表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

01:『スライム食べてみた!』



「皆さんこんばんわ!異世界配信の時間だよ。現役JKさかのんです」

「ノアだよー!」

『撮影係のアイですよ〜』


ー【こんばんは〜】

ー【きた!こんばんわ!】

ー【こんばんは】

ー【相変わらずノアたんかわええ】

ー【こんばんわ】

ー【異世界の景色、自然豊かでいいわー。目の保養】

ー【かわいい】

ー【アイきれー】


「今日はねー、ノアと一緒にスライムを食べてみるよ!」


ー【なんて?】

ー【食べるものに困ってる訳でもないくせに何でスライム…?】

ー【異世界らしいとはいえ、もっと他にもあったろ】

ー【スライム食べるとか流石さかのん、イカれてる】

ー【さすが再生回数に魂売った女】

ー【本人ザコとはいえ、レベル上位で心強過ぎる味方のノアやアイがいるのに最弱のモンスターに挑むなよ】

ー【スライムって経験値稼ぎの存在で食べるって発想なかったし、思いついて直ぐに実行するの流石過ぎる】

ー【せんせー!スライムいじめは良くないと思いまーす!】

ー【弱々のさかのんでもスライムは倒せるんだから、スライムじゃなくてもいいでしょうに】

ー【これが動画投稿者の末路か】


いつものように異世界で配信をしながらチャット欄を覗けば、【こんばんわ】と挨拶の返事の後には【ノアちゃんかわいい】【アイ美人さん】といったものから、私ことさかのんを罵倒するコメントなどが続々と物凄い速さで流れていく。

みんな相変わらず酷い!

そりゃ、獣人のノアと、ブイチューバーみたいな見た目で人工知能のアイにメロメロになるのはわかるけども!本物のケモ耳、ふさふさ尻尾で活発な幼女の見た目をしたノアが可愛いのは勿論だけど!近所の綺麗なお姉さんみたいな姿をしてて、ネットの世界で生きてる人工知能のアイは素敵だけど!

…こうして言葉にして考えると、私に勝ち目ないな!?

いや勝てるとか思ったことないけど。

獣人と人工知能とただの人間なら、ただの人間で女子高生メガネキャラの私は圧倒的に存在が薄いし。メガネキャラの扱いは大体どの作品でも雑だったり不憫だったりするし。

まあ今更だし、罵倒されて傷つくような可愛子ちゃんメンタルしてないから良いんだけども。そんなメンタルで異世界は生きてけないし。

それはそうと、【再生回数に魂売った女】ってコメントしてくれた人、私の事よく分かってるね!古参さんかな?

そうです、私は再生回数や登録者数に取り憑かれた女!

今日のスライムを食べる配信も数を稼ぐため。普通にスライムの味が気になるのも事実だけど。

今までの配信や動画の再生回数、それに登録者数の多さで言えばこれ以上要らなくね?って思われるかもしれないけど、人間欲深いからね。お金はどれだけあっても欲しいし大事なのと一緒一緒。

お金も登録者も再生回数も多くても困らないからね、大事なのだ。大切なことなので2回言いました。


「それじゃあ先ずはスライムを倒すところからだね」


ゲームみたく、「スライムが あらわれた!」って突然登場する感じじゃなくて、草原を歩いていれば普通に遭遇できる。

そもそも昼間の草原は見晴らしがよくて、緑色の中から水色って目立つからすぐ見つけられるし。

なんて考えていたら、お目当てのスライムと遭遇したのでスッと懐から包丁を取り出す。

この包丁は私が異世界に召喚された時に持ってきた?ついてきた?もの。

不思議なことに私と一緒に異世界に来てしまった私の私物たちはめっっっちゃ強い。私はコメント欄でも笑われてるようにザコなのに。

ものに対して強いと言うのは日本語的におかしい気もしなくは無いけど、私の語彙力ではそう言うしかない。だって本当に強いし。

異世界に来て直ぐの頃、包丁をモンスターに投擲したら相手が即死だった時の私の恐怖よ。

それはそれとして自分の投擲能力の高さには惚れ惚れした。

異世界に来て直ぐ、つまり初期の頃からその強さで、料理の時やモンスター退治の時に使っていくうちにレベルが上がり、始めは《切れ味のいい包丁》だった称号が今では《ほぼ全てのものを切れる包丁》に。ここで《何でも切れる包丁》にしないところ嫌いじゃない。

それにしても。


「ほんと何でモンスター倒しても私にレベル入らないかなー」


包丁を振りかざしてスライムを倒していく。

ゲームとかならモンスターを倒せばキャラに経験値が入るんだろうけど、私の場合は何故か包丁に経験値が入る。ホントどうして?これ以上包丁をレベルアップしてもしょうがなくない?今でさえストレスフリーの切れ味がいい包丁なのに。

