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5.タカマサ レベッカに会う


 翌日、タカマサは校長室の前に居た。

 朝、ヒューズが部屋に呼びに来て、一緒に登校をしたが、編入生と気づいた先生らしき人物が校長室へ行くようにと、案内してくれたのだ。

 

 制服は部屋にあった物を着て、他の生徒と何も違わないのに、なぜ気づいたのかは分からない。もしかしたら名簿の様な物に特徴でも書かれているのだろうか。だとしたら、何から何まで、アリシアは設定を行っていると言うことになる。


 そんなことを考えながらタカマサは校長室への入室許可を待っていた。

 何でも、校長は部屋にはいるが別の仕事をしているそうで、先に先生が入って、来たことを知らせてくるとのことだった。


 そんな理由で、数分待っていると、校長室の扉が開き、先ほどまで自分を案内してくれていた若い女性の先生が顔を覗かせた。


「タカマサ君、校長先生がお待ちだ、入り給え」

「はい」


 タカマサは促されるまま校長室へと入った。

 校長室は質素だが質の良い物が取りそろえられており、校長の品の良さが伺えるような室内であった。床には少し沈むくらいにふかふかな絨毯が敷かれ、大きな机を挟むようにソファが置かれている。そしてその奥にの執務机に校長と思われる初老の人物が座っていた。顔にはいくつもシワがあり、いかにも、な人物であった。


「君がタカマサ君だね。遠慮せず、掛けてくれ給え」

「あ、はい、タカマサ・タナカです」


 部屋に入って立ったままのタカマサに対して、校長は座るように促した。

 タカマサは促されるまま、ソファに腰を下ろした。それを見て、校長も執務机から立ち上がり、タカマサの対面に腰を掛けた。


「編入おめでとう」


 登校日が一日遅れた事に何か言われるかと思っていたが、校長の口から出た言葉は思っていたものとは違っていた。


「編入したと言う事は、我が校の生徒だからね、何でも相談すると良い。これから困難や超えられない壁にぶつかることもあるだろう。その際は、共に学ぶ友人や私達教師を頼りなさい。そうすれば一人で悩むよりも良い結果が出ることがあるかも知れないからね。これからの君の学園生活に多くの学びがあることを願っているよ」

「はい、ありがとうございます」


 この校長は一日登校日が遅れたことには何も言わず、むしろ今後の事に関して言葉を投げかけるような優しい人物であると、タカマサは認識した。


「あと、王太子殿下などもいらっしゃるが、この学園では皆平等だ。下手にへりくだる必要もないからね。誰に対しても一人の人間として接することができるから安心してくれていい」

「あ、そうなのですね。承知いたしました、心掛けていきたいと思います」


 どのような場所なのか、どのような国も分からないが、この学園がかなり特殊で、国にとって価値のあるものには違いないと、タカマサは思っていた。でなければ、身分の関係がない環境など許されることはないと考えていた。


「うん、君はいい目をしているね。良い生徒になってくれそうだ。期待しているよ」

「ありがとうございます。今後も励みたいと思います」

「うん、頑張ってね」


 そう言って校長はソファから立ち上がり、タカマサもそれに合わせて立ち上がった。

 側に立っていた若い女性の先生に促されるまま、扉へと向かい、振り替えて一礼をして、タカマサは校長室を後にした。



 ***



「いかがでしたか、タカマサ君は」


 タカマサが校長室を去ったあと、若い女性は校長室に戻り、そう尋ねた。

 

「うん、良い生徒だと思うよ。…しかし彼は何者かね?」


 校長はタカマサのことを良い生徒だと言いつつも不思議そうな顔をしている。


「名簿上からは、遠方の地方の出で、編入試験満点の天才ということしか」

「そうだよね。うちの編入試験はかなり難しいから満点なんて取れるはずないのに取ってしまっている。かのレベッカ嬢でも多分不可能だろうね」


 この学園で成績トップを走るレベッカですら、編入試験で満点を取ることは不可能だという。それほどまでに、この学園の編入試験の難易度は高く設定されている。しかし、タカマサはそれを満点で通過したと言うことになっている。タカマサの能力に対して、女性教員は驚嘆している様子だった。

