社会人編 新入社員教育
高校を卒業して、3月半ば、私は新入社員の研修と、入社式のため、1か月半ほど県外に出た。自動車学校を卒業したのは出発する前の日で、それまでは自動車学校に通いながら、入社式や研修の用意などで慌ただしく過ごしていたが、これからゴールデンウィークまでは県外で過ごすことになる。まずは会社の独身寮に入って届いている荷物などの整理。この当時はバブル真っ只中で、かなりの数の新入社員が入社していた。このため、独身寮の部屋数が足りず、本来なら2人一部屋で割り当てられる部屋が3人一部屋という割り当てになり、6畳間の部屋はかなり狭く圧迫感があった。2段式ベッドが二つに、各自持ち寄った着替えなどの収納ケースがかなりの数に上っていたため、実質各自が自由に使えるスペースはテーブルも含めて2畳分ぐらいであっただろうか。寮に入った日は、荷物の片付けなどで時間が過ぎ去って行って、翌日、会社の体育館で入社式が行われた。来賓あいさつや社長の訓示などがあって、企業理念や、会社の育成方針などの話があった後、誰がどこの部署に入るのかという説明があった。私は山口県から来たということで、予想通り山口県内の工場での勤務となった。山口県勤務となったのは100人くらいいたであろうか。入社式が終わって、各自解散となり寮に戻って、着なれないスーツを脱いで普段着に戻って、スーツはまた持って帰らなくてはならないため、綺麗にハンガーに通してクローゼットの中へ。そして翌日から本格的な研修が始まった。まずは新入社員同士でのオリエンテーリングなどが行われた。ある目標に向かってどれだけ一致団結を示せるかということが問われる内容のもので、ある課題が出されて、どの様に答えを導き出すのかという問題が出されて、皆で答えを探して出た答えを指導員役の先輩社員に提出するというものであった。ほんの数日前までは全く顔も見たことのない者同士がチームになって一緒に行動することに、最初はぎくしゃくしたところも見受けられたが、何日かするうちに次第に打ち解け合っていって、次第にチームワークもかみ合うようになっていった。そうした全体的なオリエンテーリングが10日余り行われた後は、各配属先に場所を移して、それぞれの部署での研修が始まる。このころになると仕事で使う作業着なども支給されて、いよいよ職場デビューする日が近づいたような感じがしていた。配属されたところではどのような仕事をしているのか、仕事をするうえでどのような危険が潜んでいるのか、会社内での規定とは別に配属先独自に守らなければならない決まりなどもあって、この時にはけがなどを防ぐための保護具なども支給された。配属先での大まかな作業の説明などが行われた後、実際に作業現場を見て回って、どの様な仕事が行われているのか、直接確認するということも行われた。作業現場に入ってみると、数多くの人がそれぞれ仕事をして、ロボットもせわしなく動いているほか、荷物を運搬するためのフォークリフトも走り回っていた。そして、人が通る場所、フォークリフトが通る場所などが細かく指定されていて、まずはどこを通っていけば安全なのか、それを知ることが大切であった。最初のうちは作業を遠くから眺めるだけであったが、研修も終わりに近づくと、間近で見学できるようになっていた。先輩がどのような作業をしているのか、道具の持ち方、姿勢など食い入るように見ていた。




