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 第十五話 美少女とゲーム大会

 第十五話 美少女とゲーム大会



 最初のステージとして最もオーソドックスな洋館を選択する。


 レース開始のカウントダウンが始まる。


 3、2、1、GO!


 CPUを含めた12人のキャラクターが一斉にスタートする。俺とCPUはスタートダッシュをきれいに決めていきなり琴音と春原に差をつけた。


「ミッチーなんでスタートからいきなりフルスピードで走れてるの⁉」


「こういう技もあるんだよ。後で教えてやるよ」


 異形の化け物やゾンビがひしめく洋館から脱出することがモチーフなのは変わらないが対戦モードでは先に3周したプレイヤーが勝ちになる。


 ゾンビの攻撃をかわしつつ、道中にあるダブルアイテムボックスを回収する。このアイテムボックスは何が出てくるかわからないランダム仕様だ。アイテムボックスが1つだけのものと2つあるものがある。

tウイルスと薬草を手に入れた。tウイルスは体力が半減する代わりに車のスピードがしばらく上昇するアイテムだ。回復アイテムと合わせれば使い勝手がいい。


 久しぶりにプレイしたが実に素晴らしいゲームだ。対戦モードでありながらコースはストーリーモードをなぞったものであり、ざっくりとだがストーリーを振り返ることができる。高度なグラフィック技術が使われているからレースゲームとしての疾走感もありながらホラーゲームの要素も楽しめる。


 順調に走り進めて余裕が出てきたからテレビに分割されて映る琴音と春原の画面を見る。


「ちょっと爆弾投げないでよ! 当たったじゃん!」


「そういうゲームでしょ」


「あと、さっきからいやらしいところにバナナの皮置きすぎ! スノハラのせいで全然気持ちよく走れない!」


「だからそういうゲームでしょ。あなたが単純なおかげでアイテムを有効活用できているわ。っときゃぁ」


 琴音と会話してから集中が切れたのか蟹のゾンビの攻撃を受けて車の体力がなくなる。全身不気味な色をしてただれた蟹のゾンビに爪を振り下ろされる短いアニメーションが入った。画面いっぱいに映るグロテスクな蟹のゾンビは春原の恐怖心を煽るには十分だった。


 車の体力がなくなると5秒くらい再スタートできなくなる。


 そのすきに琴音が春原を追い抜く。


「ウェーイ、ザマァww。スノハラばいばーい」


 春原のアイテムには引っかかるものの目の前に迫るゾンビの攻撃は持ち前の反射神経でかわせているし、攻撃して倒すこともできている。


 二人で最下位争いをしているが俺と小さいころからゲームをしている経験の差から琴音が一歩リードしている。


 1ゲーム目の結果は俺が1位、琴音が10位、春原が最下位の12位だった。


「スノハラおっそ。ザーコ、ザーコ」


 どんぐりの背比べだが春原に勝ったことが余程嬉しいのか、琴音が勝ち誇っている。


「まだ1回じゃない。たった1回の勝負で自分のほうが上だと思わないでほしいわね」


「1回でも勝ちは勝ちでーす。

 スノハラにテスト勉強で散々バカにされていたのを少しだけ発散できたよ。このままスノハラに勝ち続けて格の違いを見せつけて、これまでの鬱憤をはらす!」


「そうはさせないわ。勉強だけじゃなくてゲームでも私のほうが上だと教えてあげるわ。

 佐々木くん、スタートダッシュの方法を私にだけ教えて」


 ゲームとかは春原はあまり好きではないと思ったがかなり楽しんでくれているし、本気で勝ちにいこうとしている。


「ミッチー、スノハラには教えないであたしにだけ教えて」


「簡単だからどっちにも教えてやるよ。スタートの合図の3、2、1の2のところでアクセルのボタンを長押ししてスタートしたら離す、それだけ」


「了解。もう1度同じステージでお願い。次は勝つわ」


「負けたばっかで同じステージでいいの? スノハラって学習しないの?」


「学習しないのはあなたよ。それを結果で出してあげる」


「へー、それは楽しみ」


 お互い火花をバチバチ散らしている。楽しんでくれて何よりだが、もう少し仲良くしてほしい。殴り合いにはならないでね?


◆◆◆


 第2ゲーム、全員がスタートダッシュをうまく決める。2人ともさっきでステージは1度見ているから走り方に迷いがない。


 春原も琴音も最初はCPUと横並びだったがアイテムの攻撃を受けて一気に後ろに下げられる。


「この赤い甲羅避けられないの? 射線から外れたはずなのに追っかけてくるんだけど?」


「それは避けられない。車の後ろに防御としてアイテムをくっつけるか他のアイテムをぶつけるしかない」


「だからスノハラみたいな下手くそでもあたしにアイテムをぶつけられるんだね」


「煽っているようだけれど、今は竜胆さんのほうが順位下だからね」


「それはどうかな?」


 琴音は「ごまかしていく~」と言いながら加速するアイテムのキノコで春原に並んだ。


「しぶといわね」


 春原と琴音は一進一退の攻防を繰り広げている。


 やや琴音に劣っているが、春原もかなり善戦している。ゲームの経験があまりないようだがそうには見えない。


 琴音がゾンビの攻撃をかわしたり、銃とアイテムでゾンビや他のプレイヤーを攻撃するのが上手いことに対して、春原はインコースをきれいに走る運転技術やアイテムを使うタイミングや罠としての使い方に優れている。


