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人間不信

 誰も知った人間が身近にいないという環境下でスタートした中学校生活。この時点で私が心に決めていたのは、

「誰も信用しない」

 ということであった。小学校の時のいじめでも、5年生の時は、増井のタックルなどの嫌がらせなどはあったが、女子との関係は良好であった。6年生に進級したときでも、クラス替えがなかったため、

「皆とうまくやっていける」

 という思いを抱いていたが、信用していたクラスメイトに、いじめという形で裏切られ、人生を滅茶苦茶にされて、誰も信用することが出来なくなっていたのである。私が大阪出身で、時折混じる大阪弁を面白がって、私の身の周りでは、クラスの男子を中心に何人か仲良くなった者もいたが、心の奥底では

「こいつもいつ裏切るかわからない」

 という疑いの目で接していた。

「あまり深くかかわることは避けよう」

 常にその思いが私の中にはあった。


 そうこうしているうちに、同窓会の返事などを迫る期限が近づいてきた。私は参加する意思もなかったし、参加できる状態でもなかったので、返信用にはがきに

「俺はお前らを恨んでる。どうせ参加したって誰も喜ばんのやから、参加する意思はない」

 という文言を添えて返信した。どうせ行ったって、辛く苦しい思いだけが頭の中によみがえってくるだけである。私がどれだけ、恨みや憎しみを抱えながら大阪から離れていったかを、思い知ってほしかった。この当時の私の頭の中には

「どうやって仕返しをしてやろう」

「どうやって恨みを晴らしてやろう」

 そういう思いが強く、復讐することばかり考えていた。そして私が参加しないという知らせは、元6年4組の皆にも知らされたようで、後日、星田が電話してきた。

「やっぱりお前は来んのか」

「俺が参加したって、ほとんどの奴らは喜ばんやろうし、今更仲間って言われても、あいつのことを仲間とは思わへん」

「まぁそうやろうなぁ…。あれだけのことをされてきたんやからなぁ…。」

 そして話はお互いの近況となった。

「まだ中学校生活になれてなくて、覚えることもたくさんあって大変」

「こっちもや。山口に引越しして、誰も知ってる奴がおらん上に、学校も今までとは全然違うからなぁ…」

「まぁお互いに、しんどいこともあると思うけど、頑張ろうや」

 そう言って電話を切った。半月ぶりに聞く星田の声。大阪の友人や親せきなどと話すときは、やはり懐かしい大阪弁が口に出てくる。星田の声はどことなく、懐かしさを連れてきたような気がした。星田の話では、私が参加しないことを伝えたことで、いじめ加害者の、責任論が巻き起こったらしい。私をかばってくれていた星田や今田、永井達が

「リンダが来られんのは、お前らのせいや」

 と厳しく詰め寄ったらしいのである。星田たちは私の気持ちが変わって、一度は参加を固辞したけど、参加の意思表明をするのではないかと、思っていたらしい。それが返信はがきに

「お前らを恨んでいる」

 とはっきり書かれたうえで、参加を拒否すると書かれてあったものであるから、どう責任を取るのか、これから先、ずっと同窓会に、私が参加しなかったら、それは渡部や増井・浜山や久保と言った、いじめ加害者の責任だと、詰め寄ったものだから、いじめ加害行為をやった側は涙を流して

「申し訳なかったと思っている」

 と話したようである。しかし、直接それでも、私や家族に対する謝罪はなかった。恐らく、加害者側は、私や、私の家族、或いは親戚から、厳しく責任を問われ、ぼろくそに言われるのを恐れたか、はなから謝る気も、つもりもなかったかの、どちらかだろうと思う。所詮、涙を流して謝ったって言っても、それだけの人間なんだろうと思った私である。

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