08:『呪いのアイテム身につけてみた』
メンバー
・さかのん:本作の主人公、異世界に来てユーチューバーを始めた唯の人間。
・ノア:獣人。
・アイ:人工知能、だいたいネットの中にいる。
以上のことが頭に入っていたら大丈夫です。
「今日はねー、市場で胡散臭いおっさんから呪いのアイテムを買い取ったから、これが本当に呪いのアイテムなのか検証してみるよ!」
コスメ紹介の動画投稿者の方みたいに、見やすいようにアイテムをカメラに近づけて視聴者のみんなに見せる。
ー【胡散臭いと思ったおっさんから買い取るなよ】
ー【普通に詐欺られてそう】
ー【再生回数の為なら呪いのアイテム(仮)を身につけることも厭わないのか】
ー【これが動画投稿者の末路…?】
ー【普通のブレスレットにみえる】
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だって呪いのアイテム売ってくれた人、本当に胡散臭いおっさんだったし。
漫画の初っ端に登場して裏切って直ぐ痛め合いそうな小物みたいな見た目をした中年男性だった。笑い方も特徴的だったし。
まあそんなことは今はどうでも良くて。
買った呪いのアイテムは見た目は普通の細いタイプのバングルみたいで、模様が細かく刻まれてておしゃれ。これが呪いのアイテムと知らなきゃ普通にアクセサリーとして使ってても不思議じゃない、普段使いしやすい感じ。
早速呪いのアイテムをつけて、キャンピングカーの結界の外に出てみる。
もちろん私の傍にはノアとアイが待機。
流石に私一人で呪いのアイテムとやり合うだけの力は無いので。さかのんは自他ともに認めるザコだし。
それに、こういうアイテムってゲームとかだとレベルが高すぎると効かないとかあるから、もしもの事があってもノアとアイがいれば余裕っしょ。
「意外と何もな…ぶへっ」
アイテムをつけた状態で結界の外に出てみるが何も無い、と思いきや石とか段差とかないところで何故か転んで、さっきまで無かったはずの泥水に顔からダイブ。最近ここら辺の地域は晴天続きで水溜まりなんてできようがないはずなのに!私ザコだし泳げないけど運動神経そんなに悪いわけじゃないのに!
起き上がろうと手を着いたところに虫が。手に体重をかけていたから虫は無残に潰れ。
そんなことが数秒の間に起こっている最中に頭に鳥の糞が2回も直撃。
そして最後は何故か落とし穴に落ちた。まるでドッキリを仕掛けられたみたいに、本当に綺麗に落ちた。
しかし私はここで感情的になることなく、冷静に対処する。
とりあえず落とし穴から出て、念の為呪いのアイテムを外せばさっきまでの不運が嘘のように何も起こらない。
「確かにこれ、十中八九呪いのアイテムだ!」
ー【呪いのアイテム確定だわ】
ー【十中八九どころか100パーだろ】
ー【なんで断言しないの…?】
ー【この数秒でそんな不運な目に遭ってて…?】
ー【呪いのアイテムつけてた間はさかのんマジで世界一不幸だったと思う】
ー【今の不幸な出来事が起こった間、10分どころか5分も経ってないってマ?】
ー【さかのん泳ぎは壊滅的だけどそんなドジなわけじゃないのに】
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その後も、もう一度呪いのアイテムを身につけてみたけど…。
「いったぁ!!なんで上からタライ落ちてくるの!?そもそもこの世界にタライまだ無くない!?」
ー【そんな昭和じゃないんだからw】
ー【時代設定どうなっとんねん笑】
ー【さかのんが居るのってヨーロッパ系の異世界じゃなかったっけw?】
ー【タライどっから現れた!?】
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周りに建物なんてないのに、上からタライが落ちてきて頭に直撃したり。
「何で少し歩くごとに天気が変わるの!?」
ー【雨、台風、雷、雪、霰エトセトラ】
ー【妖精のイタズラ?】
ー【さかのんの周りだけ酷い天気で、離れたところは晴天なのが余計にオモロい笑】
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外を歩くごとに雨、台風、雷、雪、霰、霞と天気が急激に変わったり。
晴天だったから傘なんて持ってなくてずぶ濡れに。
異世界の天気は山頂みたいに変わりやすいとはいえ、こんなに変わりやすいものだっけ!?
