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タカマサ 学生になる


 真っ白だった視界が徐々に開ける。

 ぼんやりと、うっすらと、木製の天井が見える。


 

 そして、感覚も戻り、何かの上に横なっている。ふかふかで、とても気持ちが良い。

 

(なんだこりゃ、まるでベッドと掛け布団のような…、いや、ベッドと掛け布団だわ)


 そう思いながらタカマサは横になっている自分の体を起こした。

 どうやら、どこかの部屋にいるらしい。

 部屋には簡易的なベッドと、簡易的な机と椅子。そして大きなバッグと制服らしきもの。

 自分は半袖半ズボンの服を着ていた。


(…とにかく、自分の状態でも調べるかぁ)


 タカマサは自分の体に魔力を通し、自分の体の状態や、魔力量などを確かめていく。


(アリシアの言っていた通り、変化はなさそうだな。さて、お次はどこに居るのかと言うことだな。貰った能力使えば大体分かるかね)


 魔力や、自分の筋肉量やその他の能力なども特に変化はなかった。魔法なども特に問題無く使えそうだと、タカマサは思っていた。

 

 タカマサはアリシアに貰った能力を試そうと、魔力を目に集中させる。特に理由はなく、こうすれば世界を見渡せるのかもと思って直感的にやったことだった。

 タカマサの直感は当たっており、視界が切り替わり、自身を三人称で見ているような視点となった。


(おお、これはどうすれば引きで見れるんだ? …こうか?)


 感覚的に、魔力を操作し、俯瞰的に自分を見ている視界を徐々に上へ上へと上昇させていく。さながら拡大して見ていたものをどんどん引きで見ていくように。

 徐々に、視界が引いていき、建物の天井を突き抜け、建物の全貌が見える位置まで視界を移動させた。

 タカマサは宿屋だと予想していたが、視界に捉えた建物は明らかに宿屋の大きさではなく、どちらかと言えば集合住宅の様であった。

 さらに、その位置で辺りを見渡すように操作すると、若い人達が多く歩いており、奥に学舎のような建物も見える。


(…なるほどね。大体把握)



 どうやら自分は、何しかしらの教育機関いるらしい。それは辺りを歩いていた、同じ服を着た年頃の子女達の様子から、推測される。そして学舎への距離と、自分の部屋を鑑みるとおそらく個々は寮のようなところだろう。

 

 大体の状況を理解したタカマサは視界を元に戻し、その後、部屋に置いてあった、大きな鞄を開くことにした。


 部屋の隅に置かれている、成人男性がうずくまればギリギリ入れそうなほどの大きな茶色の鞄。

 金具で閉められているそれを、魔法を使って、タカマサは開封した。


「これは手紙と、服か」


 鞄の中には一通の手紙と、大量の服が入っていた。服については恐らく、アリシアが気を利かせて召喚したものだろう。手紙に関してもアリシアが準備した可能性もあるが、性格的になさそうだと思い、タカマサは手紙を拾い上げて中身を読み始めた。


『タカマサ・タナカ殿

  貴殿は王立第1学園の編入試験に合格為されたので、編入を認める。

  今後は第1学園の生徒として自覚を持ち、励むように。

  我が校の規定は下記の通りである

  ………………………………』


 手紙には学園への入学を認める旨と、学園の規定が長々と書かれていた。

 タカマサは規定を最後まで読むなどと言うことはもちろんせず、手紙を、机の上に置いた。

 そして椅子に座り、思考を巡らせる。

 

 タカマサ・タナカという、いかにも日本な名前は、すでに知られているらしい。

 どうやら自分という存在は以前からこの世界に存在していたと言う認識になっているらしいと悟ったタカマサは椅子に座って今後の計画を立て始める。


(どうしようかなぁ。なんか生徒になってるし、編入するのいつかわかんねぇし。誰が魔王になりそうなのかなんて情報ゼロだし。面倒くさいなぁ)


 情報が少なすぎて何をすれば良いのか分からない。今後どう動くべきかも検討がつかない。


(…一旦、寝るか)



 全てがめんどくさくなってきたタカマサは、ひとまず自分を労ることにし、ベッドの中に入り、目を閉じた。異世界とは思えない程、ふかふかのベッドと布団。日本に帰りたいと言っていた自分に気を遣ってアリシアが変化させたのだろうか。

 とにかく、気持ちよく、ぐっすり寝れそうだと思ったタカマサはもぞもぞと顔を布団にうずめた。



  


 ***




「…い! …い! …ろう!?」



 ドンッドンッとドアを叩く音が部屋に響き渡る。ドアを叩いている人物は余程怒っているのか、大きな声を出しながら必死にドアを叩いていた。


「…んあ?」


 何度も何度もドアを叩く音を聞いて、熟睡してたタカマサは目を覚ます。

 状況は理解出来ていない様で、不思議そうにドアを眺めながら。ぼやぼやと目を擦っている。


「おい! タカマサ・タナカ! 居るんだろ!」


 寝ぼけながらもドアの外の声ははっきりとタカマサの耳に届いていた。

 どうやら自分を尋ねてきているらしいと知ったタカマサはのろのろとベッドから降り、ドアの方へと向かった。


「おい! 居るのは分かっているんだぞ! 開けてくれ!」

「はいはい、今開けるんで、ちょっと待って下さい」


 タカマサはドアの前の人物に声をかけ、ドアを開けた。


「はあ、やっと開けてくれたか」


 タカマサの目の前の人物は余程疲れたのか、少し汗を書きながらため息をついている。

 呆れた表情で、タカマサを見ながらやれやれと首を振っている。

 その様子に、タカマサは少しいらつきを覚えた。随分と偉そうな、鼻につく青年だ。


「…えっと、どちらさまですか?」


 タカマサは少し気を悪くし、迷惑そうに尋ねた。


「…私はヒューズ・ストーン! 栄えあるストーン家の次男だ!」


 短髪に綺麗に整えられた碧色の髪と碧色の目。タカマサより小柄で華奢な彼はヒューズと名乗った。しかし、名乗られても、この世界に来たばかりのタカマサには誰だか分からない。

 ストーン家とは恐らく貴族家なのだろう。彼の威勢の良さと傲慢さから察するに、そこそこの家であるようだ。

 


「はあ、そうですか。私はタカマサ・タナカ。何のご用でしょか?」


 熟睡を邪魔され、挙げ句の果てに偉そうな少年に絡まれる。

 タカマサは少しイライラしていた。


「タカマサ! 君は偉そうだな! しかし、そのような気概! とても良い! 私と共にレベッカ様の為に尽力しようではないか!」




「……は?」



 ヒューズがタカマサに放った言葉は全く意味が分からず要領を得ないものであった。

 




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