~第2章~ 「夢痛」
私は、その日の業務を休み、病院で療養にあたった。
といっても、ほとんど寝ていたのだが、その夕方に奇妙な夢を見た。
私は小学生で、当時の友人と鬼ごっこをしている。
でも、友人の中に身に覚えのない人物がいる。
どうしても、その友人とは仲良くなれず、周りの友人たちはただ、
私とその人物が喧嘩している様子を見ているだけだった。
目が覚めると、深夜の2時で、尿意を催していた私はトイレへ向かう。
とある病室の前で、足が止まる。
そこには長椅子が置かれていた。
そこに座る、作業着の様なものを着た一人の男。
こんな時間に、一体誰を待っているのか?
すぐに私は通り過ぎ、トイレに向かおうとする。
だが、横目に見たその男の姿に、驚愕した。
男には、足が無かったんだ。
それに作業着には血飛沫のようなものまで付着している。
男は、どこかを見つめているだけで、動かない。
この光景には、既視感があった。
夢で見た、行方不明者と同じような状態だ。
私は、直感的に反応できなかった。
まるで、見てはいけないものを見てしまったように。
さっさとトイレを済ませ、部屋に戻ろうとした。
だが、またあの男を見たくはなかったから、少し遠回りをしようとしたんだ。
一度、2階の階段を経由して迂回することにし、歩き始めた。
私の頭の中は一杯一杯で、気分も悪くなってきた。
「勘弁してくれ……」
2階の階段を上り、長い廊下を眺める。
どこかの部屋の前に、髪の長い女が立っていた。
私の足は、徐々にその女に近づいていく。
近づくほどに、姿は鮮明になってきた。
女が立っているのは院長室の前で、何かぶつぶつと囁いている。
見た目は、20代前半くらいだろうか。服装も、どこにでもいそうなカジュアルなものだ。
女との距離が2メートルほどになった頃だろうか。
私は、はっきりと何を囁いていたのか、聞いてしまった。
「ゆるさない……」
その言葉には、怒りを感じながらも、一握りの哀しみがあった。
これが怨みか、と心の中で感じた。
不意に、女が振り向こうとした。
すぐに目線を外し、うつむきながら早歩きで病室に戻った。
この一瞬で、かなりの気疲れを起こし、眠るのにそう時間はかからなかった。
翌朝、退院のための検診があった。
「金田さんですねぇ? 頭の痛みとかは大丈夫ですか?」
「はい、もう大丈夫ですね……」
「一応、痛み止めと軟膏出しときますんで、受付の方で貰って帰ってください。」
「あの……」
「はい?」
「後ろの方は、お知り合いの方ですか……?」
「えっ? 後ろの方? あ〜金田さんを運んできてくださった刑事の方ですね。」
「いえっ……」
「話、終わりました?」
新井さんが言葉を遮るように入ってきた。
「金田さんはこちらの方で、まだ聴取がありますんで。預かります。」
「そうですか。では、お勤めご苦労様です。」
医師の方が出て行ってすぐに、新井さんが耳打ちで言った。
「あんま見んほうがええよ。」




