表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/67

しゃくでば! お誕生日

「三月二十六日は何の日かわかるしゃく?」


のんびりしたお昼休み。

美鶴が教壇の上でクラス全員に呼び掛けた。

クラス中が静まる。


「帝国憲法記念日?」


シエラがメロンパンの空き袋ゴミ箱に

丸め捨てながら答えた。


「違うしゃくっ!」


「じゃああれ?

 あれでしょ、あれ」


「そうそう。

 よく考えるしゃく」


三月二十六日って明日だよな?

何の日?


「海の日?」


「そんだけ考えてそれしゃくかぁ!?

 三月って言ってるしゃく!」


え、海の日違うのか。

じゃあわかんね。


「だぁぁれもわからないしゃくかぁ!?」


ふんぬと鼻の穴を広げつつ美鶴はクラスを見下ろした。

知らんもんは知らんもん。


「仕方ない、答えしゃく……。

 三月二十六日。

 326。

 美鶴しゃく」


はぁ。


「で?」


シエラはどーでもいいと言ったように

野菜ジュースをすすった。

俺はお茶でご飯を流し込んだ。


「つまり明日は僕の誕生日なんしゃくよ!」


はぁ。


「……で?」


俺は美鶴に次を言うように促した。

どうぞ。

次、どうぞ。


「だから僕の家でお誕生日おめでとうパーティーを開くしゃくっ!

 是非来てほしいしゃくっ!

 特に波音は絶対に」


持ってたアリル特性お弁当を落としそうになった。

な、なんだってー!

クラス全員のドンマイという目哀れみの目が痛い。

名指しかよ。


「パーティーに参加するのは自由しゃく!

 ただし条件があるしゃく!」


条件?

どーせろくでもないんだろ。

パンツ見せろとか。

美鶴がまともな条件を提示するわけがない。


「プレゼントを持って来てほしいしゃく!

 波音はいいしゃくよ?」

 いつもお世話になってるからしゃくっ!」


はぁそりゃありがとうね。

それに思った以上に当然の条件だった。

ほう。

いつに無く本気だというアピールか。


「明日は土曜日で学校は休み。

 絶好のパーティー日和しゃく!

 パーティーは夕方四時から始めるしゃくからそれまでに集まってほしいしゃくっ!

 以上しゃくっ!」


     ・

     ・

     ・


「マジかよ……」


とぼとぼと坂道を歩いて帰る。


「ドンマイだねぇ」


詩乃が笑いながら俺の背中を叩いた。


「なぁ詩乃。

 お前、行く?」


「面白そうだし行くこうかな」


詩乃はやんわり髪をいじりながら答えた。


「シエラとメイナは?」


俺と詩乃の後ろを歩く最終兵器姉妹に尋ねた。こいつらが行くわけない。

わけない。

わけないよ。


「私達は行くことにするわ」


メイナが頷きながら答えた。


「え?」


なんだ聞き間違いか。

うん、きっとそうだ。


「シエラ行くの?」


「行く」


シエラがこくんとメイナと同じように頷いた。

なんやねんもー!

いくんかい。


「わかった。

 俺も覚悟決めた。

 行くわ」


ため息のネタがまたひとつ増えた。


「なら私の家で会議だね」


詩乃が夕日に目を細目ながら言う。

何か企んでやがるなこいつ。


     ・

     ・

     ・


「蒼、ただいま~」


詩乃が玄関で靴を脱ぎ捨てる。


「詩乃姉様!

