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武士道MBA  作者: P-4
第1章
7/10

第6話「リーダーシップ編〜侍と軍人、魂の対決〜」

 広々とした講義室に、教授が静かに『リーダーシップ』とホワイトボードに書き始め、教室内にはピンと張り詰めた空気が漂う。


「さて、今日のテーマはリーダーシップだ。ビジネスにおけるリーダーシップは、単に指示を出して終わるものではない。リーダーには、部下と信頼を築き、彼らが安心して意見を述べられる環境を整える責任がある。」


 教授がホワイトボードに『オープンドアポリシー』と書き込むと、学生たちは一斉にペンを走らせ、メモを取る。


「まず一つ目はオープンドアポリシーだ。リーダーは、部下との間に壁を作らず、常に相談できる窓口としての役割を果たさねばならない。言い換えれば、物理的な扉だけでなく、心の扉も開いておくということだ。」


 竜神崎は教授の言葉に心を打たれながら、筆を走らせていた。オープンドアポリシーという言葉が耳に入ると、自然と彼の記憶は戦国の時代に戻り、信長公の姿が浮かんでくる。


(殿は常に、私たち家臣に対して心を開いておられた。どんな些細な話でも、戦の準備中であっても、耳を傾けてくださった。あの時、我らが迷いなく進むことができたのも、殿がいつも我々の思いを汲んでくださったからだ…)


 竜神崎は、信長公のもとで過ごした日々を思い出す。彼が戦場に赴く前、家臣たちの言葉に耳を傾け、緊張をほぐし、意見を求めるその姿。時に冗談を交え、そして真剣に話を聞くその態度は、家臣たちにとって強力な励みであり、安心感だった。彼らが忠義を尽くしたくなるのは、信長公の心がいつも開かれていたからに他ならない。


(まさにそれこそ、殿のリーダーシップだった…)


 竜神崎の胸に、信長公への深い尊敬と共に、オープンドアポリシーの本質が強く刻み込まれる。


 教授はさらに、ホワイトボードに「ミラーリング」と記し、説明を続ける。

「次はミラーリングという手法だ。これは、リーダーが部下に寄り添い、同じ姿勢や言葉遣いを取ることで、自然と信頼関係を築くテクニックだ。リーダーが自らの言動を調整し、部下との共感を深めるのだ。」


 竜神崎は、戦場での信長公を思い浮かべながら考えにふける。


 竜神崎の心は、信長公の広間に舞い戻っていた。あの張り詰めた空気の中で、信長公がいつも家臣たちの声に耳を傾け、彼らの思いを受け止めてくださったことを思い出す。


 広間の床に座し、緊張した面持ちの家臣たちを静かに見渡す信長公。目が竜神崎に向けられると、彼は静かに促した。


「竜神崎よ、意見があるなら言うがよい。我が家臣たちの声を聞かねば、進むべき道は見えぬ。我らが未来を切り拓くためには、皆の心を理解し、共に歩む覚悟が必要なのだ。」


 竜神崎は信長公の言葉に心を打たれつつ、一瞬ためらう。しかし、信長の真摯な眼差しに背中を押されるようにして、ついに自分の考えを述べ始めた。


「殿は、いつも我らの意見に耳を傾け、共に進む道を見出してくださいました。戦場でも、平時でも、我々が思うこと、願うことを常に尊重し、決して独りよがりではなかった。そのお姿に、我らは何度も心を救われ、忠義を尽くしてまいりました。」


 信長は静かに竜神崎の言葉に頷くと、他の家臣たちにも同じように一人ひとり目を向け、意見を求めた。家臣たちは緊張を抱えながらも、殿の包容力ある態度に心を開き、それぞれの思いを真剣に伝えていく。信長の目には、家臣たちの言葉を深く受け止め、反映しようとする意志が宿っていた。


 やがて、信長は皆の意見を聴き終え、穏やかな声で言葉を紡いだ。


「皆の意見を聞き、共に歩む道を見出す。それが、我が道だ。共に歩むためには、家臣一人ひとりの思いを鏡のごとく受け止めねばならぬ。」


 その言葉を受け、竜神崎は改めて信長のリーダーシップの本質に気づく。殿はただ命令を下すだけではなく、部下を深く理解し、彼らの成長を促していた。殿は鏡のように、家臣たちの心を映し、彼らが歩むべき道を見出す手助けをしてくださっていたのだ。


