表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/31

28.『死神に会ってみた!』

メンバー

・さかのん:本作の主人公、異世界に来てユーチューバーを始めた唯の人間。

・ノア:獣人。元気。

・アイ:人工知能、だいたいネットの中にいる。敬語。

・メル:メリーさん。途切れ途切れの話し方。


以上のことが頭に入っていたら大丈夫です。



「今日はねー、有名な死神のお店に行ってみるよ!」


ー【有名な死神とかそれもう末期の世界では…?】

ー【さかのんの動画だと平和な感じしてるけど、実は戦時中だったりする?】

ー【終焉を迎えようとでもしてるの?】

ー【終末の世界?】

ー【そもそも死神がなんの店やるんだよ】


コメント欄で色々言われてるけど、別に異世界平和だよ?

偶に森や海でモンスターに襲われたりするけど、結界が張られてる街の中は比較的安全だし。モンスターという話の通じない脅威が身近にいるから人同士で争ってる場合じゃないということで大きな戦争も最近はないし。


「でも確かに死神のお店ってどんなお店かな?何が売ってるんだろう?」

「魂を売ってたりするのかな!?」

『ノアは偶に無邪気にとんでもないこと言いますね〜。それと、ワクワクしないでください〜』

「魂…売買…異世界…こわい…」

「大丈夫大丈夫、ほんと心配ないからね、メル」


アイの言う通り、ノアって偶にぶっ飛んだこと言うんだよね。シャドーウルフだからなのかな?

そんなノアの言葉にメルがビビり出しちゃった。ただでさえ彼女の白い顔色が分かりやすく真っ青に。

メルって元は怪談のメリーさんのはずなのに、どうしてこんなに恐怖耐性がないのか。異世界の広さにも怯えてたし。メルはどちらかといえば脅かす側なのに。

よーよしよし。彼女の頭を優しく撫でてあげれば、強ばっていた表情が緩まった。

怖がらせた張本人のノアはメルをぎゅっと抱きしめてメンタルケアを。


いくら死神が経営する店だからって魂を売ってたりは流石にしないでしょ。

もし本当に魂の売買とかしてたら、知り合いが私に勧めたりなんてしないだろうし。


メルが無理そうなら別の配信に切り替えようと思っていたんだけど、彼女も少なからず興味はあるようなのでその死神のお店に行くことにした。


大きな街の店がずらりと並ぶ大通りの路地裏に、ひっそりと佇んでいた死神のお店。

一見さんお断りと言わんばかりに雰囲気のある見た目の店。

入口の扉を開けようと取手に触ろうとする前に、扉は独りでに開いた。

扉の先には1人の老婆が。


「いらっしゃい、よく来たねぇ」


ー【大きな鎌持ってない!】

ー【ガイコツみたいな顔してない!】

ー【黒いローブ羽織ってない!】

ー【この人ほんとに死神…?】


この店は1人の年老いた死神が切り盛りしてるって言ってたから、この人が死神なんだろうけど…。

目の前の人を見て思う。

魔女の知り合いより魔女っぽい。

顔の中央にある大きな鉤鼻が特徴的で、大きな帽子を被った姿に加えてゆったりとした喋り方も相まって、まさに作品に登場する老婆の魔女みたい。

死神の見た目に先入観があるからなのか、目の前の女性が死神と言われても首を傾げてしまう。


「撮影の許可をくださってありがとうございます。勉強不足で申し訳ないのですが、ここはどう言ったお店なんですか?」

「ふふ、そんなに畏まらないでおくれ。ここは人生を見透す店さ」


席に案内されたので座って出されたお茶やお菓子を食べながら老婆の話を聞く。

店主である死神の老婆ことミニッタさんは、元々死神としてバリバリに働いていたんだとか。けど、年齢を重ねる毎に魂の回収がしんどくなってきて、今は定年退職してこの店を切り盛りしてるんだそうだ。

今結構色々驚いてる。

まず、死神が不老不死じゃないこともビックリだし、死神にも定年退職って考えがあるんだね!?そもそも異世界に定年退職って考えがあることも驚きだけど。

しかも、個人的に死神ってあんまり人とか生物と関わっちゃダメなんだろうなって思ってたけど全然そんなこと無かったし。

というか、誰!?【さかのん敬語使えるんだ】とかコメントした人!敬語くらい当たり前に使えますけど!?高校生だし!バイトしてたし!成人迎えてる女が敬語使えないのは逆に怖くない!?

全くもう、失礼しちゃうなあ。


「それで、どうやって人生を見通すんですか?」

「手を出してご覧」


ミニッタさんに言われた通りに手を出せば、彼女は私の手を掴んで注視した。


「なるほどねぇ、アンタは生命力に長けてるね」


ー【異世界の死神って占い師みたいな感じなんだ…】

ー【これはただの手相占いでは?】

ー【魔女の見た目した死神が手相占いしてるってだいぶ情報が渋滞してるんだけど】


まさかの手相占い!

人生初のお金を払っての占いを異世界ですることになるとは。

ミニッタさん曰く、手相じゃなくて魂の流れを見てるらしいけど。

魂は心臓を軸に血液のように体内を循環しているようで、手は魂の流れが顕著に現れているから人生を見通すのに丁度いいんだとか。


それで色々とアドバイスをしてもらった。

まあ私は生命力がゴキブリ並らしいので大体は何もしなくても何とかなるらしいけど。

華の女子高生の生命力が台所を中心に家中をカサカサしてるあいつらと一緒なの悲しすぎる。泣きたい。


「ふふ、異世界の子の人生を視ることになるなんてねぇ。長生きはしてみるもんだ」

「やっぱり異世界の人間って少ないですか?」

「いや?現役時代に何人か魂を回収したことはあるからねえ」

「意外と居るんだ…」

「帰り方は見つかるよ。諦めないことが重要さ」

「はい!地道に頑張りますね」


死神に帰れるって言われると説得力すごい。

私が長くなっちゃったけど、それからノアやメル、アイもしてもらった。


「それじゃあ、今日の配信はここまで!」


.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