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第6話:「宝物庫」


 「......」


 『......』


 ダンジョンに潜り始めて約5分。

 俺はダンジョン攻略に成功した。


 「なんか弱すぎじゃないか?」


 『それぐらいあなたの力がぶっ飛んでるってこと』


 それはそうかもしれないが......

 

 ちょっとつまらんな。

 弱すぎて。

 

 俺が想像してたのは死ぬか死なないかのラインを

 反復横跳びしてるぐらいの危険なクエスト。

 

 こんな魔法の2発や3発で攻略できちゃう

 クエストじゃない。

 

 もう次は魔王でも倒しに行こうかなと思うレベルに

 簡単だった。

  

 「おいラピス、あれはなんだ?」


 ダンジョンの最下層にいた俺は、

 部屋の奥にある光っている物体を見つけた。


 『あ!あれは宝物庫の鍵よ!早くとって!』


 「マジかよ、宝物庫!?これで俺は億万長者に...」


 俺はすぐに鍵の方へ走り、

 鍵が傷つかないように慎重に手に取った。

 

 てか今思ったんだが、

 ラピスって俺と視界共有してるんだな。


 てことは、俺のあんなことやこんなことまで......

 

 キャー!

 

 えっち!


 『......』


 その後、俺は最下層を探し回り、ついには

 鍵穴がついた宝物庫らしき部屋を見つけた。


 「この扉を開けたら俺も億万長者に......」

 

 俺はゆっくりと鍵をはめた。


 そして、ひねる!


 『ガチャ』


 おー。


 なんか思ったよりも普通だったな。


 もっと眩しい光がビカビカッってなるかと。

 派手な確定演出が来るかと。


 しかしだ。

 

 そんなことなどどうでもよいのだ!


 金さえ入ればなんでもよいのだ!


 『前から思ってたけど、あなた結構最低よね』


 「うるさい」


 まぁまぁまぁ。

 しょうがないか。

 

 これが『人間の性』というものよ。


 ではでは。

 気を取り直して。

 

 「いざ、突入!」

 

 俺は大きな期待を背負い、宝物庫への扉を開けた。

 億万長者になり、人生イージーモードに。

 

 異世界らしいこと?

 それはエルフのお姉さんと共に体験すればいい。


 色んな意味で。

 

 金だけじゃない。

 街の厄介者を成敗した英雄として讃えられる。


 世界を平和にできる。

 

 しかし。

 

 宝物庫の中には、お金も魔道具も何もなかった。

 

 その代わりに、ある少女が分厚い氷の中に

 閉じ込められていた。


 最初は誰かと思ったが、よく見るとどこか見覚え

 のある顔だった。

 

 「おい、嘘だろ......」


 一緒に楽しい時間を共有した『あの子』だ。



 「な、なんでお前が......」

 


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