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久しぶりの飲み会

 いろんな思いが頭の中を駆け巡っている間に、母の実家に着いた。車を停めたら、マルちゃんがいつも通りに迎えてくれた。マルちゃんも母の実家にやってきて12年。老犬の域に達していたが、この当時はまだ元気であった。母の実家には夕方まで滞在して、帰りは私が運転して帰った。実家の祖母は

「もう少しゆっくりして帰ったらどうか」

 と言っていたが、我が家にはポッキーがいるので、泊まるわけにもいかず、慌ただしい日帰りとなったのである。

 そして、家に帰って仕事をこなしながら、いつものように家に帰ると、貴ちゃんから電話があった。

「久しぶりにみんなで集まって飲み行かん?」

 というのである。私は二つ返事で

「行く」

 と伝えて、電話を切った。飲み会は一カ月後の9月の終わりに行うという。電話があった後も、何度か貴ちゃんや先輩たちと一緒に出掛ける機会があって、遊びに出かけるのが、飲み会に変わっただけというような感じであったが、中には遠く県外に出て働いている先輩もいるので、なかなか会えない先輩たちにも会えるという。

 やがて迎えた飲み会当日。貴ちゃんやみっちゃんや清田の他に、高田先輩や大林先輩など、いつも会っている先輩に、いつもはなかなか会えない先輩も続々と集まってきて、にぎやかな吹奏楽OB・OGによる飲み会となった。みんなよく食べてよく飲んで、お互いの近況を報告し合って、そのあとボーリングやカラオケにも出かけて、家に帰ったのが真夜中だったのではなかったかと思う。この時

「確かに俺は、いじめで大阪に残してきた、友達とは会えなくなってしまったけど、こうして温かく迎えてくれる、吹奏楽仲間がたくさんいる。俺はこっちに来ていい人たちに巡り合えて、まだ良かったのかもしれない」

 そう思えた。そして、バブル崩壊とともに日本経済が低迷する中、私の職場ではリストラの第2弾が行われて、さらに人員が減らされた。いくらいい製品を作っても、売れないのである。これは貴ちゃんも言っていたことであるが、

「生産は私が入社した時の半分以下になっちょるよ」

 という事である。貴ちゃんが就職した職場でも、容赦ないリストラが断行されて、大幅な人員削減が行われたようである。

 私の勤める工場も似たような稼働状態で、私が新しく移った職場は、フル生産で製品を作ったときの1/3以下にまで落ち込んでいた。生産速度を限界にまで落としても、定時間操業が維持できない状態にまでなっていた。そして、この時噂になっていたのが、次にリストラの対象になるのは、私たちの年代だろうという事であった。私たちの年代は、バブル経済真っ只中の時に入社して、大量に人員が増えたため、私たちの年代でも、余剰が生じている状態であったためである。要するに、自分がリストラの対象にならないようにするためには、仕事に対するスキルを、今まで以上に引き上げる必要があった。そのためにはいろんな資格試験にチャレンジしたり、自分に与えられた仕事に対して、どうしたらもっといいものが作れるようになるか、提案したり、そういったことが厳しく求められる時代になった。それは会社内での生き残りをかけた、サバイバルであった。


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