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小学校最後のマラソン大会

 1月の終わりになって、マラソン大会が行われた。長距離走が苦手な私にとっては、魔のイベントであるが、事前の健康診断では、参加を見合わせるほどの大きな問題はないということで、マラソン大会に参加することになった。当日はかなり厳しい冷え込みになっており、半袖に半ズボンの体操着では寒さが身に堪える。下級生から順にスタートしていくので、6年生は一番最後で、スタートを待っている間は体が冷えないようになるべく体を動かしながら温めていた。やがて6年生がスタートする時間が来て、先に女子がスタートして、最後に男子がスタートする。女子がスタートしておよそ15分後、女子のトップがゴール。やがて続々とゴールに駆け込んで、最後の女子がゴールした時点で今度は男子がスタート。最初からあまり飛ばすと後が続かなくなるので、私はスローペースでスタートしていった。スタートしてしばらくすると、増井が

「お前、俺より先に行ったら許さんからな」

 などと言っていたが、私は無視した。先に行こうが行くまいが、俺の勝手だと思っていたからである。マラソン大会のコースは隣の市にある大きな公園の周回コースで行われていて、先に終わった女子が男子のレースの様子を眺めていた。私が走っていると渡部と天田の声が聞こえた。

「テメェー、うちらの前を通るんじゃねぇよ」

 そんなことを言っていたが、そこを通らないと次に進まないので、私は聞こえなかったふりをしてそのまま走り抜けた。私の姿を見たくなかったら、わざわざ私が走るところを見に来なければいいだけではないか。まったくもって奴らの言ってる意味が分からない私である。

 その一方でいつも私のことを気にかけていてくれていた大森や西山は

「リンダ君ガンバ~」

 と声援を送ってくれていた。その声援に手を挙げて答えながらゴール目指して走り、やがてゴールラインが見えてきて、どうにかこうにか棄権することなく走り切った。私がゴールして少ししたら、増井が肩で息をしながらゴールするのが見えた。そしてゴールしてすぐに私のところにやってきて

「テメェー。俺より先に行くなって行ったろうが。無視しやがってこの野郎‼‼」

 と言って殴りかかってきた。その場に居合わせたほかのクラスの先生や周りの皆が慌てて止めに入って、増井が私を殴るという行為は、この日は未遂に終わったが、その理由をほかのクラスの先生に問い詰められると

「リンダ君は俺と一緒にゴールしよって約束したのに、約束を破りました」

 と、してもいない約束を言い出して、私が約束を破ったと主張したが、私は増井の主張を真っ向から否定した。

「俺はそんな約束などしてません。増井は自分より先に俺がゴールしたのが気に食わないだけです」

 そう突き放した。人前であっても自分にとって気に食わないことを私がすると、暴力をふるおうとする。こいつらの非常識さをまざまざと見せつけられた瞬間であった。この時は、先にレースを終えていた下級生たちもその瞬間を目撃しており、他のクラスの先生からもかなりこっぴどく怒鳴られていた。

 マラソン大会が終わって、教室に戻って服に着替えると、それまで薄着だったこともあって、暖かさがジワーッと体を包み込んでいく。そして長距離を走った後ということもあって、暖房のきいた教室でウトウトしていた。かなり疲れていたのと、寒い中にずっといたので、緊張が和らいだからかもしれない。

 そして翌週の月曜日の全校朝礼でそれぞれベスト10に入った児童が表彰された。親友である星田も表彰されていた。星田は短距離も強かったが、持久力も会えり、スポーツの面では私よりもはるかに万能であった。星田は特にスポーツ少年団に参加しているわけではなかったが、生まれ持った素質なのであろうか。

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