表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/77

第2話 伊吹、異世界に降り立つ

「それで、君は……コスプレイヤーか何か?」

 銀髪の少女をじろりと見た。

「こすぷ? なんじゃ、それは」

「子どもがコスプレなんてしないか」

「子どもじゃないぞ!」

「どう見ても子どもだろ。その髪色以外は」

 髪色は、高齢者によくある色だろうとは思うが、それよりも透き通っていて、でも頭皮が見えるわけでもなく、サラサラと流れて……ないけども。

 おかしい。

 今日は風が強い日なのに、髪がなびいてない。俺が受けるはずの風も全くない。

 そして、ずっと疑問に思っていたが、少女は五センチほど浮いている。人って浮くと、足の指や甲が自然と下に流れるんだなと、関係ないことを考えてしまった。


「そろそろなんじゃが。おかしいのう。時間が戻らん」

「時間?」

「時間を止めているのじゃ。少ししか止められなくてな、もう戻っていてもおかしくないんじゃが……ん!」

 その時、空気が急に震えた。

 空気は震えているのに、地面や建物は全く揺れていなかった。

「今度は何!」

 俺がそう叫ぶと、鉛のように重たく、心に響くような声がした。

「運命をねじ曲げた」

 とても低い聞いたこともないような声が、空気を震わせているのか。

「これは」

 ノジャ……名前を聞いていないので、少女を勝手にそう呼ぶことにした。

 ノジャが何かを話す前に、その低い声は話を続けた。

「それは必要がなくなった。いらない。私の世界には不要」

 声が大きくなり、俺は耳を手で塞いだが、何の役にも立たない!

「異界のモノ共々!」

 ガタンっという音に俺は驚き、目を瞑った。


 再び目を開けると、俺の目の前には木がたくさん生えていた。街並みはどこに行ったんだ。

「何なのじゃ」

 ノジャは相変わらず隣にいるようだ。

 俺はノジャの言葉を聞きながらも、辺りを見渡した。

 ……木しかない。他にあるとすれば、茂み。

「さっきから、何が起きているんだ」

 俺は、ため息をつきながら、気だるくなり地面に体育座りした。


 失敗した。

 地面はほんのりと濡れていた。草に付いた雫をスラックスが思いっきり吸っているのがわかる。

「冷たい……」

「濡れてる所に座るからじゃよ」

「どうでもいいや。誰かこの状況を説明してくれよ」

「すまんのじゃ」

 謝られても、状況が全くわからないので、許したら良いのか許さなくて良いのかわからない。

 ただ一つわかるのは、ここには全く見覚えがないことだ。森や林には来たことがないし。

「とにかく、森だか林だかから、出ないとな」

 俺は濡れてしまったスラックスが気持ち悪いと思いながら、立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