第47.5話 伊吹がいない!
「伊吹がいないのじゃ!」
ノジャは飛び起きて、リンの体を揺さぶる。
「え? いない?」
リンは寝ぼけているのか、目を擦った。
「伊吹がいないのじゃー!」
リンは、ハッとして、伊吹が寝ていたベッドを見る。
次に、壁にかけてある時計を見る。
七時を指していた。
「ザサツ界で単独行動しないでくださいって言ったのに」
「言ってたかのう?」
「その問答をしている場合じゃないです。あ! カルメさんもまだ帰ってきてないじゃないですか!」
リンがカルメを民衆に引き渡したことについては、ノジャは黙っていることにした。
「何やってんだよ!」
リンは声を荒げてから、ノジャを連れて、宿屋を飛び出した。
「どこを探すかのう?」
「僕には気を感知する力はないので、手当たり次第探します」
「ふむ。行き当たりばったりかのう!」
「カルメさんは置いておいて、伊吹さんを先に探しましょう」
宿屋から左に行き、道路を歩く。
朝は人が結構いて、みんな闘技場へ向かうそうだ。
「力のない伊吹さんに興味がある人なんているのか……」
リンはぶつぶつと独り言を言っている。
「ザサツ界人は、ただ殺したいだけじゃないのかのう?」
「そういう人もいますが、この街に集まっている人たちは強者や同じくらいの力の人と殺し合い……戦いをしに来てます。実際に人が死ぬことは稀ですよ」
「殺し合いではないのかの?」
「殺すという気持ちでは戦っていますが、闘技場マスターが戦いを途中で止めますから」
「ほう。なるほどのう」
「殺人欲にも色々あって、全くない人も一人だけ知って……あ」
リンは立ち止まった。
「どうかしたのかの?」
「伊吹さんの居場所の検討がつきました」
リンは歩いていた方と逆の方に歩き出した。
ノジャもそれに着いて行くことにした。




