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04:『マーメイドに泳ぎ方聞いてみた』


メンバー

・さかのん:本作の主人公、異世界に来てユーチューバーを始めた唯の人間。

・ノア:(今回おやすみ)獣人。

・アイ:(今回おやすみ)人工知能、だいたいネットの中にいる。


以上のことが頭に入っていたら大丈夫です。



「今日はねー、マーメイドに泳ぎ方を聞いてみた!」


ということで、今日は異世界の海に来ております!

白く照り輝く砂浜、海の底までくっきり見えるほどの透明度の高い澄んだ青い海、空は雲ひとつない晴天。まさに夏って感じ!異世界だと地域ごとに四季が別れてるから、あんまり季節感関係ないけど。


ー【カナヅチなのに…?】

ー【こっち5月で今日の気温19℃だから、異世界だから関係ないのかもだけど寒そうに見える】

ー【さかのん今日泳ぐんだよね?メガネ外さないの?】

ー【あんなに綺麗に溺れる人アニメ以外で初めてみたんだけど、大丈夫?死なない?この配信が事件映像になってお蔵入りはご勘弁】

ー【海に入る時でさえメガネ外さないなんて、さかのんお前メガネキャラ意識高いな!】

ー【寒そー】

ー【頭から溺れる人そうそういないだろ】

ー【マーメイドが匙投げる未来しか見えないw】


チャットに気温に関するコメントがあるけど、こっちは真夏なので無問題。

それから海に入るのにメガネ外さなくていいのかって?

いいんです!何故なら異世界マジックのお陰で、身につけたものが流される心配はないし、例え波に流されても勝手に私の元に戻ってくるのだ。だから無くし物の心配なーし。

それより心配すべきは、私が自他ともに認めるカナヅチであること。

それも筋金入りすら生温いほどのカナヅチ。筋金の上って何だろ?鉄骨?鉄筋コンクリート?

ともかく、それくらい酷い。お風呂は大丈夫なのに、海やプールになった途端一瞬で溺れてしまう。気づいた時には体の穴という穴から水が体内に入ってきて溺死しかけてる。ホントなんでだろうね?人体の不思議だ。呪われてんのかな?

それはそうと。


「みんな勘違いしてない?私は“マーメイドに泳ぎ方を聞いてみた”だけで、泳げるようになるなんて一言も言ってないからね?」


高望みしていいなら、私も泳げるようになりたいけども。海もプールも大好きだし。私の一方通行の片思いだけど。

でも、さかのんは救いようがないほどのバカじゃないのでちゃんと分かってる。

いくら泳ぎを熟知してるマーメイドに教えを乞うたって多分無理だって。

なので、この配信は完全にネタ!

この配信があんまりにも酷かったら、ちょっと離れたところで波に揺られて楽しそうに2人で遊んでるノアとアイの動画を上げる予定だし。

タブレットのアイを心配する気持ちも分かるけど、うちのタブレットは強いから大丈夫。過去に防水対策一切せずに異世界の海に落としたりお風呂で落としたり洗濯機の中に入れたまま洗濯してもノーダメだったから。


「私に泳ぎ方を教えてくれるマーメイドの、モーガンことモモさんだよー」

「今すぐにでも帰りたいモモですわ〜」


ー【目が死んどるw】

ー【かわいそうに、すごい美人なのに】

ー【モモさんカワイソw】

ー【こんな分かりやすく絶望してる人初めて見た笑】


海から上半身だけ体を出してるモモさんは、視聴者たちが言うように金髪で青いヒレを持った美人さん。お伽噺とかに出てくるマーメイド!!って感じ。

なのにエメラルドみたいに綺麗な目は私のせいで濁ってて、目が死んでいるという表現が良く似合う。

うーん、申し訳ない。私の泳ぎが壊滅なばっかりに。もはや壊滅という言葉さえ不釣り合いかな?とにかく、ごめんなさい。

あっ!モモさんこんな感じだけど、私ちゃんと許可とったからね!?配信に関する説明もしっかりして、物的証拠になるように書類も作って署名してもらったし。無理強いダメ絶対!!


「マーメイドであるわたくしに泳ぎ方を聞いても仕方ないと思いますの、貴方は人間ですし」

「それはそう!」

「ハア…。そもそも、わたくしが知っているのは人魚の泳ぎ方だけですわ。それでも良ければお教えしますけども」

「お願いしまーす」


モモさんが教師、私が問題児としてきっちり1時間。マーメイドの泳ぎ方について詳細に教えてもらった。

どういったペースで泳ぎ続けるのがいいのか、体幹の重要性。美しい歌声の出し方、水の流れの見方、髪の手入れ方法、水中での呼吸方法、正しい尾鰭の動かし方などなど。

所々泳ぐのに関係ないこととか後半に関しては人間の私には不必要な気がしなくもないけど。まあ知識は無駄にならないからね!