 琴音とのゲーム経験の差を春原は細かい技術でカバーしている。


「あれれ~? スノハラの攻撃全然当たってないよ?」


 琴音の真後ろにいる春原が銃で攻撃しているが一向に当たらない。このゲームで使う銃はオマケ要素みたいなものだ。ゾンビに効果はあるがプレイヤーに一発当てても大きなダメージにはならない。そもそも走りながら走っている車に銃の照準を当てることが難しい。


「くっ、弾切れだわ」


 春原は攻撃を諦めて自分の走りに切り替える。


「ふっふっふ。銃はこうやって使うんだよ」


 琴音はわざと減速して春原の後ろに回り込む。


 琴音の操作する車から手が伸びて銃で攻撃を始める。


「なんなの! 私の攻撃は全然当たらないのに! ちまちま体力ゲージが削られるのもイラつくわ!」


 春原の体力ゲージを半分以下にしたところで琴音は弾切れになり、追い抜かす。


「春原、落ち着け。あんなにうまく銃を使える初心者は初めて見た。銃の操作ってかなり難しいはずなんだけどな。

 それにすごいのは春原もだ。ゲーム経験がないにも関わらずここまで食らいつけているのは誇っていい」


「そう言っているけれど、あなたはまた1位になりそうね。なんだか上から目線でムカつくわ」


 素直に褒めてやったのだが春原はお気に召さなかった。まあ、勝負に熱くなっている証拠と受け取っておこう。


 2ゲーム目も琴音の攻撃を対処することができず春原が負けた。


 俺が1位、琴音が8位、春原が9位だ。


「しゃあ、あたしの勝ち!」


「また負けた、屈辱……」


 琴音はガッツポーズ、春原は唇を噛みしめている。


「また同じ結果になったね」


「うるさいわね。伸びしろでは私の勝ちよ」


「負け惜しみですか~。スノハラ哀れ~」


「佐々木くん、もう1回このステージ。次こそ竜胆さんに勝つわ」


「お前は意外と負けず嫌いなんだな」


 春原むっとして反論する。


「別に負けず嫌いというわけではないわ。竜胆さんに一方的に負けているのが嫌なだけよ」


 それを負けず嫌いというのではないか。


「あたしはもう1回同じステージでもいいけど、スノハラはもう相手にならないからそろそろミッチーを倒したいな」


「聞き捨てならない言葉もあるけれど同意。2連続で1位を取っているから、引きずりおろしたいわね」


「100年早えーよ」


 そうは言ったものの操作が難しいこのゲームを1レースこなしただけで順位を上げたのは二人の飲み込みが早いからだ。数をこなせば俺に並ぶことがあるかもしれない。


◆◆◆


 同じステージを選び3ゲーム目を始める。


 スタートダッシュを全員きれいに決める。さっきとは異なり琴音も春原も取ったアイテムをすぐに攻撃に使うのではなく、一旦車の後ろにセットして後方からの攻撃の防御に使う。


 幸運の女神が微笑んだのは春原だった。3個の赤甲羅を手に入れた。春原の車の周囲には3個の赤甲羅がぐるぐる回っている。赤甲羅を温存したまま琴音の真後ろに迫る。


「行け!」


 1つ目の赤甲羅で防御に琴音が使用していたアイテムを剥がす。その瞬間に2つ目の赤甲羅で攻撃をするも琴音はすぐに別のアイテムを車の後ろにつけて防御する。琴音のアイテムは尽き最後の3つ目は食らう。


 琴音の車にクラッシュした演出が入る。


「お先に失礼するわ」


「ちょっと待ちなさい!」


 琴音はすぐに再スタートをするがなかなか追いつけない。


 春原がダブルアイテムボックスの目の前に必ずと言っていいほどバナナなどの罠アイテムを置くから、後続のCPUや琴音はアイテムを取りにくくなっている。


 アイテムだけでなく春原は単純に素の走りが早い。インコースを取り、カーブでの減速は最小限だ。さらに、おそらくだが、相手の車の真後ろを走ると若干車の速度が速くなることに気づいている。


 琴音を1度抜かした春原はそのまま差を広げ逃げ切った。


「私の圧勝ね」


 順位は俺が1位、春原が4位、琴音が7位だ。春原はコツを掴んだようで順位を大きく上げた。


「なんでさっきまであたしより下手くそだったのに急にうまくなってるの!」


「学習能力の差、かしらね」


 不敵な笑みで琴音を挑発している。歯噛みして悔しがっている琴音にさらに追い打ちをかける。


「考えてプレイできる人間とそうでない人間の違いが浮き彫りね。私は計算通りに自分の運転ができるから次のレースでも同じ走りができるから、もう2度と竜胆さんみたいな雑魚には負けないわね」


「言ってくれるね。

 でもどうせズルしたんでしょ?