(これこそが、現代で言う『オープンドアポリシー』そして『ミラーリング』…殿は私たちの気持ちをそのまま受け止め、信じてくださった。それが、私たちの忠義をさらに深くする力だったのか…)


 竜神崎は、信長公の教えを胸に刻み、リーダーとは部下を理解し、彼らの成長を支える存在であるべきだと深く感じ入った。


 教室は一瞬、竜神崎の圧倒的な存在感に包まれて静まり返った。竜神崎が深呼吸を終え、ゆっくりと目を開けると、彼の真剣な眼差しが一人ひとりの学生に注がれる。


「皆、拙者に従え。我々は共に新たなる未来を切り開こう。それぞれが自分の力を信じ、共に進むのだ。」


 その言葉には、まるで戦場での武将が兵を率いるかのような迫力があり、部下役の学生たちは竜神崎の言葉にぐっと引き込まれていった。静かな教室で響き渡る竜神崎の声は、まるで一人ひとりに直接語りかけるかのように響き、部下役の学生たちの心を強く揺さぶった。


「す、すごい迫力だ…。この人について行けば、何かが変わる気がする…!」


 クラスメイトの一人が感嘆の声を漏らす。


 竜神崎は全員の目をしっかりと見据え、一人ひとりに向けて的確な指示を与え始める。その声には迷いがなく、強い信念が感じられた。


「お前は前に立ち、勇気を持って進め。お前は皆を支え、共に戦え。そしてお前は全体を見通し、導け。共に勝利を掴もう。」


 それぞれに対する竜神崎の言葉は、まるで彼らの心の奥底に触れるようで、ただの言葉に留まらず、彼らの内面を刺激し、士気を高めていった。


「ただ言葉を投げかけてるだけなのに、なんでこんなに引き込まれるんだろう…。」


 別のクラスメイトが感動を抑えきれずに呟いた。


 竜神崎の言葉は、ただの指示ではなく、一人ひとりに寄り添い、彼らの力を引き出す魔法のようだった。その瞬間、彼の存在がチーム全体の中心に据えられ、彼を支え、共に戦うことが自分たちの使命だと感じ始めた部下役の学生たち。彼らは熱意に満ちた表情で、竜神崎に深く頷いた。


 竜神崎は、指示を出すだけでなく、一人ひとりに目を合わせ、じっと相手の様子を観察していた。その視線は、部下役の学生たちが何を思い、何に不安を感じているのかを察しようとするように優しく、どこか穏やかでもあった。


「君たち一人ひとりが、このチームの力でござる。何か迷いがあれば、遠慮なく申すがよい。」


 竜神崎は心を込めて言葉をかけ、まるで戦場で信長が家臣の声を聞いていたように、どんな意見でも受け入れる姿勢を示した。


 部下役の一人が恐る恐る手を上げて言う。


「でも、自分にできるかどうか、少し自信がなくて…。」


 竜神崎はその学生の不安を感じ取り、微笑んで頷いた。


「よいのだ、誰も最初から強くはない。拙者も同じく迷い、戦場で己を信じることの難しさを知った。だが、皆が共にあれば、それだけで一人ひとりが強くなるでござるよ。」


 竜神崎は一歩相手に近づき、ゆっくりとその学生の不安げな目を見つめる。


「我らは共に強くなる道を歩む仲間でござる。君の不安も悩みも、拙者が共に背負おう。決して一人ではない。」


 竜神崎の言葉は、相手の不安や戸惑いを受け止めるように柔らかで、まるで鏡のように相手の感情を映し出していた。これが『ミラーリング』だと、竜神崎は無意識に感じていたのだ。


 他の部下役の学生たちも、竜神崎の深い配慮と共感の姿勢に心を開き、次々と自分の意見や不安を打ち明け始める。竜神崎はその一つ一つに耳を傾け、オープンドアポリシーを体現していた。教室の中には、自然と温かい空気が漂い始めた。


