表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/77

第52話 怪我

 目が覚めた。

 見慣れた天井がある。

 寝転んだまま左を向くと、ノジャの頭があった。

 寝ているようだ。

「いてて。なんだ?」

 腹が痛くて、起き上がると、上裸で腹に包帯が巻かれていた。

「なんだ、これ?」

 扉が開けられると、コリッツがいた。

「コリッツ! これ、何が起きてるんだ」

 コリッツは手に持っていたカゴを落とした。

「……起きたぞ。おーい! みんな! 伊吹が起きたぞ!」

 コリッツの叫びで、階下から足音がたくさん聞こえた。

 その声にノジャも飛び起きた。

「伊吹〜!」

 ノジャは俺に抱きついてきた。

 腹に響く。


 さっきまで、俺が寝ている部屋は人まみれだった。

 杏奈、カルメ、リン、みゆう、コリッツ、竜鬼(りゅうき)、ウルイァ、ツトム、ビーナス、クキヤ、トーマ……。そして、前に俺に文句を言ってきたソラまで、金星にいる知り合いは全員見舞いに来てくれた。

 今、俺の腹には大きな穴が開いている。

 何針も縫われた跡があった。

 ノジャを狙う刺客が俺を狙ったらしく、俺は殺されそうになったのだ。

 まるで他人事だ。

 記憶はあるが、朧げだからだ。

「痛くないかの? 大丈夫か? のう、伊吹ー!」

「痛いけど、もう大丈夫だってコリッツも言っていただろ」

「でも……」

「大丈夫だから。心配すんな」

 俺はノジャの頭を撫でた。

 また、子ども扱いするなと怒られるかもと思ったが、何も言われなかった。


 数日は動かない方がいいらしい。

 この世界には治癒魔法が少ないみたいで、魔法でバーっと直すことはできないと言われた。

 ザサツ界では治癒魔法は基本魔法らしいが。

「この世界とも長い付き合いになりそうだな」

 俺は建物しか見えない窓を見て、ぼんやりとしていた。

 ノジャが常に付きっきりでいたが、ノジャがあまりにも心配して騒ぐので、今は少しの間だけ別室にいてもらっている。

 未来界へ行くのは少しお預けになるらしい。一週間は安静にしていた方がいいと言われた。

 暇だ。

 ノジャがいないといないで、寂しいかもしれない。

「あ、ソラ」

 ノックされることなく扉が開かれた先には、黒髪ショートのソラがいた。

 赤黒く光る瞳が俺を見据えた。

「少しはマシになったか?」

「痛みはあるけど、調子は良いよ。もしかして、心配してくれてる?」

「……暇なだけだ。刺客が現れた時用に呼ばれたからな」

 これは心配してくれていそうだ。暇なら他の事をしていた方が有意義だろう。

「俺は」

 ソラはそう発言してから、考えているかのように下を向いた。

「お前に怪我をしてほしかったわけではない。刺客は見つけ次第殺す」

「殺すって。そこまではしなくていいよ」

「お前はわかってない」

「何を?」

「相手は殺意を持っているんだ。捕まえるだけにしようなんて油断していると殺されるぞ」

 それは一理ある気はするが、納得してはいけないと思った。日本人として。

「ノジャが危険になるなら、そうしても良い気はするけど」

「お前でも一緒だ」

「おお。最初は俺に文句言ってきたのに」

「……うるさい」

 ソラは再び下を向いてしまった。


 沈黙が続いた。そのままソラは何も言うことなく部屋を出て行った。

「また、暇になったなー」

 そろそろノジャを呼び戻そうと思った時、また扉がノックされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