再び手伝い拒否
マラソン大会が終わって、次に大きなイベントと言えば金剛山への耐寒登山。前日、班長である隅田がインフルエンザにかかってしまっていて、この日はとても登山に参加できる状態ではなく、私たちの班は6年生が私と渡部のみという、実に最悪な状態になってしまった。まずは学校について、参加する班のメンバーの点呼を取って先生に報告。一応私が班長代理という形になった。しかし私は飯盒炊飯のところでも述べたように、班活動にかかわることは一切協力しないと決めていたため、点呼を取った後は一切班長としての活動はしなかった。何しろ、私が班長として下級生に話しかけると、下級生の口が腐ると言われていたためである。だったら下級生の口が腐ったら困るので、私は一切話しかけられても答えないし、班の皆の面倒も見ないようにした。なので渡部が
「ちょっとリンダさぁ、少しは班の皆の面倒を見たらどうなん。全部押し付けんといて」
と言っていた。私が
「はぁ?下級生たちに話をしたり、面倒を見たりしたら腐るんちゃうんか?腐ったら困るやろ?せやから俺は一切手伝わんことにしてるんやけど、まだ何か不満か?」
というと
「せやからって、なんで何も手伝わんの?こっちはめっちゃ大変なんやけど」
「そんなん俺の知ったことか。勝手に困ってれば?自分が言ったことが原因なんやから、全部自分で責任取れば?」
そう言い放つと私は再び渡部が何を言ってきても無視を貫いた。下級生たちは私と渡部の根深い対立に挟まれておどおどしながらの登山となった。途中のチェックポイントでは先生が立っていて、そこで渡部が私が全く下級生の面倒を見ないので困っているなどと話した。私は先生から呼び止められて
「なんで下級生の面倒見んの?渡部さん困ってるやん」
と言われたので、私は
「渡部が私に対してはっきりこう言ったんです『リンダが下級生と話をしたり、面倒見たりしたら、下級生たちが腐る』って。せやから俺は一切手伝わんことにしたんです。俺は渡部たちに今まで散々いじめられてきて、口を聞いたら腐るって言われてまで、下級生の面倒を見んとあかんのですか?」
そう言い放つとさっさと歩を進めた。先生も
「困ったな」
という顔をしていたが、渡部だけの話をうのみにして、余計な口を挟まないでもらいたい。私はそう思っていた。途中で下級生が遅れていようが何だろうが関係なく、下級生の世話はしなかった。自分が下級生の面倒を見るなって言ったんだから、言い出した本人がすべての責任を負えばいい。私はそう思っていた。そんなトラブルを抱えながらも山頂に到着して、昼食タイム。昼食が済んだあとは自由時間。私は寒いので焚火にあたって暖を取っていた。星田や今田たちも集まってきて、寒さをしのぐために暖を取っていた。あれこれおしゃべりをしながら時間は過ぎていき、下山時刻を迎えた。下山の時も私は下級生のことは一切面倒を見ず、すべて渡部に押し付けた。渡部が
「あんたに言うたことは謝る。謝るから、頼むから下級生の面倒を見てくれへんか?」
そう言ってきたが、私は冷たく
「はぁ?別に謝ってくれんでええねん。自分が言うたことに対して責任持てや。俺が下級生の面倒見たら下級生たちが腐るんやろ?俺はそんなん言われてまで下級生の面倒見るつもりはないねん」
と言って突き放した。謝ろうが何をしようが、私は許すつもりは全くなかった。結局下山して、バスが停まっている駐車場まで、下級生の面倒は渡部がすべて見ることになったのである。いわば自業自得・身から出た錆である。バスの車内は、私たちの班に関して言えば、下級生たちは、私と渡部の妙な緊張感から解放されたからであろうか、寝息を立てていた。学校で最終点呼を取って、全員がそろっていることを確認したうえで解散となって、私は帰宅した。




