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第1話 伊吹、助けられる

 金と銀は小学生にとっては特別なものだ。金と銀の折り紙は宝物だし、でもすぐ使ってなくなる折り紙の筆頭でもあった。金賞と銀賞はやっぱり取りたいし、銅賞だとちょっぴりしょっぱい。


 そんな事をぼんやりと考えながら、俺は歩いていた。身長も体格も顔の容姿も、普通の男子高校生の俺は、補習で居残りしている友人を置いて行き、軽やかに自宅へと向かっている。

 今日は誕生日で、大好きな唐揚げが待っているのだ。

 これが楽しみで今月は過ごしていた。うちは唐揚げになるのがとても稀だ。母さんが作るのが面倒だからと言っていた。


 信号待ちをしながら、スマホで大好きな動画配信者のブログを見ていた。異世界からやってきたという設定の動画配信者で、とても面白い人なのだ。

 信号が青になったので、横断歩道を渡ろうとした。

 その瞬間、キィーという高音が鳴り響き、その音の方向へ顔を向けると、大型トラックがこちらに向かってきていた。

 ――死ぬ!

 そう思った時、目を瞑るのは、よくある事なんだろうか。体がすごい速さで動けば、避けられるのになと、今にも轢かれそうになっているのにやけに冷静だった。


「おぬし」

 痛いのだけは勘弁してほしい。

 あと、後遺症が残るくらいなら、いっそ死んだ方がマシ……いや、死ぬよりは生き残った方がいいよな。

 あーあ、今日は唐揚げだったのに。

「おぬし! おーい!」

 ……まだ、轢かれないのか。走馬灯も流れないし、何が起きてるんだ。

「おぬし! 聞こえておるのか!」

 さっきから、轢かれそうになってる人に対して何なのだ。高い声で大きな声を出さないでほしい。うるさいなあ。

「え?」

 俺は何も起きないため、知らない声が聞こえる中、目を開けた。

 大型トラックが俺の目の前で止まっている。当たっているような気もするが、ギリギリ当たってなさそうな所にトラックがある。


「おーぬーしー!」

 いい加減うるさいので、声がする後方に体を向かせた。

 そこには、銀の長い髪の小さな少女が立っていた。太い眉に、大きな瞳の少女だ。

 さらに、全てが白い袴のようなものを身にまとい、全身の色が薄い。

 腰に手を当てて、仁王立ちしている。

「やっと、こっちを向いたのじゃ!」

「はあ……」

 俺は何のことかわからないため、少女を見つめるしかなかった。

「なんじゃあ。腑抜けた顔をしよってからに。わしが、直々に助けてやったんじゃぞ?」

「助けた? 何から? というか、君は誰?」

 俺は少女の言葉に感じた疑問を全てぶつけた。

「あのデカブツ」

 少女は、大型トラックを指さした。

「もう少しで、おぬしに体当たりする所だったのじゃ。それを、助けてやったのじゃよ」

 ふんと、鼻を鳴らして、再び腰に手を当てた。

「そろそろ、そこから離れんと、結局体当たりされるから避けるのじゃ」

 俺は訳もわからないまま、横断歩道から避けて、歩道へと戻った。

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