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1 溺愛してくる婚約者と魔道具のカギ

『追放令嬢の妹には復讐の才能がない! そして復讐相手は愛が重い』=フクサイなし!

    ×

#マーブルクラフト 第二の異常『交換ボックス』

まぶくら詳細:https://theater-words-collection.com/marblecraft/


フォン挿絵(By みてみん)

アリサ挿絵(By みてみん)

をいちゃいちゃさせたいだけのお話です。


本編/企画を知らなくてもお読みいただけるようにしていますが、もしよければシリーズ本編/マーブルクラフト企画もよろしくお願いいたします。


*本編完結後のお話です。本編のネタバレを含みます。


 アリサ・エマ・トゥーンベリ。16の誕生日。

 トゥーンベリ公爵家の紋章入りの馬車で王宮に入る。

 婚約者であるフォン・シオン・テオプラストス王太子殿下に会うためだ。


 フォンの高等貴族学舎卒業のタイミングで、両家の親を通して正式に婚約した。フォンが学舎を出たら、婚約者でもない限りほとんど会うこともできなくなるからだ。

 自分の誕生日に大手を振って彼に会える。その立場がすごく嬉しい。


「待ってたよ、エマ」

 馬場に馬車が停まったのと同時に、扉が開いて手を差し出される。

(王太子殿下が馬場に出迎えに来てよろしいの?!)

 普通の来客ではありえない。けれど、自分たちの関係ならいいのだろうか。

 驚きよりも喜びが勝って、差し出された手に手を重ねる。


「お会いしたかったですわ、シオン」

 親しい関係でしか呼び合えないミドルネームで答えると、手を引かれてそのままぎゅっと抱きしめられた。

「僕も」

(ひゃんっ)

 耳をくすぐる甘い声に、高鳴っていた鼓動が加速する。


「エマに会えない日は1日が1000年みたいだったよ」

「1000日ではなく?! 1000年だととっくに老衰してますわよね?!」

「ははは」

 軽く笑って、そっと唇が触れあわされる。愛しさをこめて応える。


「おいで。今日が特別になるようにがんばったから」

「シオンに会えただけで特別ですわ」

 目を細められ、そのままお姫様抱っこで抱き上げられた。

「え、あの、シオン? わたくし、自分で歩けますわよ?」

「うん。僕が離したくないだけだから気にしないで」


「お城勤めのみなさんの視線もありますし、恥ずかしいですわ」

「大丈夫大丈夫。僕がどれだけエマを愛しているかは、下働きまでみんなに周知しておいたから」

「はい?」

「なんなら父上との謁見中にいっぱいキスしても誰も気にしないと思うよ」

「わたくしが気にしますわよ?!」

「ははは」


 そのまま抱えて連れて行かれたのは、迎賓室の一室だ。きらびやかな装飾がほどこされた部屋には、いくつかのソファとテーブルがある。中央のテーブルには大輪の花が飾られていて、大中小3つの箱が置かれている。

(シオンの部屋ではありませんのね)

 思って、何を期待していたのかと恥ずかしくなる。婚約者とはいえ、私室に入れるはずはないではないか。


「本当は僕の部屋に連れこみたかったんだけどね。さすがにまだ外聞が悪いから」

 まるで心の中を見透かされたかのようなタイミングで言われた。めちゃくちゃ恥ずかしい。


 中央のテーブルに隣接した、3人くらい座れそうなソファにそっと下ろされる。抱き寄せられて、ひたいにキスをもらう。

 城の使用人と自分の付き人は、あまり視界に入らない位置に控えてくれた。けれど、まったく気にしないというのは難しい。


 髪をすくようにして頭を撫でて、耳にそっと唇を触れさせた彼が、使用人たちの方にちらりと視線を向ける。

 

「先にプレゼントをあげるね」

 言葉とともに名残惜しそうに頬を寄せられて、それから解放されると、彼がテーブルの3つの箱を引き寄せた。

(どれかを選ぶのかしら?)

 大きい箱か小さい箱か真ん中か。そんな童話があったなと思う。


「まず、こっちは」

(まず?!)

