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第68話 コノヨとアノヨ

 ノジャの世界に降り立つと、雪が降っていた。目の前には白い大きな城が建っていた。和風な城だ。何々城に似ているとか、わかる人にはどの城に近いかわかるのだろうが、俺にはさっぱりわからなかった。

 俺とリンとブリュアさんは雪の上を歩きながら、城に行くことにした。

「この格好だと寒いな」

「我慢してください。これ以上着込むと、動きにくくなるので」

「いつ刺客が襲ってくるかわからないしね」

 リンとブリュアさんにそう言われて我慢することにした。

 城の前に着くが、人の気配がなかった。

「ここにいそうだよな?」

「僕はそう思います」

「私も」

 俺たちは重たい扉を押しながら開けた。

 中は木でできていた。

 とりあえず、高いところを目指して、階段を登ることにした。

 ギシギシと軋む音がする。中に人がいるなら、俺たちが来たことはバレているだろう。

 三階に上がった時、目の前に人がいた。

「コノヨだったか?」

 オレンジ色の長髪が揺れた。

「そうだよ。伊吹」

 にっこりと笑うコノヨ。

「ヨミに言われて、君たちを殺さないといけないんだけど……」

 コノヨは何かの格闘技の構えをとる。

「できれば、私たちの神様のことは忘れて、帰ってくれない?」

「それはできない相談だな」

 俺は、右手を前に突き出す。

 すると、俺の前にブリュアさんが立った。

「伊吹は何もしなくて良いからね〜」

「あ、はい」

 俺は一歩下がる。リンも同じく下がった。

「あれ? 一体一なのかな?」

 コノヨは目を丸くした。

「狭い所だからね」

 ブリュアさんの手から、腕一本分くらいの長さの杖が出てきた。

 青い杖の先に、竜の顔がついていて、竜の額には青い宝石が埋められていた。

「そうか……一人ずつ死んでもらうしかないね」

 そう言って、コノヨは飛び上がろうとした。


 勝負は一瞬で終わった。

 いつ出したのかわからない、ブリュアさんの青い人形たちがコノヨの足を押さえ込んでいて、コノヨは動けなくなり、ブリュアさんの杖で腹を貫かれていた。

「ああ。そうか、私が死ぬのか」

 コノヨはそう言って、膝をついた。まだ、青い人形たちがコノヨの足を押さえている。

「聞いてもいいか?」

 俺は一歩前に踏み出して、膝をつき、コノヨを真正面から見た。

「何だい?」

「どうして、ノジャを殺そうとしたんだ?」

「……みんな色んな気持ちで殺そうとしているのさ。私は、私は、友を殺されたからだよ」

「ノジャが?」

「そう。友はアノヨって名前。アノヨは黄金神(おうごんしん)を信仰することにして、白銀の神様……君が言うノジャ様を殺そうとして、返り討ちにあったんだよ」

「そうだったのか」

「でも、私は今でも白銀の神様を信仰しているよ」

「じゃあ、なぜ殺したいんだ?」

「友を殺された悲しみの方が強かったから、だよ……」

 コノヨは限界が来たのか、倒れそうになり、床に手をつく。

「私の友……私の」

 コノヨの体は地面に倒れ込んだ。

 腹から流れる血が床を満たした。

 俺は立ち上がり、リンとブリュアさんを見た。二人とも顔色はいつも通りだった。

「どうしてこんな事に」

 俺はコノヨに刺されて怪我をした腹をさすった。コノヨは同じ所を刺されて死んだ。

「痛むのかい?」

 ブリュアさんにそう聞かれて、俺は首を横に振った。

「思い出しただけだ」

「そうかい」

 俺たちはコノヨを置いて、上階に進む事にした。

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