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第46.5話 竜3

 聖星(せいせい)ドラゴン亜種は闘技場の中心を埋め尽くし、羽をばたつかせ、暴れている。羽の片方には大きな穴が空いていて、それによって飛べないらしい。この竜種は再生能力が高いはずだが、何者かに再生能力を魔法で封じられているようだった。

 再生能力を封じている魔法を解呪すれば、羽を元に戻し、穏便に去ってくれる可能性もある。しかし、万が一こちらを敵視してしまったら、再生能力を身につけた竜を倒すのは難しい。

 リンは一瞬でそこまで考えて、闘技場へと入っていく。

 もう数名のハピネス教の隊員が揃っていた。建物はとても頑丈なためか、少し崩れているくらいで済んでいた。

「リンか」

 豊が隊員たちの中心に立っている。

 リンとネバーはその集まりに加わる。

「聖星ドラゴンの亜種だな。尾に棘が多くついているし、銀の鱗に黒い鱗が混じっている。黒龍に近いな」

 豊は隊員たちに説明する。

「弱らせながら竜核を探し、竜核を見つけ次第リンの巨大魔法で瀕死にさせて、竜核を貫く。これしかない」

「聖星ドラゴンの竜核は胸か尾にあるけど、これは亜種だから別の所にある可能性も考慮しなさい」

 豊の隣にいた女性が続けて説明する。金髪に、生え際が緑色で、長い髪は二股に分かれて流れている。隊服をきっちりと着こなし、ロングスカートが揺れる。彼女はペパーミントという名だ。

「行くぞ」

 豊の掛け声に合わせて、隊員とリンは外へ向かった。

 リンは、なぜ自分の魔法がメインウェポンとして使われることになったのか、とても疑問に感じていた。ザサツ界人であれば、自分の巨大魔法に匹敵する攻撃方法はあるはずなのに。

 攻撃に参加するのは、リン、豊、ペパーミント、(ほたる)真空(しんくう)夜魔(やま)の六人だ。補助魔法を使うのが、ネバー、フランソワーズの二人だ。

 普通は、聖星ドラゴンの討伐となると、ザサツ界人ですら二十人規模が必要だ。イマジン界人だと、四十人から五十人は必要だろう。

 空が飛べず、再生能力も失われているとはいえ、八人で討伐するという考えに至るのが豊の凄いところである。


「見つけたわよ〜」

 ベリーショートヘアで頭に仮面を付けている女性、夜魔は、竜核を見つけたのか叫んだ。

 戦闘開始から二分ほどの出来事だった。

 聖星ドラゴンが炎を吐けないように、狙いが定まらない動きをしていた中で、だ。

「では、私たちで防御魔法しますね」

 フランソワーズとネバーは闘技場の端に行き、防御魔法のバリアを貼った。リンの巨大魔法に耐えられる強力なものだった。

 戦闘に参加していた人たちは全員、バリアの外に避難する。暴れている竜は、豊とペパーミントの魔法で拘束されてしまった。

「力を貸せ。アエラス・フォティア・ケオ!」

 リンの叫びで、バリア内に巨大な火柱が出現した。

 竜は内部で火炙りとなる。異常な熱にバリアがオレンジに光る。

「ギギャアアアアア!」

 竜の叫び声が聞こえる。

「も〜。魔法が強すぎます〜」

 フランソワーズはバリアを保つために、必死に魔力を注ぎ込む。

「燃えてるわねえ。暖かいじゃん」

 夜魔は呑気に言いながら、他の人と連携を取るためにバリアの周りを飛び回る。

 炎が消え、竜が見えた時、リン以外の攻撃陣が竜の額側に集まる。

「フルゴルラティウス!」

 集まった全員で魔法の光線を放った。

 光線は竜の額を貫き、後ろの山にまで穴を開けた。

「山の復興しないといけなくなりましたね」

 リンは、それに参加させられないように気をつけないとなと感じた。

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