第?話 黄金神2
「僕は確かにお願いしたけど」
ゴールネディアは背もたれの長い椅子に座り、目の前の男を睨みつけた。
「ザサツ界の危険さを見せつけてこいと言われたので」
「そうだけどさあ」
男……ツトムは頭を下げたまま言葉を紡いだ。
「竜をけしかけただけです」
「やりすぎなんだけど」
「申し訳ありません」
「そこは謝るポイントではあるんだよ。でも、聖星ドラゴンにする必要はなかったよね?」
「次は黒龍にしますね」
「やめて!」
「今回は聖星ドラゴンの黒龍亜種にしたので、さらに格上の方がいいと思ったんですが」
「そういうの良いから。それと、前にも言ったけど、君が殺そうとしても意味ないからね。同じ世界の人間に殺させないといけないんだよ」
「一度死ぬところを見たかったので」
「そういう物騒なこと言うのはやめてね。僕のセリフだから」
ゴールネディアは今日一番のため息を吐いた。
ツトムが去った後、椅子の後ろから、別の男が現れた。
緑の肌に、赤髪。顔には黒いペイントが付いている。服は奴隷のようにみすぼらしかった。
「相変わらず、ツトムさんは何を考えているかわかりませんね」
「言うこと聞いたり、聞かなかったり、聞いても何か変なんだよなあ」
ゴールネディアは椅子にさらに深く座り直した。
「スイモくん、君に頼もうかなあ」
「俺は弱いので、何もできませんよ?」
「いやいや、君もさあ。強いのに何で隠すのかな」
「弱いので」
スイモは椅子の肘掛けに座った。
「……僕の部下は全然言うことを聞いてくれないや」
「それは俺とツトムだけです」
「自覚まであるんだ」
ゴールネディアは金の髪を手ですいた。
「話を聞いただけですが、一つ提案があります」
「話だけ聞くけど」
ゴールネディアは関心がないのか、自身の髪の毛で三つ編みを作り始めた。
「伊吹という人間を使うのはどうでしょうか?」
「ただの力のない人間でしょ。興味ない」
「あれを盾にすれば、そいつも降伏せざるを得ないかと」
「ただの人間に神が興味を示すとでも?」
「あなたが言えたセリフではないですよね」
「僕は普通の人間には興味ない」
「そいつにとっては特別だとしても?」
ゴールネディアは姿勢を正し、スイモの顔を凝視した。
「ふーん。良いじゃん。たまには良いこと言うね」
「いつもです」
スイモは肘掛けから降りて、お辞儀をした。
「あなたのためなら、何でもします」
「毎回そうしてくれると助かるよ」
ゴールネディアは、くくと笑い、スイモの頭を撫でた。