 おかえりなさいっ!」


白いワンピースに身を包んだ蒼が詩乃に飛び付いた。

ワンコみたいで可愛い。


「ただいま、ただいま」


詩乃は蒼の頭を撫でながら俺達に


「入って入って」


そう言った。


「遠慮なく。

 邪魔するぜー」


綺麗に靴を脱いで居間まで歩く。

ドアを開けるとなんともまぁ広い居間があった。


「皆さんお揃いでどうしたんですか?」


蒼が頭に?を浮かべながら聞いてくる。

とりあえず頭をなでなでしてこたつに入った。


「うぅー、やっぱりこれだねぇ」


メイナはこたつで丸くなる。

猫かって。

ぱたぱたとキッチンから人数分の紅茶とお菓子を持って来た蒼になんで来たのか説明する。


「なるほど。

 つまり明日はクソ顎の誕生日なんですね」


「そそ」


少量の砂糖を入れ紅茶を啜る。

おいし。


「で、美鶴のプレゼントを考えるために集まったわけ」


シエラは紅茶の中にどばどば砂糖を突っ込みながら付け足した。

入れすぎだおまえ色変わってんじゃんほらもー。


「さって会議といきますか!」


詩乃はどこからかホワイトボードを引っ張り出してくるとマジックででかでかと


『美鶴をなんとしてでも喜ばしたろ企画』


とでっかく書いた。


「スペースなくね?」


「うん、私も今書いてから思った。

 とにかく誕生日ぐらいはあの美鶴といえど祝ったらなきゃ可哀想。

 いつものスカート捲りとかの悪事は許して真剣にプレゼントを考えようと思う次第。

 議長であり最終決定者、そして最高権力者は私鬼灯詩乃が承ります」


色々と総舐めすんな。

まぁとりあえず俺はプレゼントいいらしいから

お前らでがんばって考えてくれたまえ。

俺は机に突っ伏した。

眠い。

ほっぺたを肘に乗せてだらけた姿勢で会議を眺める。


「喜ばす……ねぇ。

 私あんまりいい思い出ないんだよねぇ……」


メイナが頭に手を押さえながらぼやく。

俺もない。


「で――――」


お、議長にして最高権力者の意見か。


「――何から話す?」


ちょ、おま。

考えとけ。


「シエラ何か意見ない?」


「ぼ、僕!?

 えーと……ない」


「メイナは?」


「ないわ」


「あ、蒼……」


「私……えーと……。

 ごめんなさい姉様」


「…………」


難航してますな。


「は、波音!

 あんたはないわけ!?」


「何で俺に降るんだよそこで。

 えー?

 プレゼントだろ?

 喜ばすには美鶴の好きな物あげればいいんじゃねぇの?

 心を込めたもの渡せば美鶴も喜んでくれるだろ。

 別に美鶴が好きなものじゃないとしても」


「ということだ。

 各自行動開始!」


会議短っ!!


「美鶴の好きな物……。

 エロ本?」


シエラ落ち着け、落ち着くんだ。

そっち方向に広げるのはまずい。


「私何にしようかなっ♪」


メイナは案外余裕なんだな。

期待だ。


「カップヌードルとかでいいか」


ひでぇ。

詩乃さんそれはひでぇっす。


「ミサイル?」


蒼……。

お前もう……。

なんていえばいいんだよ……。

この後俺達は詩乃の家に泊まりこみ

明日のプレゼントを考えたのであった。

ついでに愚痴らしてもらう。

俺寝るとき廊下だった。

寒い中毛布一枚しか貰えずいくら床暖房だからってひどすぎる。


「何か危なくない?」


メイナめぇ……。


「あー確かに。

 昔からの付き合いから考えると

 こいつこんな顔して案外すけべえだからね」


詩乃も詩乃だ。

ひどい。


「蒼もいることだし。

 波音ごめんね☆

 今日は廊下で寝てね☆」


うぅうう……。

これも美鶴のせいだっ!


      ・

      ・

      ・


(翌日午後四時)


「今日は集まってくれてありがとうしゃくっっ!!」


マイクを握り小指を立てながら美鶴がはしゃぐ。

頭には変なキラキラした帽子を被ってるし

『俺が主役』と書いてあるたすきをかけている。

のりのりじゃな。

美鶴のお義母さんが


「皆プレゼントを持ってきてくれるし……。

 本当にごめんなさいね、みなさん。

 美鶴がわがまま言ったみたいで……」


俺達に頭を下げた。


「いえいえ。

 美鶴君の誕生日なので。

 だいじょうぶですよ、おばさん」


「じゃあ私は引っ込みます。

 美鶴をどうかよろしくお願いするわね」


「はい」


美鶴のお義母さんは目にきらりと嬉し涙を光らせながら部屋から出て行った。


「今日は……

 波音とシエラとメイナと詩乃と蒼と出刃先輩があつまってくれたしゃくね!?

 本当に本当にありがとうしゃくっ!!

 早速プレゼントを開けようと思うしゃくっ!!」


美鶴は目の前に積まれた俺達のプレゼントに手を伸ばした。

俺達って言ったけど俺のは入ってないぞ。


「この赤色の箱は誰しゃく?」


「あ、それ僕だ」


「シエラしゃくか!!

 うわぁありがとうしゃくっ!!」


美鶴は本当に満面の笑みでシエラのプレゼントのリボンを解いた。


「案外軽いしゃくねぇ……。

 おーぷんざせさみーしゃくっ!!」


赤い箱が美鶴の手により開けられる。

中にはきらっと輝く……百円玉が……。


「な、なぁんしゃくかこれ……」


「ん?

 百円。

 ジュースでも買って」


美鶴の笑み率ががくんと下がった。


「百円って……。

 だ、だいじょうぶしゃく!

 まだたくさんプレゼントは残っているしゃくからね!

 シエラありがとうしゃくっ!

 次行くしゃくっ!!」


「別にいい、お礼なんて」


確かにお礼に値することなんてお前してないもんな、シエラさんや。

ちなみに俺が寝ている間に詩乃達はプレゼントを包んだみたいで

中身は一切知らないんだ。

だから俺も少しわくわくしてたりする。

美鶴はシエラからのプレゼントを横に奥と

白い長方形の箱に手を伸ばした。


「あ、それ私のだ」


メイナだ。

結構でかいな。


「おっ、重たいしゃくっ!

