表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/218

校内暴力

 家に帰ると泣いた跡を親に見られたくなかったので、顔を洗ってゴンの散歩へ。ゴンは私の異変を何か感じ取ったのか、いつもなら私がリードを持ってゴンのところに行くと、大喜びしてしっぽをふるのであるが、この時は私の顔を見ると、そっと体を寄せてきて、私の顔をぺろぺろ舐めて、静かに寄り添ってくれた。ゴンと触れ合っていると、教室で起きる惨劇を少しの間ではあるが、忘れることができた。テニスボールをもっていつもの空き地に行くと、ボールを投げてゴンが加えて戻ってくる遊びをしていたのあるが、いつものように元気に奪取するゴンを見ていると、少し元気が出た。

 そしてゴンの散歩から帰ってくると、母と姉が帰宅していて、何やら話をしていた。よく話を聞いてみると、中学校の中であったことを話しているようであった先にも述べたように、姉が通っていた中学校は、当時かなりあれていて、校内暴力やいじめなどの問題が頻発していた。姉が特にいじめや暴力の被害にあったわけではないのであるが、昼になってお茶を入れたやかんに唾を吐き捨てる奴がいるとか、授業中に騒ぐ奴がいて、授業に集中できんとか、そういう話であった。

「あんなんじゃぁ、まともに勉強したくてもできひん」

 と言うのが姉の伝えたいことであった。

「このままじゃぁ、高校の進学にも影響が出る」

 と言うのである。

「私はまじめに勉強したいから、学習塾に通わせてくれ」

 と訴えていた。私も姉が通っている中学校の悪いうわさは聞いていたが、まさか授業が成り立たない状態であるとは思いもしなかった。それからしばらくして、姉はそろばん塾をやめて、駅近くにある学習塾に通うことになった。私としてはよきライバルと思っていた姉がそろばん塾をやめるのは非常に残念で、姉と競い合うのが、私がそろばん塾を続ける一番のモチベーションだったのであるが、半分やる気をなくしてしまった。そして新たな目標として、姉が残した3級を超えるというのを新たな目標に据えて、3級の検定試験を受けることにした。このころになると計算式もかなり難しくなっていて、たぶん100万の桁くらいの計算が出されていたのではないかと思う。模擬試験を繰り返し受けて、練習を重ねていったが、これまでなら10問中8問は正解を出していたが、3級の検定試験では7問前後の正答率であった。模擬試験の段階で正答率を以前のように80%から90%に引き上げていかないと、本番で合格を勝ち取るのは難しいと感じていたので、暇さえあればそろばんを出して計算式を解いていた。そのおかげか、正答率も以前の状態にまで回復して、試験本番を迎えた。試験には大森もいて

「お互い頑張ろうや。絶対合格しような」

 と誓って試験会場へ。教室には試験開始前の緊張感が漂っていて、先生の

「計算始め」

 の号令を待っている間、明かに私も緊張していた。落ち着かせようとふーっと深呼吸をいして試験開始を待った。やがて号令とともにそろばんをはじく音が教室中に響き渡り、問題を解いていく。そしてすべての試験科目を終えて、大森と話す時間があって、

「どうやった?」

「やっぱりめっちゃ難しかった。俺、ひょっとしたら今回はダメやったかもしれん」

「大丈夫やって。リンダ君はあれだけ頑張ってきたやん。自信持ってええんとちゃう?」

「大森はどうやったん?合格できそう?」

「私もどうやろう?一生懸命練習したから、受かってると思うけどなぁ…」

「お互い受かってたら3級やな。また一緒に頑張ろうや」

 そんな話をしてその日は大森と別れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