教えてもらうと出来そうな気がしてくるの不思議!モモさんの泳ぎを見たあとだと尚更。


「それじゃあ教えたことを元に泳いでみましょう。まずは水に慣れるところからですわ」

「手掴んでてね!?足だけでも私溺れるから!!」


モモさんに手を掴んでもらいながら、足から慎重に海に入っていく。

爪先から足首までは問題なく浸かれたから、そのまま腰までいけたら良かったんだけど…。


「どうして掴んでいるのが手から足に変わるんですの!?わたくし離した覚えないのですけど!?そして溺れないでくださいまし!?」

「ゴポポ…」


腰まで海水に浸かる前に、無事溺れました!

モモさんに手を掴んでもらってたはずなのにいつの間にか足首を掴まれてて、頭が水に突っ込んでたのは自分のこととはいえ謎。本当に何があった?

モモさんに助けてもらいながら、無事に海の外へ。

あ”ー”!空気が美味しい!そして口の中しょっぱい!

口内の塩辛さを無くそうとペッペッと唾を吐いて口から海水を出す。行儀が悪いけど許してほしい。最悪命に関わることだし。


ー【私いつ目逸らしたっけ?】

ー【俺ずっと見てたはずなのに何でさかのんが溺れたのか分かんない…】

ー【気づいたらさかのん足だけになってた…】

ー【何でそんなに泳ぐの下手くそなの…?】

ー【飛行機が墜落したら真っ先に●ぬくね?】


一部始終を見てたはずのモモさんや視聴者が分かんないなら私が分かるわけないよね!

こういう時、当事者が1番訳わかんないし。

その後、それでもモモさんは根気強く私に付き合ってくれた。わざわざ魔法薬を使って人間の姿になってくれてまで泳ぎ方の指導をしてくれて。

けれども彼女の努力も虚しく私は溺れ続け。

なんか気づいたら毎回頭が海の中にあるんだよね。不思議。そして海水に目をやられて口を開けちゃって溺れるという。

溺れ過ぎて酸欠になって三途の川を渡りかけることになるとは思わなかった。しかも三途の川でも溺れたのウケる。お陰で戻ってこれたけど。

そうして、時間が経つこと数時間。

泳げるようになった。

私じゃなくて、人間姿のモモさんが。

魔法薬で人間の姿になったことはあれど、今まで1度も人間の状態で泳いだことがなかったモモさんが泳げるようになったってすごいよね。事故で歩けなくなった人が努力でまた歩けるようになったレベルの感動ものだよ。映画作れちゃうね。

私?私は泳げる気配は一向に来ないよ?何なら遠ざかっていってるような気さえする。不思議だね?


「もうわたくし無理ですわ…。自信を無くしてしまいましたの…」


ー【モモさん頑張ったよ…】

ー【俺なら1回目で諦めてるね】

ー【ここまで泳げないと人魚になったらどうなるのか気になるw】

ー【さかのん実は某海賊王の実でも食べた?】

ー【ただただモモさんかわいそう】

ー【この数時間で人間の姿で歩けるようにも泳げるようにもなったモモさんすごいよ…】


うーん、申し訳ない。

モモさんは泳ぎが得意で、ここら辺で不定期に開催されるマーメイドの水泳大会ではいつも上位の方なのに。努力のマーメイドだから教えるのもめっちゃ上手くて、今まで大勢に水泳指導してる凄腕なのに。

そんなモモさんの自信を削ぐレベルの水泳音痴って、私普通にヤバいな。知ってたけど。お詫びしないと。


「結論、私に泳ぎは無理!今日指導してくれたのにごめんね、モモさん」

「いいんですのよ…」

「それじゃあ今日はここまで!」





.





後日、某ツヴィッターにて。

『モモさんのレクチャー通りにしたら泳げるようになりました!』

『泳ぐの苦手だったんですけど、モモさんのお陰でマシになりました。本当にありがとうございます』

『モモさんのお陰で海の利用者が増えて店が大反響してます』

『モモさんの動画観てから、子供がお風呂を嫌がらなくなった』


ー@sakanon_noa.ai なんで実際に教えてもらった私が泳げなくて、配信観たみんなが泳げるようになってるの!?


.

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