 これは期待できそうしゃくっ!!

 ではおーぷんざせさみーしゃくっ!!」


包み紙をビリビリと破り中をのぞく。

おぉ、ロールケーキか。


「うわぁっ、おいしそうしゃくっ!!

 メイナありがとうしゃくっ!!」


「メイナさん特製のスーパーあまあまロールケーキだよ。

 賞味期限近いから早く食べてね」


おい今何つった。

メイナさん『特製』って言わなかったか?


「め、メイナが作ったんしゃくか?」


「そうだよ?

 がんばったんだからちゃんと食べてね☆」


満面の笑み。


「そ、そうしゃく……か。

 あ、ありがとうしゃく……」


美鶴死亡のお知らせ。

メイナ、お前はそろそろ自分の料理が

殺人兵器だということを自覚したほうが良いかもしれない。


「つ、次は……」


「あ、私のだ」


紫の箱。

そこに綺麗な色のリボンが付いている。


「詩乃しゃくか!

 よかったしゃくっ!!」


「なにそれ、どういう意味?」


シエラが食いつく。


「い、いや深い意味は……。

 とにかくおぷせさしゃくっ!!」


美鶴はわくわくした顔でリボンを解く。

そして箱の蓋を開けた。


「な……」


そして箱を見て絶句してしまった。

何何?

何が入ってたんだ?

俺は横から覗き見した。


「ぶふっ!」


草ってお前、石ってお前。

そして落ち込みまくる美鶴。

気の毒すぎてかける言葉が見つからない。


「美鶴が喜ぶかなーって。

 悪意はないよ♪」


いや嘘付け!

お前悪意の塊じゃねーかよこれ!!


「まぁ美鶴落ち込むなでっぱ。

 俺のプレゼントを開けてみるでっぱ」


出刃先輩ちーす。

久しぶりの出番おめでとうございます。


「せ、先輩っ――!

 おーぷんざせさ――おぉぉぉおおおしゃく!!!!!」


「最高峰のものでっぱ。

 喜んでもらえると嬉しいでっぱ」


美鶴が神々しい光とともにケバイピンクの箱から取り出したもの。

十八歳にならないと買えない薄くて高い本だ。


『堕ちた巨乳美人教師』


oh……。


「先輩……」


「美鶴……」


きらきらきらきらきら。

薔薇ぶわわっ。


「本当にありがとうしゃくっ……」


キラキラシャボン追加。


「全然いいでっぱ……。

 喜んでくれてうれしいでっぱ……」


あははうふふモード突入。


「蒼、見ちゃ駄目だからね」


目をつぶった詩乃が蒼の目を後ろから押さえる。

シエラとメイナも目と耳を塞いでいる。

俺も目をつぶりたいけど物語のナレーション的立ち居地だから

見なきゃいけない。

誰か代われごるぁ。


「先輩ーーー!!

 大好きしゃくぅぅぅぅぅっ!!!」


うっぷ、はきそう。

美鶴抱きつくし、先輩に。

先輩は先輩で美鶴受け入れるし。

もうやだこいつら二人。

もうプレゼントは全部か……ん?


「おい、美鶴後一個残ってるぞ」


あはうふモードの美鶴を蹴っ飛ばして現実に引き戻す。


「本当しゃくね?

 青色だし蒼からのプレゼントしゃくね」


腰を抑えながら美鶴は蒼のプレゼントに手をかけた。


「さ、開けるしゃくよ。

 蒼ありがとうしゃく!」


「けっこう作るの大変でした。

 大事にしてくださいね?」


詩乃に目を塞がれながら蒼が美鶴に言った。


「オイお前らもういいぞ」


「あ、終わった?」


「おう」


「いっくしゃくよーっ!!

 おぷせさっしゃくっ!!!」


…………?

どしたの、美鶴。

固まって。


「あ、蒼何しゃくかコレ」


「何って……。

 見て分かりませんか?」


どら。

横から覗く。


「ほーいいじゃん、美鶴。

 よかったじゃん」


「ずぇえんずぇんよくないしゃくっ!!

 なんしゃくかこれぇぇっ!!!」


美鶴は箱から蒼のプレゼントを引っ張り出すと

高々と掲げた。


「何って百万円程度たまる貯金箱ですよ。

 ダンボールから作った」


「ちょ、貯金……。

 しゃ…………」






しゃぁあああああああああああああああ………。






「さいころよりもこっちの方が良いと思ったんですが……」


蒼、お前……。

でも手作りじゃん。

よかったな、美鶴。


「僕はもっと……もっと……」






しゃぁああんしゃぁああああ!!!






とりあえずお誕生日おめでと美鶴。






               つづくかも~

お誕生日おめでとです、美鶴。

いつもいぢめてごめんね☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