第29話 魔法研究所の研究室
魔法研究所のギルド専用受付の受付嬢、ユイリンに連れられて、俺たちは上階へ向かった。
階段を結構登るみたいだ。
「ここはエレベーターはないんだな」
「エレベーターは天界だけの技術だ」
俺の疑問に慎助がすぐに答えてくれた。
「天界?」
ユイリンが疑問を浮かべて聞いた。
「どこかの国の話だ」
慎助は誤魔化すように言った。
普通の人には教えられないことなのかも。
階段をいくつか登った後、廊下を歩き、一番奥に着いた。重厚そうな扉の前で立ち止まる。
「アーク助教とスナオ教授もいるので、あまり変なことを言わないようにしてくださいね」
「厳しい人なのか?」
俺が聞くと、ユイリンは変な人たちだからですと、答えた。
そして、ユイリンはお辞儀をして、その場から立ち去った。
残された俺たちは顔を見合わせて、扉を見た。扉には金属の輪が取り付けられていて、それでノックをするらしい。
代表して俺がノックをした。
「どうぞ〜」
呑気な声が聞こえたので、俺たちはゆっくりと扉を開けて中へと入った。
中には数人いたと思う。思うというのは、中は部屋自体は広そうだが、机や椅子、研究用の何かが置かれていて狭そうだった。
「おや? おやおやおや! 慎助くんじゃあないか」
分厚い丸メガネをかけた白衣の男が近づいてきた。
「スナオ殿。元気そうで」
「まあまあまあ。元気ではあるよ。いつもね。もしかして、研究に助力する気になった?」
「ならない」
「なんだなんだなんだ。仕方ない。それより、何か用かい?」
「……ウルイァがいると聞いて」
「いるよ〜。やーいやいやい。ウルイァくん、ご指名だよ」
すると、奥の方から赤い髪の人が現れた。歩く時にさらりと流れたポニーテールを見るに、膝まで髪の毛がある。
「なんだ。慎助か。どうかしたか?」
声からするにウルイァは男性のようだ。
「何も聞いていないのか?」
慎助は俺たちの方に顔を向けた。
「ああ。何かの護衛だっけ? ちょっと忘れてた」
「はあ。これだから間抜けなんだ」
「慎助〜。辛辣なこと言うなよ」
ウルイァはこちらに視線を動かして、じっと見てきた。ウルイァは赤い長髪に、黒が混じったような赤い血のような瞳が印象的だった。
「伊吹とノジャちゃんだったかな。俺はウルイァ。よろしくな」
「うん。よろしく」
「よろしくなのじゃ! ここは面白そうなものがいっぱいじゃのう」
ノジャがそういうとスナオが嬉しそうな声を上げた。
「そうでしょ! ここは僕の研究室! 色んなことを研究しているんだけど、特に今はモンスターを研究しているんだ!」
「なんじゃと! モンスターを研究する者がいたとは驚きじゃ」
ノジャは目を丸くした。
「他の研究は片手間でやっているんだけど、アークくんにほとんど任せているかな。最近、ここら辺のモンスターの生息域を完璧に把握だきたから、見せてあげよう。こっちこっちこっち」
スナオにそう言われて、俺とノジャは研究室の奥に連れて行かれた。慎助とウルイァはため息を吐いて、その場にとどまった。
研究室の通路は狭くて、横歩きしながら奥へと進んだ。