スライムは弱いモンスターとはいえ、スパスパ切れちゃう。


ー【モンスター倒してるのさかのんじゃなくて武器だしな】

ー【包丁研ぎしないでいい包丁羨まし過ぎる、あったら絶対言い値で買う】

ー【そりゃ武器に経験値入るわ】

ー【今まで数多く使ってきて刃こぼれ1つ起きてない包丁パイセンチッス】

ー【俺が異世界行く時は絶対包丁持ってくわ】


倒したスライムは瓶に詰める。

よく見るタイプの水色のスライムの他に、緑色や桃色などの色違いのスライムも異世界には生息してるので色違いも倒して瓶詰めしていく。味の違いが気になるし。

スライムを見つけて。倒す。見つけて。倒す。

そんな感じで何体かスライムを倒して、瓶も数種類に増えた。

味のバリエーションも出来たし、まあまあ時間が経ったから早速実食に移ってもいいんだけど。

見た目的に常温より冷やした方が美味しそうだから、一旦キャンピングカーに戻って冷蔵庫へ。


「普通の料理番組だったら、冷蔵庫で冷やす待ち時間を無くすために予め冷やしておいたものを出すんだろうけど。うちの冷蔵庫ちゃんは優秀なので直ぐに冷えます」


だから此方が出来上がったものです、とか言って何処からか出来上がった物をスッと出すとかは無い。


ー【すご、冷蔵庫入れてから10秒もかかってない】

ー【早っ!】

ー【瓶を冷蔵庫に入れて閉めて、直ぐに開けて出しただけなのに冷えてるのが見てわかるの凄すぎだし、羨まし過ぎる。絶対冷凍庫も一瞬で氷作るタイプじゃん。買いたい】

ー【こりゃドヤるわ】

ー【さかのん何もしてなくね?】


「それじゃあ、ゲームでよく見る水色スライムから食べてみまーす」


スライムだった時より色素が抜けて薄い水色に。透明感があってぷるぷるしてて、スプーンで掬ってみた感じはゼリーっぽい。

容器が瓶なのもあって、高級スイーツみたい。中身はスライムだけど。

特に気にすることなく一口ぱくり。ノアもぱくり。


「おぉ!ソーダ味のゼリーだ。ゼラチンゼリーってより寒天ゼリーに近いかな。普通のゼリーと比べて少し噛みごたえがあるというか。グミよりのゼリー?」

「ちょっとシュワシュワしてる〜」

「…んん?考えてみたら、水色スライムって確か主食水だったはずなんだけど、何でソーダ味?」


ミネラルウォーター味とか、海水とかの味なら分かるんだけど。

ソーダ味ってぶっちゃけ炭酸水に砂糖ぶち込んで着色しただけだよね?このスライムは恐らくだけど水しか飲んでないのに、どこで砂糖を調達したんだ?そもそもなんで炭酸まで再現されてるの?っていうか炭酸ってどうやって作られるの?

謎が謎を呼ぶって多分こういうこと。疑問が解消されない。


ー【それ多分突っ込んじゃいけんやつや】

ー【実際に神がいることが証明されてる異世界でそういうのを考えるの危険だと思うな】

ー【異世界の心理には触れないほうがいい、●ぬぞ】


「はーい、賢いさかのんはヤバそうなことには触れません。忘れます。さ、次行ってみよう!お次は緑スライム。…おぉ、抹茶だ!甘苦くてうまあ」

「ちょっと苦い…。でも美味しい!」


主食が草の緑スライムだと味は抹茶になるのか。

甘さと苦さのバランスが絶妙でうまい。個人的に抹茶感が強くなり過ぎるとお茶っ葉としか思えないから、コンビニの抹茶アイスくらいの甘苦さは嬉しい。こっちはゼリーってよりムースっぽい食感で、抹茶プリンみたい。

色以外見た目は同じなのに食感が違うって不思議。主食が違うから当然なのかな?でもやっぱり不思議というか謎。

それにしても異世界にあるもので日本の味を感じられるなんて感動。別にホームシックとは無縁だけど。

ノアはもうちょっと甘い方が好みみたいだから、チョコソースをかけてあげたら美味しそうに完食。


「お次は桃色スライム!…蜂蜜だ、花の香りもしてオシャレな感じ」

「これ好き〜」


主食が花の桃色スライムは蜂蜜か、これは納得。

なんで色が蜂蜜と同じ黄金色じゃなくて桃色なのかは謎いけど。まあ桃色って花っぽいっちゃ花っぽい色だしね。

人工的に作られた砂糖をぶち込んで煮詰めた偽物の蜂蜜みたいな甘ったるい感じじゃなくて、自然な甘さって感じで食べやすい。後味がスッキリなのも嬉しいポイント。

ノアもお気に召したようだ。


「お次は黄色スライム!…すっっっぺ!レモンだ!」

「ん"ん"ん"!!」


主食が光合成の黄色スライムはまさかのレモン味。

酢の物とかの酸っぱい料理も好きとはいえ、流石にほぼ原液レベルのレモン味を美味しいと思える舌はしてない。と言うかこれ原液?濃縮だったりしない?舌が食べ物としてじゃなくて、刺激物としてしか認識してくれなくて美味しさを感じられない。

今の私たち、アニメのキャラだったら漫画とかでよく見る顔になると思う。酸っぱいものとか食べて顔がめり込んだみたいになってるやつ。

う”〜、酸っぱい。

ノアは私以上に酸っぱいのがダメだから、顔のパーツが中央にぎゅっと集まってて眉間と口下のシワがすごい。

舌が刺激物と認識しててもお残しは出来ないから、残りは蜂蜜をかけて食べた。

やっぱ蜂蜜とレモンの相性は最高。蜂蜜レモンは美味い。


「ラストは紫スライムいってみまーす」


ー【ばかばかばか】

ー【そこまで体張るなよ、こっちの世界の動画投稿者の立場が無くなる】

ー【紫ってどう考えても毒だろ!!】

ー【紫スライムの主食って毒ですよね?絶対やめてください!!】

ー【水色、ピンク、黄、緑、紫。他の色のスライムはないの?】

ー【ノアちゃーん!アイちゃーん!お宅のご主人様止めてー!!】

ー【お宅のご主人死に急ぎすぎー!!】

ー【進んで毒食べようとするところさすがさかのん過ぎる】

ー【さすがさかのん、略してさすのん】


コメント欄のみんなにもノアにも止められちゃった。残念。


「みんなも異世界来たらスライム食べてみて!私のおすすめは水色スライムかな」

「ノアは桃色スライム!」

「じゃあ今日の配信はここまで!見てくれてありがとうございました、みんなおやすみー」


.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