「うっわ!蜘蛛の巣引っかかった!」
ー【どう見ても突然クモの巣が生まれたようにしか見えないんだが…?】
ー【これが呪いのアイテムの効果?】
ー【クモの巣って普通に気づきづらいしな】
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歩いていたら突然蜘蛛の巣が発生して、顔に直撃したり。
「急にメガネ割れたー!!なんでぇ!?」
ー【さかのんの本体がー!!】
ー【ギャグ漫画みたいに急にパリーンって割れたな】
ー【さかのーん!!】
ー【死ぬなさかのーん!!】
ー【これが呪い効果】
ー【まてまてまてまて】
ー【なんでお湯につけたら元通りになるの?お湯につけてフレームが元に戻るタイプは知ってるよ?形状記憶のやつ。でもレンズが元通りは違うよね?なんで割れたレンズまでお湯につけたらだけで戻るの?】
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何の前触れも前兆もなく突然メガネが割れたり。
本当になんで?
まあ私のメガネはフレームが歪もうが、レンズが割れようが、お湯につけちゃえば元通りになる優れものだからいいんだけど。
「誰だここにバナナの皮捨てたやつ!!」
ー【バナナの皮で漫画みたいなスケートって本当にできるんだ】
ー【逆にすごくね?さかのん】
ー【あ、木にぶつかった】
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バナナの皮を踏んで滑って、最終的には木に直撃したり。
「お願いだから追いかけてこないでー!ミツバチは殺せないのー!」
ー【ミツバチ以外なら殺せるんだ…】
ー【まあ確かに蜜蜂はハチミツ作ってくれるしな】
ー【ミツバチが居なくなったら森が消えるって言われてるくらいだから、さかのんの対応は正しいと思う】
ー【がんばれーさかのんー!】
:
木に直撃したせいで、巣に危害を加える敵だと認識されたのか蜂の大群に追いかけられたり。
ミツバチの受粉で多くの野菜や果物が育っている手前、ミツバチを攻撃することはノアもアイも出来ず。そうなると私は逃げ続けるしかなく。
「ゴポゴポポ…!?(なんで急に川が現れるの!?)」
ー【ノアちゃーん!!】
ー【アイちゃーん!!】
ー【ヘルプユー!!】
ー【さかのん死んじゃう!!】
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突然川が現れて溺れかけたり。
そのおかげで蜂から逃げられたけど、どちらにせよ死にそうな目に。
「いったぁ!!足の小指ぶつけた!!」
ー【痛いやつだ】
ー【家の中で裸足ならまだしも外でって稀すぎるだろ】
ー【今のぶつかり方は小指どころか足全体じゃね?】
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何故か外で足の小指をぶつけたり。
「ピアス片耳落としたんだけど!?」
ー【さっきまで酷すぎてマシに思えてくる不思議】
ー【せっかくオシャレしたのにね】
ー【外れやすいイヤリングじゃなくてピアス落とすって相当だよ】
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ピアスを片耳だけ落としたり。などと散々な目に。
でも、転んだり落とし穴に落ちたり川で溺れたり鳥に攫われたり肉食のモンスターに首根っこ掴まれて引きずられたりと色々不運な目に遭うものの、命に関わる怪我は負ってない。
「…ねえこれってさ、めっちゃ不幸な目には合うけど死なないってことじゃね?」
実際死にかけるような目にはあってるけど死んでないし。ワンチャンあるのでは?
気になったら試さなきゃ気が済まないのが動画配信者の性なので、早速崖へ。
「それじゃあ紐なしバンジーしてみます!」
高い崖から飛び降りる。
崖に自然に生えたであろう木々にぶつかって頭に枝が刺さったりして鹿の獣人みたいになりながら、なんと五体満足で無事に地上に到着。
その後も、毒持ちの紫スライムを食べてみたり、海に飛び込んでみたりしたものの生きてる!
「検証結果!これは本物の呪いのアイテム」
ー【それはもう初期の段階でわかってたんよ…】
ー【さかのんが紐なしバンジーという名の飛び降りしだした時はこのチャンネルも終わりかと思った】
ー【紐なしバンジーしたのに骨折もしてないさかのん本当に何?】
ー【どれだけ不幸な目にあってもいいから死にたくない人にはいいかもね】
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「みんなも呪いのアイテムには気をつけてね!今日の配信はここまで」
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