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~第3章~ 「オジギソウ」


目を見開いて、話を聞く


「やっぱりいましたよね?! 女の人。」


「へぇ〜、女の人やったんや?」


「僕には、薄黒い影にしか見えへんかったんに。」


「どういうことですか?! あれは何だったんですか?!」


「一旦、落ち着いてくださいよ。」


私は昨日から、いつパニックになってもおかしくなかった。

新井さんに諭され、少し落ち着いた。


「そんだけ切羽詰まってるんですね? なら、好きなだけ質問してください。

答えられる範囲で答えます。

ただし、こちらからも後で質問します。」


「わかりました。まず、私は何を見たんですか?」


「まあ、いわゆる幽霊ってやつかな。アレが何かは、僕にはようわからんかった。」


「幽霊? そんなもの、生まれてこの方見たことがないんですよ。」


「金田さん、物事には何かしら“きっかけ”ってもんがあるんですよ。」


「理由づけってやつです。たとえば、あの院長にはその女は見えなかった。

けれども、僕には“感じる”ことができた。

それはなぜか? 僕の家系は、元々霊媒師やってたらしいですわ。

でも、それは何百年も前の話で、見える人は少なくなってしもた。

そういうことですわ。」


「……仮にそうだったとして、見るなと言われても目に入るでしょう。」


「昔、家で散々聞かされた話があります。

それ聞いたら、少しは理解が深まると思うんで。

難しいし長い話になりますけど、聞いてください。」


私は、軽く頷いた。


「まず前提として、幽霊ってなんやと思います?」


「それは……死んだ人ですよね?」


「確かにその通り。

でも、大抵の人はそこを忘れてるんですよ。」


「……どういうことですか?」


「幽霊も元は僕らと変わらん、人なんよ。

僕らも死んだら同じですよ?」


「僕の家ではこう習いました。

人は理性と本能で生きてて、身体に本能、魂に理性が引っ付いてるって。

幽霊ってのは、つまり身体と本能を失った人です。


本能が無くなると、人から“欲”という欲は無くなる。

身体が無くなると、自分の形が無くなる。」


「それって、つまりどういう……」


「まあ簡単に言うたら、死んだら腹も空かんし、眠くもなくなる。

形が無くなるっていうのはな、“自分を忘れる”っていうことなんや。」


「自分を忘れる?」


「そうそう。

生きてるうちに幽霊も見えへんかったのに、死んだら見えるようになると思うか?

自分どころか、他の死んだ人も見えないようになる。


だから普通、死んだ人とは二度と会えない。

鏡にも映らない自分を、どうやって認識する?」


「それは……悲しいですね。」


「そうやねぇ。

いわゆる霊障っていうのも、見えない人に向けての何かしらの意思表示なんやろうね。」


「なんで“見ちゃいけない”かっていうことですけど、

色々無くしても“記憶”は残ってます。


例えば、もし自分が死んだ理由が“他殺”だったりしたら、どう思います?」


「それは、犯人を恨むでしょうね。」


「“恨み”っていうのは、死んでからも色濃く残ります。」


「……そろそろ僕から質問します。」


「分かりました。」


「まず、いつから見えてるんですか? その反応やと、かなり最近みたいですけど。」


「私は、確か夢? のようなものを見たんです。あの捜索活動の際に。」


「それはどういった?」


「そもそも私は、沢に落ちた記憶なんてありませんよ。」


「あの時、急に新井さんが居なくなって、スマホも効かなくなって、どうしようか悩んで、時間いっぱい探そうと思ったんです。」


「それで、ふと上の方を見たら、黒いお堂みたいなものがあって、そこで……そうだ、唯さん達を見つけたんですよ。

ただ、幽霊と同じような状態でした。なぜだか体が濡れていて、ひどく冷たかった。

だからすぐにお堂から3人を出して、持ってるライターで火を起こして場所も伝えて、彼らも温めようとした。」


「3人目をお堂から出した途端に、頭を強く殴られたような痛みがして、気がついたらベッドの上でした。」


「なるほど。これでハッキリしました。」


「一体、何が?」


「金田さん、出身は?」


「えっ、愛知ですけど、それが何か?」


「京都っていう所は、通称“魔界”って言われてるんです。

そういう血なまぐさい歴史や逸話が多く残っているためです。」


「あなたは此処、京都に魅入られた。」


「一体、何を言ってるんですか?」


「金田さんが見たのは、夢ではありませんし、僕が見たのも夢じゃなかった。」


「金田さんは、一度死にかけたということです。

おそらく幽霊が見えるようになったんも、それが原因というわけです。」


「真相を話します。まず、金田さんは沢に落ちた。

このタイミングで、金田さんは“幽霊になった”んですよ。

それに気づかずに、捜索を続けた。


お堂と言いましたが、今回の我々の捜索ルートには、そんな建物はありません。

3人を助けたのは金田さん――あなたですよ。」


「神隠しって聞いたことありますよね?

世界を本に例えた時、他のページから消えてしまった唯さん達を、金田さんだけが見つけることができた。

それも、数字で表しきれない量のページから、たったの1ページを。」


「こう考えると、彼女等もかなり危ない状況やったみたいやね。」


「正直まだ、信じられないですよ。」


「酷なこと言いますけど、“視える”ということは、決していいことではない。

本来“視えない”ということは、視たら最後――もう、まともな人生は送れませんよ。」


「……」


「そうや、金田さんがいいなら、親戚の寺、紹介します。」


「そこに行ったら、多少、今より理解できるかもしれません。」


「それと、僕の名刺、渡しときます。気が向いたら連絡してください。」


そう言って、新井さんは病室を出て行った。


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