「何も遠慮することはない。拙者は常に皆の意見を聞く用意がある。共に歩むには、皆の声が何よりも大切でござる。」


 竜神崎は柔らかい眼差しを向け、みんなに向けて静かに語りかけた。


 一人の学生が口を開いた。


「自分は今まで、リーダーってただ命令するだけだと思っていました。でも、竜神崎さんみたいに心を開いてくれるリーダーとなら、ずっとついていける気がします。」


 竜神崎はその言葉に微笑み、


「皆が自分の意見を伝えやすい環境を作ること、それがリーダーの役目なのだ。それこそが、リーダーシップの本質と心得ておる。」


 教授も満足そうに頷きながら、


「素晴らしい。まさにリーダーシップの真髄だ。信頼とは一方的に築けるものではない。心の扉を開き、部下の気持ちを鏡のように受け止めることこそが、本物のリーダーの資質だ。」


 教室全体が感動に包まれ、竜神崎の姿に圧倒されながら拍手が巻き起こる。拍手が静まると、突然モーガンが立ち上がり、鋭い視線を竜神崎に向ける。


「俺もリーダーとしての経験があるが、この国のリーダーシップはもっとシンプルだ。俺が命令を出し、部下がそれを実行する。それで結果を出す。それが全てだ。即断即決、スピードが命。部下の意見なんて待ってる時間はない。」


 モーガンの声には冷徹な自信が込められ、まるで彼の中に揺るぎない信念が宿っているかのようだっ

 竜神崎はその言葉を一瞬で受け止め、静かながらも力強い声で反論する。


「貴殿の言うこと、理解できぬわけではない。しかし、拙者が学んだリーダーシップは違う。部下を信じ、その意見を聞き、共に成長することこそが真の力でござる。殿も、我々を信じ、背中で導いておられた。」


 竜神崎の視線は迷いなく、モーガンを見据えていた。彼の言葉には戦場を駆け抜けた侍としての信念がにじんでいる。彼の脳裏には、信長が家臣たちに心を開き、彼らの声に耳を傾けていた光景がよみがえっていた。


「現場では一瞬の迷いが命取りだ。リーダーシップとは迅速に判断し、的確な指示を出すこと。それ以外に勝利への道はない。それが俺が戦場で学んだことだ。」


 ジョンが言葉を添えると、モーガンは軽く頷き、冷ややかに竜神崎を見つめる。


 しかし、竜神崎はその鋭い視線にひるむことなく、一歩も引かずに応じた。


「結果が重要であること、否定はせぬ。しかし、部下の成長を無視しては、真の勝利には繋がらぬ。部下が成長し、共に強くなってこそ、長期的な勝利が得られるのでござる。殿もそれを、我らに教えてくださったのだ。」


 竜神崎の声には、信念がさらに強く込められ、まるでその場に信長が現れたかのような威厳を感じさせた。彼の言葉は、部下と共に歩むことの重要性を語り、それが一時の勝利ではなく、持続する力を生むことを主張していた。


 モーガンは少し眉をひそめ、目を細めて竜神崎を見つめる。


「長期的な勝利、ね…」


 モーガンは低い声で呟いた。


「だが、命を賭ける戦場では長期的なものなど考える暇はない。瞬時の判断がなければ、兵もリーダーも生き残れない。それが俺の戦場での教訓だ。」


 竜神崎はその言葉を受け止めながら、心の中で信長の教えを思い返す。


「部下の成長とは、命の重みを知り、共に戦うことを学ぶこと。我が主君、信長公は、全ての家臣の声に耳を傾け、我らを共に戦う仲間として導いてくださった。それが、真のリーダーシップでござる。」


 教室にいる学生たちは、侍と軍人という二つの信念が正面からぶつかるこの対話に完全に魅了されていた。モーガンが効率と結果を重視するリーダー像を語る一方で、竜神崎は一見遠回りに思えるような部下の成長と信頼の構築を重んじる。その姿はまるで、戦国時代と現代のリーダーシップが時を超えて交わり、互いの信念を試しているようだった。


