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第四話 俺の美少女幼なじみとの思い出①

第四話 俺の美少女幼なじみとの思い出①



 家のベッドに寝転んで俺は考える。


 春原の八方美人な性格を改善する約束をしたとはいえ、一体どうしたものか。


 誰に対しても好かれるような態度を取るようになったのはいじめられないためだ。春原の努力の甲斐あっていじめられなくなって友達もできた。


 それと引き換えに、本来の自分と異なる自分を演じることにストレスを感じるようになってしまったが。


 原因や現状の整理をしてもそれ以上の進展はない。


 俺一人で考えてもいいアイデアは浮かびそうにない。


 明日、春原と一緒に考えるか。


 面倒なことを後回しにしたところで突然電話が鳴った。


 携帯の画面には見慣れた名前。なんの用かと思ったがとりあえず電話に出る。


「もしもし」


「こんバッファロー、ミッチー元気?」


電話からは元気な、いや元気すぎる意味不明な挨拶が響いてきた。


「普通」


 淡々と俺は答えた


「うん、元気そうだね!」


「琴音、俺は普通と答えたんだが?」


「長年の付き合いだからね。声聞けば何となくわかるよ」


「そっか。で、何の用だ?」


「今からミッチーの家行っていい? 一緒にご飯食べよ」


「いいよ」


「ありがと、20分くらいでそっちに行くね!」


 要件を伝え終えた琴音は電話を切った。


 佐々木家と竜胆家は家が近く、俺と琴音は幼なじみである。お互いの両親が共働きであるため、片方の両親が遅くなるとき、もしくは両方の両親が遅くなる時はほとんど一緒にご飯を食べていた。


 でもそれは小学生までの話。流石に中学生にもなれば家に一人でいても平気だし、身の回りのこともできるようになるから、一緒にご飯を食べる頻度は減った。いや、それよりも大きな理由があるだろう。


 単純な話、思春期である。中学生にもなれば男女の意識が芽生え何となく会うのが憚られる。

それでも今まで俺と琴音の関係が続いているのは琴音のおかげだろう。


◆◆◆


 中学のとき、仲が悪くなったわけではないが二か月くらい会っていない時期があった。廊下ですれ違っても何となく気恥ずかしくてお互いに声をかけなかった。小さいころから仲良くしていた琴音との関係の終わり方にあっけなさを感じていた。まあ、男女の幼なじみの関係なんてずっと続くわけがないだろう、と納得していた。


 疎遠になってから半年たったころのある日の朝、俺は風邪をひいていた。あいにく、両親とも仕事で帰ってくるのが遅い日だった。


 ベッドから身を起こすと、風邪によるダルさや寒気、眠気を強く感じた。額に触れると39℃くらいあると思うほどの高熱が手の平に伝わってきた。こんな状況でも両親がいないから家事を全部自分でやらなければならない。学校に欠席の連絡をした後は家事から逃げるようにもう一度ベッドに潜った。


 再び目を覚ましたのは昼過ぎだった。起きてぼーっとしているとお腹が鳴った。風邪で食欲が低下しているとはいえ、お腹は空いた。自分で作る気力がないから湯を沸かしてカップラーメンを食べることにした。


 お湯が沸くのを待つ間、体温計で体温を測る。


 ピピっと音が鳴って脇から体温計を離すと、39.2℃だった。


 やっぱりひどい熱だな……。


 改めて自分の状況を把握したことでダルさが増した気がする。


 お湯をカップラーメンに注ぎ3分待つ。時間が経ったところで麺をすする。が、一口で箸は進まなくなった。


重いな……。


 無意識に選んだカップラーメンはこってりした豚骨ラーメンだった。風邪をひいたときに食べるようなものではないと思いながらも無理矢理腹に詰め込み完食した。


 ご飯を食べて満腹になり、俺はまた眠った。


 次に目を覚ましたのは午後5時くらい。インターホンの音で起きた。


 仕事が早く終わって親が帰ってきたのだろうか。いや、親なら自分の鍵で家に入る。誰が来たのかという好奇心もあり、ダルイ体を動かしてインターホンのディスプレイを見る。


 映っていたのは琴音だった。


 俺は息が詰まった。学校で見かけはしたが、半年話していない。今まで会っていた年月に比べればたった半年である。それでも俺は4,5年ぶりくらいに会った気持ちになった。それだけこれまで接してきた時間が自分にとってかけがえのないものだったんだろう。