 

「ええ、とんでもない生徒ですね、彼は」


 しかし、校長が気になっているのはそこではない。もっと別の所。校長自身が試して不可解に思っていることだ。

 

「うん、でもそれだけじゃないんだよ。先ほど、彼の能力などを探る為に色んな催眠魔法をかけて見たんだけどかからなかったのだよ」

「…かからなかった?」

「うん、防がれたでも、破られたでもなくね」

「…おかしいですね。そんな現象聞いた事がありません」


 魔法がかからない。そんな現象は女性教員も、校長も体験したことはなかった。防御魔法で防がれたり、催眠を解く魔法で破られたことはあっても、そもそもかからないと言う事はありえなかった。

 

「彼は、君のクラスだったよね。少し気に掛けてもらえるかな」

「はい、分かりました。閣下」


 故に、校長はタカマサが特異な人物である可能性が高いと判断し、タカマサの担任となる女性教員に、タカマサの監視を暗に命令した。



 ***


 

 タカマサは校長室を去った後、どこに行けば良いか分からなかったため、適当に学園の中庭に来ていた。赤色の綺麗な花や、百合の様な白い花が咲いており、綺麗に整えられていた。


(あ~、どこ行けばいいかとか聞いとけば良かったなあ。何もわかんないなあ、お?)


 今後どうするかについて、考えながら歩いていると、タカマサの目に一人の人物が目に入った。今は授業中なのか、生徒達は皆どこかへ引っ込んでしまっている。実際タカマサは校長室からこの中庭まで生徒には一人も会っていない。しかし、その生徒らしき人物は中庭の一際目立つベンチの上に座り本を読んでいた。

 タカマサの目がその人物で止まったのは、自分以外の生徒がいるとは思っていなかったこともあるが、大部分を占めていたのはその姿形が原因であった。

 

 絹の様な藍色の髪は陽の光を反射し、綺麗に輝いている。長いまつげを少し伏せ気味にしながら、髪と同じ深い藍色の目を手に持つ本へと向けていた。アリシアなどよりもよっぽど女神っぽい、とてつもなく美しい人物がそこに居たのである。


(とんだ美人だな。制服も着ているから、生徒だろうけど…)


 そんなことを思っていながら、その女生徒を見ていると、不意に、彼女の目が本から外され、タカマサの方へと向いた。タカマサ自身も、彼女を見ていたので、必然的に目が合うことになった。



「…こんにちは」

「…こんにちは、見かけない生徒ね」


 何も声を掛けずに見ているのは不審者ぎみているので、タカマサは一般的な挨拶をした。女子生徒は表情を一切変えず、タカマサに挨拶を返した。


「あ、ああ、編入したばかりだからな」

「編入…、ああ、満点で合格したとかいう?」


 編入試験という言葉を聞いて思い当たったのか、女子生徒はタカマサへの質問を投げかけた。


「そう…か、うん、そうだよ」

「素晴らしいことね。編入試験満点なんて聞いた事ないわ。あなた、すでにこの学園では有名人だからね」

「え、そうなのか? そんなに話が出回ってんの?」

「ええ、何せ満点ということだから」

「へえ、そうなのか、そんなに知られているとは知らなかった…」


 思ったよりも自分は有名になっているらしい。

 アリシアの設定は少しやり過ぎだったみたいだ。


「あ、そう言えば、君の名前聞いてなかった。見たところ生徒だろうけど、名前はなんて言うんだ?」

「…そうね、時間の問題だものね」


 ふと、名前が気になったタカマサは彼女にそう問いかけた。彼女は少し悲しげな顔をしながらも儚げに微笑んで言った。





 

 「私はレベッカ。()()()()()()()()()()()()。この学園では悪名高い愚かな女よ」


 


 

 


 


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