ポッキー
その姉が結婚して家を出ていなくなった後すぐに、一匹の迷い猫が家にやってきた。茶色い毛並みに左前脚に黒い毛の生えた純日本猫であった。最初、猫を飼うつもりはなかったので、家に上がってくるたびに外に追い返していたのであるが、彼女も身寄りがなく、行くところもない状態で、生き延びるのに必死だったのだろうと思う。とうとう根負けして、
「あぁ迄してここにおりたがるんじゃったら、飼ってあげたらいいんじゃないか」
ということになり、我が家で飼うことになった。まだ乳離れして間もないくらいの子猫だったので、仔猫用のキャットフードを買ってきて食べさせてやったら、お腹が空いていたのであろうか、たくさん食べていた。そして、安心しきったように布団の中で眠りについていた。子猫を買うことになった以上、飼いネコである印として、赤い首輪をつけて、名前を何にするかということになったのであるが、私は魔女の宅急便が好きなので、
「魔女の宅急便に出てくるジジがいい」
というと、黒猫じゃないという理由で、あっさり却下された。そして、妹が
「グリコのマーブルポッキーに似ているから、ポッキーにしよう」
ということになって、名前はポッキーに決まった。そのポッキー、家に来た頃は、あまり母猫からおっぱいをもらえなかったのか、かなり痩せ細っていたのであるが、我が家にやってきて餌もたくさん食べるので、すくすくと成長していった。そして、運動神経が物凄く良くて、私が紙切れを丸めて転がしてやると、勢いよくダッシュして、転がして遊んだり、水屋の上まで思いっきりジャンプして飛び乗ったり、次第に我が家を和ませる存在となっていった。私もポッキーと遊んでやるのがちょっとした楽しみとなっていた。
このポッキー。女の子ではあるが、かなりお転婆と言うか、やることがやんちゃで、外に出すとカラスを追いかけまわしたり、めっちゃ高いところまで登って、飛び降りたり、まぁ、怪我するんじゃないかっていうくらいのことをしていた。特にカラスを追いかけまわしているのを見た時は、
「あんたねぇ、カラスの方が体も大きいんじゃから、連れていかれるよ。くちばしで突っつかれでもしたら大けがするからやめなさい」
って言って聞かせたのであるが、そんな心配などどこ吹く風っていうような感じで、野生の雀を捕まえてきたときは、家じゅうが雀の羽だらけになっていたので、さすがに
「こらぁ~」
って怒ったら、それからはしなくなったが、何か動いているものを見つけたら、とびかかるようなことをしていたが、もともとは野良猫だったので、野生の狩猟本能って言うのが強かったのかなと思う。のちにこれが13年ほどの彼女の生涯の始まりであった。




