第13話 ブリュア、代理となる
今日は、もう休んだ方が良いとリチャイナに言われて、俺とノジャは部屋で夕食を取り、寝ることにした。
空いている部屋がないから、ノジャと同室になった。
ベッドで横になっていると、ノジャに話しかけられた。
「巻き込んで、すまないのじゃ」
「俺が異世界にいるのは、ノジャのせいではないだろ」
「そうじゃが……」
ノジャはベッドに座りながら、俺をじっと見ている。
「わしと一緒にいたから、こんな事になったのかと思っての」
「もし」
俺は起き上がり、あぐらをかいて、ノジャを見た。
「そうだったとしても、ノジャは悪くない。俺はそう思うよ」
本心だ。
ノジャと出会ってから色々な事が起きたが、俺はノジャに助けられている。
時止めというので、トラックから守ってくれたのだ。
お礼をすることはあっても、責める必要はないと思う。
「伊吹。すまないのじゃ」
ノジャは頭を下げた。
「気にすんなって。いつもの呑気な感じでいけよ」
「……わかったのじゃ」
ノジャは顔を上げて、少し申し訳なさそうに笑った。
朝になり、寝ぼけながらも、運ばれてきた朝食を腹に入れた。
ノジャは昨日とうってかわって、元気そうだった。
「やあ。おはよ〜」
朝食を終えて、部屋でノジャと話していたら、リチャイナが部屋に入ってきた。
「おはよう。眠そうだな」
「僕は朝が苦手なんだよね〜。それで、杏奈とリンは手が離せなくなったみたいだから、とりあえず代理」
先ほどから、ずっと気になっていた。リチャイナの後ろに隠れているつもりなのかもしれないが、リチャイナよりかなり背が高くて、はみ出ていた。
青く長いパーマのかかった髪。腰までの長さだ。右側だけ水色の仮面を付けている。全身が真っ青だ。肌は健康的なのに、服も髪の毛も瞳も青だと、不健康に見えるんだなと感心した。
「私はブリュア。よろしく。代理という事だが、本当に私でいいのだな? リチャイナ」
「いいよ〜。目立つし」
「目立って良いのかはわからんが、頼まれた」
ブリュアさんの声は、思ったよりも低く、がっしりとした体躯から男性だと考えた。
「僕は仕事がたんまりあるから、行くね〜」
リチャイナはそう言って、手を振って部屋から出ていった。
残ったブリュアさんは、俺たちの近くに歩いてきた。
近づくとわかるが、すごく背が高い。迫力がある。
リチャイナと俺は背が同じくらいの175センチだろう。それと比べると、二メートルはあると思った。
「リンの考えで、私ならモンスターにも、ノジャという少女を襲う刺客にも対応できるだろうということだ」
「わしがノジャじゃ。よろしくのう。助かるのじゃ」
ノジャはお辞儀をした。
「それと、耳に入れておいてやりたい事があるんだ」
「何ですか?」
「ノジャを狙う刺客を一人捕まえた」
「え! 捕まえられたのかの?」
ノジャは身を乗り出した。
「捕まえたんだけどね〜。自爆というか、多分捕まったら爆発するような何かが施されていたんだろうね。殺されてしまった」
「そうなのか……。なんとむごい事をするのじゃ」
ノジャは拳を握って、震えた。
「……そうだね」
ブリュアさんは少し笑った。
俺はそれを見て、ゾッとした。なぜか寒気が走ったのだ。
いや、ノジャの発言で、薄ら笑いを浮かべた意味がわからなかったのだ。




