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恐怖政治

 月曜日になって、生活ノートが先生のもとに返されるわけで、その中で書かれていたことが私にも知らされた。

「常日頃から反抗的で、正直どのように接したらいいのかわからない」

「被害を受けたリンダ君に対しては申し訳なく思う。これから子供の様子を細かく見ていこうと思う」

 と言った親としての責任を感じている返事もあれば、増井の親のように

「子供がやったことであり、私たち親には関係ない」

 と放任主義を貫く親もいて、対応をまちまちであった。先生は

「今度同じことをやったら、次はリンダとリンダの親を連れておまえらの家に行く」

 そう言っていた。しかし、これで収まってくれたらいいなと言う、私の思いは届かなかった。

 終わりの会が終わって、帰ろうとした私に渡部が

「お前さぁ、お前のせいでうちらがどんな目におうたと思ってんの?センコウからは思いっきりビンタされるし、親からはしばかれるし、怒鳴られるし。お前がおらんかったらうちらこんな目にあわんで済んだんや。全部お前が悪いねん。頼むからさぁ、早う死んでくれへん?お前がおらんようになったら、うちらみんな幸せになれるねん。お前がおる限りは、うちらおまえに対する攻撃をやめるつもりはないからな」

 不気味で不敵な笑みを浮かべてそう言い残して帰っていった。先生に怒られようが親に怒鳴られようがやめるつもりはない…。私の将来に暗い影が落とされたように思えた瞬間であった。翌日学校に行くと黒板に大きな文字で

「リンダへ。さっさと死ね。二度とこのクラスに顔出すな。このクラスの恥さらし。出ていけ」

 そう書かれてあった。私が教室に入ると、私にもはっきり聞こえる声で、

「今度チクったら、次にターゲットになるのはチクったやつやからな。リンダみたいになりたくなかったら、誰にもチクるな」

 と清川が言っていた。いよいよもって恐怖によってクラスを支配する”恐怖政治”の幕が切って落とされたのである。私と同じ目にあいたくなかったら自分たちの言うことを聞け。そういう意味であった。誰だっていじめられたくない・被害にあいたくないという心理を巧みに使った言葉によって、クラス皆をひとくくりにしていくのである。先生に何らかの形で通報したらターゲットにされる。親が説得しても言うことを聞かない。この制御不能に陥ったクラスの中で、いったい私はどうしたらいじめから逃れることができるのか。そのことばかりを考えるようになっていった。そして行き着いた答えが

「相手を怒らせないこと・相手の神経を逆なでしないこと」

 であった。そうすれば相手も私を攻撃する口実がなくなり、いじめが収まるのではないかと思ったのである。ところが、何を言われても、何をされても全く反応を示さなくなった私をも相手は攻撃してきた。私が挑発に乗って反撃して来るのを待ち構えていたのである。

「死ね」

「出ていけ」

「殺すぞ」

 などという暴言を浴びせながら、私が耐えかねて

「死ね言うやつが死んだらええねん。人に死ね言うんやったら、どうしたら楽に死ねるか、手本見せてくれや。そしたらお前らの望み通り死んでやるわ」

 そう言い返すと

「マジでこいつむかつくわ~。なんでうちらがお前のために死ななあかんねん。死んでええのはお前だけや。お前は生きてる価値なんかどこにもないねん。お前は生きてる価値なんかどこにもない、クズ同然なんや」

 そして歯向かったからと言って、背中や腹を思いっきり殴られた。なぜ相手が背中や腹など、服で隠れる部分を集中的に狙ってきたのかと言うと、肌が露出している部分を攻撃すると、私の親にいじめ被害を受けているということがばれてしまうからであった。

 学校が終わって、家に帰る途中、星田の家の前を通るのであるが、星田のおばちゃんが

「リンダ君今帰り?」

 と言われたのであるが、この時も散々いじめられて泣きながら帰っていたので、暗い顔をしていたと思うが、おばちゃんの底抜けに明るい笑顔を見ていたら、少しここrがほっとするような気がした。

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