 俺は少し上ずった声でインターホンに出る。


「は、はい」


「やあやあ! ミッチーだね? 久しぶりに会いにきたぜ」


 会ったころから変わらない元気な、いや元気すぎる音声が流れる。もはや近所迷惑なのではないかと考える。


「会いに来てくれたのは嬉しいんだが、今風邪ひいてて、移しちゃ悪いからまた今度にしてくれないか?」


「何を言っているんだね、ミッチー。風邪を引いてるミッチーの看病に来たんだよ!」


 琴音はやれやれと言いたげな様子で自分の持っているポカリや食材が入った袋をインターホンのカメラに見せつけるように持ち上げる。


「そっか、ありがとな。今開ける」


 俺は玄関に向かいながら考えていた。どんな顔をして会えばいいのだろうか。何を話せばいいのだろうか。疎遠になっていたことを謝るべきだろうか。


 恐る恐るといった様子で玄関の扉を開ける。


 俺の目線の下には薄い橙色の髪の小柄な少女がいた。


 その少女が俺と視線を合わせるために上目づかいになると、短く二つにまとめた髪が揺れ、八重歯を覗かせながらにっこり笑った。


 前と変わらない琴音が、太陽のような笑顔を浮かべて俺を迎えてくれた。


 家に来たのは琴音のほうだが、なんだか自分が迎えられた気がしていた。


「やっほ、ミッチー。顔色からしてだいぶお疲れのようですな。色々世話焼いたげるから中入れて」


 自分の不安が何だったんだと思うほど琴音はいつも通りだった。俺は呆気に取られて無言で半歩身を下げる。


「おっ邪魔しまーす!」


 誰もいない家に琴音の溌剌とした声が反響する。


「いやー、久しぶりにミッチーの家に来たけど相変わらずオシャレだね。家具も見たことないのが多いし。でも、家の構造は変わらないね」


「よっこいしょ」とリビングに持ってきた荷物を置いてから琴音はそう言った。


 俺の両親は家具やインテリアが好きで凝っているし、時々入れ替えている。


「家の構造なんて変わらないだろ」


「ミッチーのお父さんとお母さんは部屋の内装にこだわりがあるから、あたしが知らない内にイノベーションしてるかなって思ったんだけどね」


「馬鹿か。それを言うならリノベーションな。俺の両親は革新的な技術や発想で社会を変えるなんてことはしてない」


「そう、リハビリテーションって言いたかったんだよ」


「違う、リノベーションだ。両親とも健康だ」


「そうそう、それ。インビテーション」


「全然違う。イノベーションだ。俺の両親は革新的な技術や発想で社会を変えている」


「……」


 琴音は無言でにやにやしながらこちらを見ている。


「ち、違う。リノベーションだ。俺の両親は技術革新も招待もしていない」


 俺は耳を真っ赤にして慌てて訂正する。


「ミッチーはバカだねー」


「うるさい」


「おやおや~、ツッコミにキレがないですぞ?」


 こちらを馬鹿にした表情で琴音は俺を下からのぞき込む。


「チビ」


 俺は端的に琴音の悪口を言った。


「ふがー! 小学生のときはミッチーのほうがこんなに小っちゃかったのに! ちょっと背が伸びたからって調子に乗らないでよね!」


 琴音は自分の手を胸の前に水平に持ってきて俺が小学生のころの身長を表現する。


 低身長という自分のコンプレックスをいじられてぷりぷり怒っているが、小柄な身長から小さい子が騒いでいるだけに見えて全く迫力がない。


「いや、俺の身長はそんなに低くなかった。少なくとも琴音よりも身長が高かった」


 女子のほうが成長が早いから身長が伸び始める時期も早いが、小学校高学年のころにはもう琴音の身長を抜かしていたはずだ。


「いやいや、小学生まではあたしのほうが背高かったよ。抜かされたのは中学のときだよ」


「いーや、中学に入る前に俺が身長を越してたね」


「いやいやいや小学生の間はあたしのほうが身長高かったよ!」


お互い譲れない姿勢を見せて睨みあう。


「「あははははははは」」

 

 睨みあっていたがお互いのしょうもない争いについ笑ってしまった。


 お互いの笑いが収まり落ち着いたころ、琴音が言った。


「インビテーションってえっちだよね」


「は? なんで?」


「だって、淫靡、テーション➝淫靡、テンション➝淫靡なテンション、だよ?」


「やっぱりお前は馬鹿だな。インビテーションは招待って意味だ」


「なるほど、つまりえっちなお誘いだね! ミッチーはあたしとそういうことがしたかったんだね」


「全然違ぇよ! しかもインビテーションって言ったのは琴音だろ!」


「まあ、そういうことにしといてあげるよ」


「うぜーーーー!」







読んでいただきありがとうございます!


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評価やブックマーク、作者の他作品を読んでいただけると大変うれしいです!


次回の投稿は5月6日です!

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