第62話 刺客との戦い
杏奈はコノヨと、アキラはヨミと、皐月はアカツキと対峙していた。
杏奈とコノヨは素早く動きすぎて、ここからいなくなってしまった。大丈夫なのだろうか。
俺はノジャを自分の後ろに移動させて、ギルドの壁際まで下がった。
アキラとヨミは剣で斬り合っていて、お互い剣撃を受けないように避けたり、剣でいなしている。
皐月はアカツキの炎の攻撃を避けるだけだ。様子を伺っているのだろうか。
「無理じゃ。戦うなんて、無理なのじゃ」
ノジャは弱気になっている。
「そんな事言うなって」
「アカツキというやつは知らんが、ヨミとコノヨは別じゃ」
「知り合いなのか?」
「ヨミとコノヨはわしの近衛をしてくれていたのじゃ。わしの世界で、一番強いのはヨミじゃ。その次に続くのが、コノヨとアノヨだったのじゃ」
ノジャの心配は杞憂な気がしていた。今まで、ギルドの人たちで弱いと感じた人たちはいなかった。力を見せていなかった人たち以外だが。
「アキラと皐月ではダメじゃ……」
「そうなのか?」
見た感じだと、互角くらいに見えるし、皐月は攻撃すらしていない。
「わしは神だからわかる」
ノジャは俺の服の裾を強く握る。
「ヨミだけはダメじゃ」
そう言われ、俺はアキラとヨミの方を見た。
押されているように見えた。アキラは後ろに下がりながら、ヨミの剣撃を受けている。
ノジャの言う通りなのか?
「この世界の人は強くないな」
ヨミはそう言って、大剣でアキラを吹き飛ばした。
「ぐ……」
アキラは壁に叩きつけられる前に、剣を地面に突き刺して、後退しないようにした。アキラは跪く。
アキラの剣はボロボロで、もう戦えるようには見えなかった。
「これじゃ、ダメか」
アキラは立ち上がり、体の前で両手を合わせた。
すると、そこが青く光り輝く。
大きな十字架のようなものが現れた。細く長い棒の上の方に、それよりも短い棒がクロスするように付き、その交点に宝石のような玉が付いていて、棒の先端全てにも同じような玉が付いていた。赤、青、緑……玉は様々な色をしている。
「ライダンスの杖ならどうだ?」
アキラはその棒を杖を言った。杖を左右に振り回してから、剣のように構える。
「それで何が変わる! どけ!」
アキラは再び、ヨミと対峙した。
杖を使って、剣撃を避ける。杖には浮遊する力があるのか、杖を支点にアキラは宙を舞う。
「飛び回るだけか!」
ヨミはイライラしているのか、声を荒げる。
戦いの合間にも、ヨミはこちらを気にしているようだった。たまに目が合うと、睨んでくる。
「ああ! やかましい!」
ヨミの剣はだんだん荒々しくなってくる。
アキラはそれを縫うように動き、ヨミの目の前まで現れた。
「大技過ぎてなかなか当たらないんだ」
アキラはそう言って、杖の先端をヨミの腹に当てる。
「雷撃! ライトニング!」
そう叫ぶと、ヨミの体から電が走った。
「ぐああああああ!」
ヨミは白目をむき、膝をついた。
「ヨミ!」
ノジャは叫んで、身を乗り出す。
「こ、殺してしまったのか!」
ノジャは俺の方を向く。
「さすがにそれはないんじゃないか」
アキラはヨミの方を見たまま後退りする。
電撃を受けて、動けなくなったヨミを見ているようだった。
「どうする?」
アキラはこちらを振り向き、ノジャに問いかけた。




