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2.タカマサ 女神と話す


「……」


 タカマサは目を覚ました。

 辺りは真っ白で、自分の姿はおぼろげでかすんでいる。

 見覚えのある景色。

 異世界に転移する前にも、タカマサはこの場所に来ていた。


 タカマサがその場所がどこなのかを認識すると、目の前に、幼女が現れた。


「タカマサ! よくやったぞ!」

「アリシア様、約束通り、世界を救ってきましたよ」


 女神アリシア。タカマサが転移した世界の創造主であると同時に、タカマサを転移させた人物でもある。

 威厳なんて微塵も感じない幼女の姿をしているが、紛れもない、女神である。


「うむ! よくやった!」

「では、約束通り、家に帰してください」

「むぅ、世界を見てた時にも思ったがそなたのその家に帰りたがる癖は何とかならんのか? 普通は大陸一番の美女と裕福な生活を与えられれば、迷うまもなく受け取るのになぁ」

「…馬鹿言わないでください。俺には血のつながった家族が居て、俺を待ってるんですよ? …それに俺みたいな怠け者は彼女みたいな、綺麗な人にはもったいないです」

「怠け者とは言いつつも、世界を救ったではないか」

「そりゃ、死ぬか救うかしかなければ頑張るでしょうよ。でももう救ったので、俺は怠けたいんですよ。快適な日本の我が家で。ですので、俺の体を異世界に送った時みたいに、ちょいちょいっといじって、何もしなくても生きていけるようにしてください。あと、無限に金が湧く財布を下さい」


 女神アリシアは目の前のタカマサにあきれ果てる。異世界では誠実で使命を持った好青年として振る舞って居たので、少しは変わったかと思っていたが全く変わっていなかった。基本的に働きたくない、動きたくないという人物で、面倒ごとを何よりも嫌う。そんな性格の持ち主がタカマサであった。

 

 そのため、アリシアはこれからタカマサに頼むことを非常にためらっていた。

 しかし、言わなければ、自分の世界が危うくなる。可愛い自分の世界の住人達を見て見ぬふりは出来なかった。


「…タカマサ、帰りたがっているお主には申し訳ないのだが、そなたには、わしの世界をもう1つ救って欲しいと思っておっての…」

「…え?」


 タカマサは思ってもいなかった、アリシアの言葉に理解が出来ないと言った顔をする。

 もう一回世界を救って欲しいと言う。話が違う。


「わしの世界が1つ滅びそうなのじゃ。わしの為と思って、救ってはくれぬか?」

「…え? いやいや、帰れないんですか? 俺」

「まあ、わしが戻そうと決意しなければ…」

「…ってことは、ほぼ無理じゃないですか? あんた、俺を転移させた時もほぼ無理矢理だったでしょ…」


 日本から異世界に転移するとき、絶対に行きたくないと言ってもアリシアは首を立てに振らなかった過去がある。嫌だと何度もわめいたが、彼女は最終的、タカマサを強制的に転送した。

 それを思い出したタカマサは、女神アリシアの説得は早々に諦め、投げやり気味に、鼻をならした。


 そんな様子を見たアリシアは少しおろおろしながらも、事情を説明する。 


「…そ、そんなに心配せんでも、次の世界では魔王を倒すとかではないし、そなたの能力も今のまま送るから安心してよいぞ…?」

「…魔王がいないなら何で滅びそうなんだよ」


 もはやほぼ投げやりになり、諦めの表情を浮かべているタカマサは、アリシアにそう言って尋ねた。しかし。


「そうじゃな、これから魔王になりそうな奴がいるから、そいつをどうにかしてほしいって感じじゃな」


 自身の世界の少し先を見ることのできるアリシアはそう言って答えた。


「…ふぅーん、そいつを倒せばいいわけ?」

「いや、そいつも我が世界の住人なのでな、出来れば殺して欲しくはないのぅ」

「無理じゃん。どうやって救えってんだよ」

「まあ、行けば分かるからの。今回、世界を救ってくれたお礼に、わしの力を少し分けておく。世界を見渡せる目じゃ。人捜しや、物探しに使うと良いぞ」

「世界を見渡せる目ねぇ、ワイヤレスイヤホンとかなくした時に役立ちそうだね」

「そうじゃのぅ。この力は元の世界に戻っても使えるようにしといてやるからの。じゃあ、すまぬが行ってきてもらえるかの?」

「……はい」


 アリシアの頼みは聞く以外に選択肢がないと思っているタカマサは全てを諦めた顔で、頷いた。

 タカマサの頷きを見たアリシアはパチンッと指を鳴らした。

 その瞬間、タカマサの下に大きな魔法陣が浮かび上がり淡い光を発し始める。


「あ、そうじゃ、そなたの魔法や戦闘力は少し高すぎるのでの、その辺も気をつけての」

「…え? 俺、一人で行動できねぇの?」


 てっきり、以前の様に仲間も持たず、一人で行動できると思っていたタカマサは疑問を投げかけた。

 アリシアの言う感じでは、周りには誰か居る可能性が高い。でなければ、高すぎる能力を気をつけろなんて言葉は出ないはずなのだ。つまり、自分の能力が見られる環境に送られるということ。


「まあ、行けば分かるからの。じゃあ、頑張っての!!」


 しかし、説明がめんどくさくなったのか、アリシアは以前の様に問答無用で送り出そうとする。

 

「え、いや、おい、ちょっとそこのとこ詳しく…!」


 どんな世界に行くのか、どんな環境に行くのか。そう言ったことを尋ねようとしたタカマサ。

 しかし、タカマサは言葉を最後まで紡ぐ事なく、強烈な光に包まれた。

 

 



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