 教室内の学生たちは、侍と軍人という二つの信念が正面からぶつかる様子に、言葉を失い、息を呑んで見守っている。


 静まり返った教室の中で、教授が口を開く。


「ふむ。どちらのリーダーシップも、異なるが価値のあるアプローチだ。リーダーシップとは、状況に応じて柔軟にスタイルを変えることができる柔軟性も必要だろう。君たち二人が互いに学び合うことで、真のリーダーシップを見つけられるのではないか?」


 少し考えたのちに、教授がその言葉をつなぐ。


「そうだね。では真のリーダーシップとは一体何だろう?二人の考えるリーダーシップを、それぞれ自分の言葉で表現してみてくれ。自分のスタイルを、できるだけ率直に、印象に残る形で伝えてほしい。」


 その言葉にまずモーガンが答える。


「さっきも言った通り、リーダーシップってのは、即断即決、命令を出して終わりだろ?ビジネスでも軍でも、リーダーはトップに立って、スピードと力で引っ張るだけ。それ以外にやり方があるか?」


 そして、彼はリズムを刻みながら続けた。


「命令が俺の道、部下は従え!

 結果が全てだ、スピードが命!

 トップダウンで引っ張る力、それが俺のリーダーシップ!」


 彼のラップに、教室は一瞬静まり返った後、ざわめきと興奮が広がる。モーガンの強烈なリーダー像に

圧倒され、クラスメイトたちは息をのむ。


 そのとき、竜神崎がゆっくりと立ち上がり、静かな声で話し始めた。


「拙者の信じるリーダーシップとは、ただ命令を出すことではない。仲間と共に歩み、信じる力を育てることこそが本質だと、拙者は考える。命令だけでは、人はついてこぬ。」


 そして、彼は目を閉じて心を込めて俳句を詠んだ。


「殿の教え 共に歩めば

 信じる力

 未来を拓く これが武士道」


 モーガンのラップとは異なる静けさと重みのある言葉に、クラスは再び静まり返る。その後、モーガンが挑戦的な表情で立ち上がり、ラップ調で返答する。


 教授とクラスメイトたちはその様子を息をのんで見守り、二人のバトルはやがて、リーダーシップの本質に迫る熱いラップバトルへと発展していった。


 二人の緊張が高まり、モーガンはさらに熱くなり、続ける。


「戦場じゃ即断即決、スピードが命!

 感情は後回し、勝つことが先。

 指示に従え、疑うな、リーダーシップは

 強く速くそして勝つこと!」


 竜神崎は俳句で応戦する。


「勝つだけでは 道は見えぬぞ

 人を導き

 心を磨け 未来を築け」


 議論は白熱し、モーガンはさらに激しいラップを繰り出し始めた。


「また信頼か?それも悪くない!

 でも戦場じゃ、そんなこと考えている暇はない!

 信じる気持ち?それじゃ遅い、命がけの戦いじゃスピードがすべて、他に何が必要だって?

 リーダーは前を走り、追随を許さず、即断即決、迷わず斬り進む!

 誰かの声を待つ?それが勝利を遠ざける!信じる暇があるなら走れ、叫べ、進め!

 No pause, no trust, just a rush to the top, 戦場の掟は Simple: Move fast or drop!」


 竜神崎もさらに強い口調で俳句を重ねる。


「信じる者と 共に進めば

 迷いはバニッシュ

 心でウイン 未来のリザルト」


 ラップと俳句がぶつかり合い、教室には独特な緊張感と熱気が漂う。そのバトルの中で、二人はお互いの異なる信念に触れ、少しずつ相手のリーダーシップにも価値を見出し始める。


 ディベートが続く中、モーガンの鋭い質問と押しの強さに竜神崎が少しずつ押されていく。


「Trust has its place, but don’t get it twisted!

 In this world, it's speed that’s listed.

 No room for waiting, no time to stall,

 a true leader moves and conquers all!」


 竜神崎も少し圧されながら俳句で応じる。


「信じる者と 共に行くべし

 されどスピード…

 勝利の定石 忠義をホールド…」


 モーガンの勢いに竜神崎が息をのんでしまい、少し迷いが見え始める。それを察したジョンがすかさず前に出て、熱い眼差しで竜神崎に加勢する。


「おい、サムライ!お前の忠義も、仲間への想いもわかるぜ。でもな、戦場じゃ時に冷徹な判断が命を救うんだよ!」


 ジョンはさらにモーガンに鋭い視線を向けながら続ける。


「Speed’s your game, I respect that, bro,

 but what’s a leader with no team to show?

