29.『異世界で日本の植物の種を植えたらどうなるのか』
メンバー
・さかのん:本作の主人公、異世界に来てユーチューバーを始めた唯の人間。
・ノア:獣人。元気。
・アイ:人工知能、だいたいネットの中にいる。敬語。
・メル:メリーさん。途切れ途切れの話し方。
以上のことが頭に入っていたら大丈夫です。
「今日はねー、異世界で日本の植物の種を植えてみるよ!」
ー【それ既にしてね?】
ー【さかのんってキャンピングカーの中で家庭菜園してなかったっけ?】
ー【種まだ持ってたの!?】
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コメント欄でも言われてるように家庭菜園してるけど、でもそれってキャンピングカーの中でのことだから今日の配信とはちょっと違う。
だって家庭菜園の土ってネットショッピングで買った日本のやつだし。
日本の土で日本のトマトの種を育てるなんて、日本人なら小学生の時に1度は体験してることなんじゃないかな。異世界でしてるのは私だけかもしれないけど。
なので今回は、異世界の土に日本のトマトの種を植えたらどうなるのか。検証してみた!
といっても、日本のトマトの種は異世界から見れば外来種と呼べる存在なわけで。
異世界の土に植えて、トマトの種が脅威の繁殖力を持って異世界の生態を壊したりしたら嫌なので、そこら辺はしっかりとアイ協力のもと調査した。
アイのお墨付きで問題がないことをしっかりと確認をとった上ですることをしっかりと明言してから、行動を開始する。
まず異世界の土をスコップで掘る。
今使ってるスコップも、日々の家庭菜園で使ってレベルアップしたもの。現在の称号は《何処でも掘れるスコップ》だから、掘るのは簡単。ヨーグルトをかき混ぜるみたいな感覚で土が掘れる。
ちょうどいい深さまで掘れたところで種を入れて土を被せ、その上から水をかける。
「この配信から育てるのがスタートするから育つの…わぁお」
今から種を育てるのが始まるから、育つのに1ヶ月以上はかかる。と言おうとしている最中にまさかの種は急激に成長。
突然芽が出たと思ったら間引いてもいないのにトマトの葉がどんどんと育っていって、茎は支柱もなしに私の身長を軽々と飛び越え、空を飛んでいるドラゴンの高さも飛び越えて、それでも尚止まることなく空へと伸びていった。
この間10分も経ってない。
「まさかジャックと豆の木みたいなことが起こるなんて…」
ー【ジャックと豆の木って確か一晩で成長してたからそれ以上だよ】
ー【再生速度を2倍速にしたみたいに育つの早かった】
ー【植物育てるのがこんな一瞬なら苦労しねえよ】
ー【どーせさかのんのことだからこの植物登るとか言い出すんだろ】
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「さっすが!よく分かってるね。今からこのデッケェトマトの茎を登ってるみるよ!」
茎と言う割に見た目はもはや大樹だけど。
触った感じ大分しっかりしてるし、アイに確認してもらったけど登っても問題なさそう。
どうせキャンピングカーで登るなら途中で何かあって落下するような事が起こっても無事だし。風船で空から落ちた時も、キャンピングカー自体も中にいた私たちも無傷だったし。自力で登るなんて無理なんでね!
「だ、大丈夫…なの…?」
「だいじょーぶ!この車すごいんだから!」
『このキャンピングカーの中にいる限り、外部から攻撃は受けることはありませんから安心してくださいね〜』
キャンピングカーの凄さをまだよく分かってないメルは不安そうだけど、ノアがメンタルケアしてるから問題ないでしょ。
メルの様子を気にしながら、すいすいとキャンピングカーで茎を登っていく。
垂直だろうと何の障害もなく登れるこの車最高。重力どこいったって話だけど。
途中、車よりも大きなトマトの実がいくつもなっていたので、1つだけ収穫。
ツヤとハリがあって、真っ赤に色づいていて美味しそう。
勝手に収穫していいのかって話だけど、私が植えた種だしいいっしょ。
収穫したトマトは後でケチャップとかにしようと思ったんだけど、味が気になったので少量を使ってトマトジュースに。
「おいしい…」
「あまーい!!」
『本当にトマトだけしか使っていないのにこんなに美味しいなんてすごいですね〜』
「塩も砂糖も入れないでこの味はすごい!」
収穫したトマトをミキサーにかけただけの本当にシンプルなものだったんだけど、トマトの味が濃くて甘くて、でも後味はさっぱりとした飲みやすいトマトジュースだった。
すごくない?何の手入れもしてない一瞬で育ったトマトなのに。
というか、私が植えたのはミニトマトの種なのにこんなに成長するなんてすごいな。大きなトマトを植えてたらどうなってたのか。
そこからまたキャンピングカーに戻って、更に頂上を目指したんだけど…。
残念ながら頂上には何も無かった。あったのは乗れる雲くらい。
ジャックと豆の木みたいに誰かが雲の上で暮らしてたら動画映えしたんだけど。
でも景色はめっちゃよかった。
遠くに見える海と空が溶け合って光を反射して、宝石みたいに輝いていて。空を飛ぶモンスターたちも相まって、素敵な景色に。
「検証結果!異世界で日本の植物の種を植えたら、ジャックと豆の木のようになったよ」
ー【雲の上に何かあれば面白かったのに】
ー【まあこういう事もある】
ー【巨人vsさかのんも面白そうではあるけど】
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「それじゃあ今日はここまで!」
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後日、某Twi●terにて。
『巨大トマトはそのまま残すことになったよ』
『近くの町が観光名所にしたいらしくて』
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