 もしかすると全部くれる気なのか。甘やかされすぎではないだろうか。

 彼が中くらいの箱を開けて中身を見せてくれる。

「パールとピンクパールをデザインネックレスにしてもらったんだ。エマにはこういう柔らかい雰囲気が似合うかなって」


 かなりいいものだろうが、すべてダイヤなどではなくてホッとした。

 プロムの前に彼からもらった明らかに高価なダイヤの指輪は、今日も左手の小指に輝いている。

 右手の小指には、ブルーサファイアのデザインリング。これも同じタイミングで送られて、あのころはまだ将来の約束ができなかったから、すごく申し訳なかったのを覚えている。


(実はもうひとつ……)

 身につけることはできないけれど、懐かしくなって持ってきたものがドレスのポケットに入っている。


 彼がパールネックレスを箱から取りだした。

「今つけてるネックレスと替えてもいいかな?」

「はい。ありがとうございます」

 家からつけてきた細身のネックレスを外し、空いた箱に横たえる。

 と、当たり前のように腕を回してつけてくれる。


(ネックレスは首輪だと言っていましたわね……)

 前に彼の兄(ニゲラ)から贈られた時に、フォンにネックレスは首輪で所有の証だと言われた。

 指先でそっと触れる。


「どうかな?」

「わたくしのすべてをあなたに所有されたようで、ドキドキしますわ」

(ひゃっ……)

 言い終わるか終わらないかのうちに、唇をすくわれて大人のキスを求められる。

 彼に染められて溶かされていくかのようだ。


 しばらくしてやっと解放されたと思ったら、彼が長く息をついた。

「……ムリ」

「え?」

「エマが、僕のかわいいマシュマロちゃんがかわいすぎてムリ! 今すぐ食べちゃいたい」

「……はい?」

「ちゃんと一緒になれるまで、学舎の卒業と王妃研修で最低あと2年でしょ? 2年とかほんとムリ」


「わたくしの学舎の卒業を待って、姉様と2人で王妃研修に入ることになりましたものね」

 彼の兄(ニゲラ)自分の姉(ウィステリア姉様)とみんなで相談して決めたことだ。その後どの道を選んでも、習ったことはムダにならないと思っているし、姉様も一緒なら安心だ。


「忍耐を試される気しかしないよ。言ってても仕方ないからがんばるけどさ。それで、2つめね」

(本当にぜんぶプレゼントですのね)

 びっくりだ。


 彼が一番大きな箱を開けて、中身を見せてくれる。何に使うのだろうと思うような腕くらいの大きさのカギと、小指くらいの大きさの小さなカギだ。

「王宮の宝物庫をあさってみたら、おもしろそうなものがあってね。古代言語の石板に『望む場所への扉を開くカギ』って書いてあって」


「待ってくださいませ。古代言語を解読されたのですか?」

「おもしろそうだったからね」

「おもしろそうで解読できるものではないと思うのですが……」

 彼の頭の中はどうなっているのだろうか。


「できちゃったから、気にしないで。それで、大きい方がメインの魔道具で、小さい方は戻ってくる時に使う、対になるカギなんだって。

 古いもので、1回しか使えないらしいから、もう起動できるかはわからないけど。ちょっとおもしろそうじゃない?」


「はい。古代の魔道具なんて初めて見るので、興味深いですわ。こんな貴重なものをいただいてもよろしいのでしょうか」

「誰も使い方がわからなくて死蔵されていたものだから、いいんじゃないかな。管理してる部門に聞いたら、好きにしていいって言われたし」

「そういうことでしたら」


 まず小さい方のカギを手にとってみる。どんな材質でできているのかわからないけれど、とても軽い。羽根のような、持っているのを忘れそうな軽さだ。

 それから、大きい方を取りだす。こちらは両手で持たないといけないくらい、ずっしりと重い。


「使い方なんだけど、まず小さい方を片手で握って。それから両手で大きい方を持って、空中に向けて。行きたい場所のイメージを言葉にしながらカギを開けるように右に回すみたい。たとえば僕たちが2人きりになれるような……」

「『見たことも食べたこともないような、おいしいお菓子がたくさんある世界』に行きたいですわ!」


 ガチャリ。

 重い音がして、扉の形に空間が輝く。


「え」

 正直、本当に起動するなんて思っていなかった。

 驚いて彼を見る。そうする間に光が広がって飲みこまれていく。

「エマ!」

 慌てたように呼ばれて、ぎゅっと彼に抱きしめられた。



お読みいただき、ありがとうございます。


フクサイなし! のバカップルが異世界から転移してきます。

マブクラの世界設定が現代日本なので! おいでませ!

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