第?話 黄金神
黄金神、ゴールネディア。ギルドの敵だ。
それに仕えているのがツトム。ギルドに所属しているものの、それは黙認されている。
ツトムがいなくても、どうせギルドの情報は筒抜けになるのだろうから。
それに、ツトムは必ずゴールネディアの味方をするわけではない。
「というわけで、田仲伊吹と、ノジャと名乗る少女はザサツ界に送ることにしました」
ツトムの報告に、黄金の衣装を身に纏った神、ゴールネディアはため息を吐いた。
「手を出しにくい所に送ってくれたね」
「ある意味安全ですからね。とはいえ、勝手に死ぬ可能性もあるので、あなたの利にもなりますでしょう」
「動向が読めなくなるだろう」
「帰ってきた時の報告を待ちましょうよ。今まで散々待ったんですから、それくらい待てますよね?」
「待てるけど……」
ゴールネディアは立っていたが、後ろにある背もたれが高い椅子に崩れた。姿勢は悪い。
「君は相変わらず、厄介なことをしてくれるね。最近、反抗期なのかい?」
「いいえ。あなたのために行動しているまでです」
「そんな感じに見えないんだけど。まあ、いいよ。ザサツ界に行く前に殺してやる」
「物騒なことを言わない方がいいですよ。あと、リンとウルイァと俺がいるので、無理かと思います」
「……君も邪魔するんだ」
「体裁として戦わないといけないんで」
「そこは何とか誤魔化してよ」
「そう思うなら、刺客に俺を選んでください」
「君じゃダメなんだよ。同じ世界の人間に殺させないと、死なないんだ」
ゴールネディアは深く息を吐いた。
雑に座っていたのを正して、ツトムを真っ直ぐ見た。
「君が少しでも手を出せば、捻り殺しちゃうでしょ」
「手加減できますよ?」
「しないでしょ。僕の命令、あんまり聞いてくれないし」
「聞いてますよ。多分」
「ほらぁ! 多分って言ってる!」
「まあまあ。俺はゴールネディア様に忠誠を誓っていますから、安心してください」
「本当かなあ」
ギルドの講堂。
魔法陣を慎重に描いているリンの後ろにツトムが立っていた。
「そんな感じね」
「はあ。全然状況がわからないんですけど」
リンは魔法陣を描きながら、話に応じている。
「同じ世界の人間に殺させないといけないらしいね」
「ということは」
「ザサツ界人に殺されても、生き返ると思うよ。その辺はゆるゆる守ってやってね」
「それはそれで難しいですし、手は抜きませんから」
「真面目だね。ちなみに、この話は杏奈には」
「言いませんから、安心してください。杏奈さんに聞かせるとややこしくなりますから」
「助かるよ。まあ、善処して」
そう言って、ツトムは講堂から出て行った。
「勝手なことを……。ノジャさんは何者なんだ」
リンの独り言がしんとした講堂の中に溶けていった。




