い。

思わず足の先でメモを蹴り上げてしまった。


「しゃぐぶっ!!」


あ……。

書置きが美鶴の顔に命中。

そんなことより


「うわ――きたね――」


裏側を蹴ったとしてももし水分みたいな成分が

滲み出していないとは限らないからな。

靴の先を念入りに洗う。


「は、早く代わってくれしゃくぅ~!

 前が見えないんしゃくぅっ!!」


ふらふらすんな!

お、おい。

そっちには蒼さんが……。


「ひぃっ!!

 こっちに来ないでくださいっ!!」


大量のレーザーが美鶴を木っ端微塵にした。


しゃぁぁぁあぁぁぁ………。


      ・

      ・

      ・


「というわけで何か食い物をくれしゃく!!

 もうお腹がすいて死にそうしゃくぅ~波音~」


俺の名前を呼ぶな。


「自らの顔を食料として提供してくれる心優しいお方が

 現れることを祈っているぜ!」


ぐっと親指を立てて美鶴を突き放した。

かかわりたくない。


「しゃくぅ……蒼ぉぉぉ!!!!」


「一枚のじゅうたんからたくさんの食べ物が出てくる

 夢のような道具を出してくれるような方に出会えたらいいですねっ☆」


蒼もにっこり笑って美鶴を突き放した。

おそらく深いところでは俺と同じくかかわりたくないという

心情が働いているに違いない。

それにショックを受けたのか静かになる美鶴。

珍しい。


「……しゃくぅ? 

 蒼ぉぉ……あの袋はなんしゃぁぁくぅぅ?(ニタァァァァ)」


顔怖っ!

蒼の顔から血の気が引いた。

見つかっちまったな。


「た、ただのエコバックですよ!!」


必死の弁解も美鶴には通じない。

見てしまったのだ。

中に入っている花園を。


「食い物くれしゃくっ!!!!(くわっ!!)」


唾を飛ばすな顔でかくするな近づくな。

それに対して蒼は


「そ、そんな言い方だと警察呼びますよっ!?

 というか呼びたい、呼びますっ!!」


蒼は手を電話の形にすると耳に当てた。

おそらくネメシエル経由で警察に電話しているのだろう。


「お願いしましゃぁぁあぁぁぁぁくっ!!!

 蒼さまぁぁあああああああああああっ!!!!」


美鶴は秘技『スライディング土下座』を覚えた!


      ・

      ・

      ・


「えーと、豆豆……」


蒼はやれやれとビニール袋まで歩いていくと

中をごそごそしはじめた。

豆?


「な、なぁんで豆なんしゃくぅ!?」


「さっき『お豆をくれしゃくー!』って言ってたじゃないですか」


通じてたのかよ。

俺だけじゃなかった、マジでよかった。

画面の前の諸君。

もし通じていたら結構やばいかもしれないぞ。


「あ、ありました!」


蒼は袋から一つのプラスチックケースを取り出した。

山椒と文字が書いてある。

読める方は多いと思うけど一応読み方を言っておこう。

さんしょうだ。


「さんs……じゃなくて、黒豆です!」


嘘つきやがった。

何をたくらんでやがる。


「わーいしゃくぅっ♪」


お前もお前で気がつけよって話しですよ。

えぇ。


「蒼、お前……」


俺の苦しい突っ込みも虚しく空に消える。


「さぁたんとお食べくださいっ☆」


美鶴は両手一杯に山椒――もとい黒豆をとると

くんくんと臭いをかいだ。


「かわった臭いしゃくねぇ……」


気づかれたんじゃね?


「はい!

 それはディンギス・マルグーレンというところで取れた特別な

 とっても貴重な黒豆なんですよ♪(当然嘘)」


美鶴はそれを聞いてぱぁぁっと顔全体を輝かせた。

どんだけ単純な男なんだ。


「何はともあれようやくご飯にありつけるしゃくぅぅっ!!

 いただきまーすしゃくっ!!」


両手一杯の黒豆(仮)を頬張る美鶴。

そして


「じゃァァァァァァぁあああああああああああああああぁぁ!!!!!」


山椒の実は小粒でもぴりりと辛いのだ。


      ・

      ・

      ・


「るんたったーりぁーうぃーあぁーざわぁーるど!

 うぃあーざちるどれぇぇん……」


シエラがチャリに乗って町を駆け巡っていた。


「うぃあーざ……?

 ん、何だ?」


何か不吉なシュルエットがピクピク痙攣しながら

公園の入り口でうつぶせになっている。

美鶴だ。


「な、何やってんの、お前……」


チャリのブレーキをかけ美鶴の頭付近で止まるシエラ。


「しゃ……しゃ……ヒューヒュー」


美鶴が顔を上げた。

それを見たシエラの不快指数が少し上昇する。

醜い……っていうか唇がすごくはれている。


「げっ……すごい腫れてる……。

 てか何でお前そんなに黒こげなんだ?

 それになんでいつもよりさらに痩せてるんだ?

 骨見えてるぞ?」


「しゃふぅ……」


「それにしても今日は暑いな。

 まさかと思うが辛いものでも食べたんじゃるまいな?」


「み……み……」


腫れた唇の隙間からかすかに言葉が発せられる。


「?

 何?」


「み、水を……くれしゃく……」


「水?

 あー、飲みかけのしかないや。

 ま、これで勘弁してくれ!」


シエラはペットボトルのキャップを捻って空けると

それを美鶴の上から降りかけた。


「よし、これで少しはマシだろう?

 じゃ~な~はっはっは……」


お前も相当な悪魔だと俺は思うよ。


「しゃ……く……」ガクリ


(翌日)


がらっと教室のドアを開けて美鶴が入ってきた。

あいさつをしようとそっちを振り向いた俺の目に

なんとも奇怪な様子が飛び込んできた。


「何、お前その頭wwwww」


思わずwをつけてしまうほどの現象。

そう、美鶴の頭から双葉が大量に生えていたのだ。

山椒の種だろうか。


「う、うるさいしゃくっ!!!」






               END  つづくかも



ありがとうございました。

今気がついたのですが不自然なところにある?は

もともと~や①など特殊な記号でした。

なにやら不都合により?になってしまっております。


もし変なところに見つけたらあぁと納得してください。

がんばって治していきますゆえ。


では。

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