 Results come fast, sure, I’ll buy it,

 but without trust, how long can you try it?」


 その言葉にモーガンが一瞬息を飲む。ジョンの加勢に力を得た竜神崎が、不敵な笑みを浮かべて再び立ち上がる。


「共に勝つぞ 信じて進め

 リーダーの道

 プライドと忠義 心でシンクロ!」


 モーガンはその二人の言葉を受け、ふと表情を和らげる。そして、互いに譲らない二人にうなずき、やがて満足げに微笑む。


「Alright, I get it, trust has its place,

 but don't forget, speed wins the race.

 I'll admit, you've got your style,

 let's walk this road together for a while!」


 そのリリックを受け、竜神崎も微笑みながら俳句で応じる。


「ユーストロング 確かにフィーリン

 それでもマイウェイ

 プライドをホールド トップへトゥギャザー!」


 二人が最後に握手を交わすと、教室全体が静寂に包まれる。教授とクラスメイトたちは二人の情熱とリーダーシップに心打たれ、拍手が湧き起こる。


「すごい…こんなに熱い想いでリーダーシップを語り合えるなんて…。これこそ本当のリーダーね。私もいつか、こんな風にみんなを導けるリーダーになりたい…」


 リンジーが涙ぐみながら言う。


 クラス中から歓声と拍手が沸き起こり、竜神崎とジョンも互いに敬意を示し合う。その中、教授が拍手をしながら前に進み出る。


「素晴らしい!二人とも異なるリーダーシップスタイルを持っている。モーガンのトップダウン式は迅速な意思決定に適し、緊急時にはその力が発揮される。即断即決が求められる戦場や企業の危機対応には、強い指揮力が欠かせない。」


 教授が静かに視線を竜神崎に移す。


「一方で、竜神崎君のボトムアップ式は、組織全体の成長を促し、長期的な成果を生むスタイルだ。部下の意見を尊重し、彼らに自信を与えることで、持続的な成功を可能にする。この二つのスタイルを状況に応じて使い分けるのが真のリーダーシップだ。」


 教授が二人に目をやりながら続ける。


「そうだ。君たちのスタイルはどちらも正しい。そして、互いに補完し合うものだ。真のリーダーシップとは、一つの方法に固執せず、状況に応じて適切にリーダーシップを選び、組織を導く力なんだよ。」


 竜神崎はまっすぐにモーガンを見つめ、力強く言葉を投げかけた。


「貴殿のリーダーシップ、見事であった。戦場であれ、ビジネスの場であれ、その覚悟は本物だ。」


 モーガンも竜神崎の言葉に応じ、しっかりと目を合わせて頷く。


「お前の信念も素晴らしい。戦場でもビジネスでも、共に進もうぜ!」


 その瞬間、教室全体に熱い空気が広がり、クラスメイトたちはふたりのリーダーとしての対話に感動していた。涙ぐむリンジーがそっと目元をぬぐいながら微笑むと、ジョンも感極まっている様子で竜神崎の肩をたたいた。


「竜神崎、お前は本物だな…!こんなに熱くなるなんて思ってなかったぜ!」


 ジョンの力強い声に竜神崎も少し照れながら微笑む。


 しかし、そんな光景を見ていたティファニーとジェニーは、少し呆れたように目を見合わせる。ティファニーが軽くため息をつきながら微笑んでつぶやいた。


「男の子って、ほんとに単純ね…」


 ジェニーも冷静な目で応じ、くすっと笑う。


「ほんと、それ。」


 ふたりの軽い皮肉をよそに、教室の中は感動の渦に包まれていた。リーダーシップの真髄を学んだ一日が静かに暮れていく中、竜神崎とモーガンの間には新たな友情が芽生え、学生たちはそれぞれがリーダーとしての理想像を胸に刻んでいたのだった。

次回 第7話「ビジネスアナリティクス編~異文化交流とリスペクト~」

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