表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/77

第59話 伊吹とノジャ3

 ラウル様は一冊の本を持って帰ってきた。

「それっぽいのあったよ」

 床に降り立つと、俺に本を渡そうとしてやめた。

「おっと、これは渡したらダメなんだった」

「何が書いてあるんですか?」

「君の世界の歴史。これはどれくらい前かな〜。五億年くらい前だね」

「そんな前の!」

「とりあえず、装置にはめて、この世界の住所を調べよう。そこまでわかれば、イマジン界の人たちでも連れて行ってあげれるだろうね」


 装置というのは、最初に来た部屋にあるみたいだ。神様がたくさん飛び回っている。

 未来界のゲートを越えた先に、人の身長くらいの長さのキーボードと、その上に大きなガラスのような球体があった。

「ここに本をはめると、住所がわかるんだ」

 キーボードの隣にある隙間に本を入れると、大きな球体によくわからない文字がたくさん出てきた。球体を埋め尽くすほどだ。

「あらら。中身が……。えっと、どうやるんだっけ?」

「そこのボタンを押せ」

「ああ、ここか! ありが……あ」

 ラウル様の近くに人が現れた。いや、神様か?

 その神様も帽子を被り、半分の輪っかが帽子の両側に付いている。銀のボブヘアに、白い瞳。透明になりそうなほど真っ白な肌に、ブカブカの服を着ている。

「あ、あらら。……アイズ!」

 杏奈が大きな声を出した。

 アイズ、と呼ばれた神様はこちらを睨んだ。

「あーんーなー?」

「久しぶり……えへへ」

「私は怒っている。理由はわかるな?」

「あはは。はい」

 アイズとは、杏奈やトーマが話題に出していた人だ。神様なのか? 人なのか?

 恵っていう杏奈の友だちをストーカーしている人だ。それで、(しん)界に行くために必要だった人だ。だが、トーマでも良かったらしく、会う必要はなくなった。

「伊吹とノジャといったか。私はアイズ。未来界の神だ。君たちが悪いとは思っていない。全部、トーマと杏奈が悪い」

「すみません」

「あれ? 僕は〜?」

 リチャイナは不服なのか、声を上げた。

「もちろん、お前もだ。バカか」

 アイズ様は、リチャイナの両頬を指でつねった。

「わしのせいなのじゃ。杏奈たちを責めないでくれ」

「君のせい?」

 ノジャは俯いていた。

「意味がわからない」

「わしは……」

「ノジャ。言いたくないなら、言わなくていいんだぞ?」

 俺は辛そうなノジャを放っておけなくて、そう発言した。

「伊吹。いいのじゃ。いずれ、言わないといけないと思っていたのじゃ」

 ノジャは少しだけ顔を上げて、俺を見た。

「わしは、わしの世界の神じゃ」

「え?」

 ラウル様とアイズ様は顔色を変えず、杏奈とリチャイナは驚いた顔をした。俺の顔も驚いているだろう。

「わしであれば、簡単に伊吹を元の世界に返せた。イマジン界に来た時すぐは無理だったが、数日経てば可能だったのじゃ」

「なんで黙っていたんだ?」

 俺がそう聞くと、ノジャは顔を完全に上げた。

「伊吹と一緒にいるのが楽しくて……ごめん」

「俺はずっと帰るために……皆の力を借りて……皆を危険な目にも合わせて」

 ノジャがずっと俺に謝りたかったのは、このことだったんだ。

 俺は、これを許せるのか?

「謝って済むことではないと思っている。ここまで来ておいて……今言うことになるとはのう」

「……ノジャ」

「わしが狙われているのも、わしが神であることが理由じゃ」

 ノジャのその言葉は、俺の耳を通り過ぎた。

 聞いていることすら、辛かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