 白状しなよ、ベータ上がりのチーター……ビーターだ、ビーター!」


「典型的な負け犬モブキャラセリフをありがとう。そういう自分の敗因を分析できないところが笑えるわ」


「ほんとーにムカつく!

 まだ一回しか勝っていないんだから調子乗らないでよ」


「ここからは全部私が勝つわ」


「口ではどうとでも言えるね」


「そうね。結果で見せてあげる。佐々木くん次のレースを始めて」


「はいはい」


 2人仲良く(?)ゲームを楽しんでくれて嬉しいのだが、もう少し俺の成績に反応してくれてもよくない? 3連続で1位だよ?


◆◆◆


 何度もステージを変えてレースをした。2人の勝負はシーソーゲームだった。運転技術が安定している春原が勝ち続けると思っていたが、レースを重ねるごとに琴音の技術、というか野生の勘みたいなものも研ぎ澄まされてきて走りも安定してきた。


 俺は1~3位、春原と琴音は3~7位あたりの順位が多い。


「次で最後のレースにするか」


 日の傾きが下校時刻を教えてくれる。


「ええ。竜胆さんが逆転できるチャンスがなくなるのはかわいそうだけど」


「あたしのほうが勝ってるから」


「いいえ、私のほうが勝っているわ。あなたの低レベルな脳みその記憶が間違っているわ」


 こいつら仲いいな。レースの合間に毎回煽り合っている。ずっと目線で火花を散らしている。


「ステージは公平にランダムにするぞー」


 2人のいがみ合いを無視して俺はステージ選択をランダムにする。


 選ばれたステージは「ラクーンタウン」だった。


 ウイルスが町全体に蔓延しており、被害の拡大を抑えるためにアメリカ政府が町ごと爆破しようと計画していた。主人公たちは町全体に配置された爆弾を撤去しようとするが時間が間に合わない。爆破の阻止から町からの脱出に切り替える。溢れるゾンビから逃げながら町を脱出するストーリーである。


 ラクーンタウンは全ステージの中で最も距離が長いにも関わらず、アイテム数は他のステージと差はない。だから素の走りとアイテムの使い方が重要になってくるから春原に有利なように思われる。


 しかし、アイテムは少ないがゾンビの数は多い。攻撃が得意な琴音もゾンビを倒してアイテムを手に入れれば十分に勝機はある。


◆◆◆

 

 最終レース開幕で春原だけがスタートダッシュをうまく決められず出遅れる。


「スノハラどうしたの笑? もしかしてスタートダッシュのやり方忘れちゃったの?

 教えてあげようか? あ、でもこれ最終レースだった。もう取返しつかないね」


 春原のミスを見逃さず指摘する。


「うるさい。黙って見てなさい」


 ミスした春原は焦りなど全く見せずに静かににプレイしている。まるでこれが計算のうちだと言うかのように。


 だが1周目の結果は俺が1位、琴音が6位、春原は12位である。


「1周目終わったけど春原はまだビリなの? ウケる」


「……」


 琴音の挑発に乗らず春原は黙って画面を見ている。時折、俺のほうにも視線が向けられるが操作テクニックでも盗もうとうしているのだろうか。テクニックはワンプレイで簡単に身につくものではないからあまり意味はないと思うが。


 2周目が終わった。


 2周目の順位は俺が1位、琴音が3位、春原が12位である。


 ファイナルラップである3周目に入って春原が動き出した。


「スター出た、ラッキー!」


 琴音はダブルアイテムボックスを通過しスターとキノコを手に入れる。3位の琴音にスターが出たのは1位の俺との差が大きいから低い確率ではない。


 そして琴音がスターを使った瞬間に春原は自分の持っていたサンダーを使う。使用者の春原とスターで無敵状態の琴音以外がアイテムをなくし、小さくなりスピードも落ちる。スター状態で加速している琴音が俺との差を一気に縮める。


「スノハラナイス!

 ミッチーもこのまま追い抜くよ!」


 琴音が俺の背中を捉えて銃で攻撃してくる。


 小刻みに動いてかわしているがすべては避けきれず、徐々に車の体力がゲージが減り、速度も落ち始める。


 この状況ならキノコを使えば追い抜けそうだが、琴音はキノコを使わずに体力ゲージを減らすことに専念している。


 まずいな。最後の周とはいえこのコースは1周が長い。このままだとジリ貧だ。


 加速アイテムが欲しい。最後の週の中盤に加速アイテムがあれば使えるショートカットがある。琴音はそれを知らないからそこで逃げ切れる。


 アイテムボックスを1つ通過した。


 こい! キノコ!


 出てきたアイテムはキノコ1つだった。


 1位だと強いアイテムが出にくいが、今はこれで十分。


「じゃあな、琴音」


「ミッチーどこ行くの⁉」


 俺はショートカットを成功させ、琴音との差を一気に広げた。


 この先のゴールまでのコースはアイテムボックスはないが、曲がり角やゾンビが多く純粋な運転技術が試される。


 俺にはイージーすぎる。


 琴音とのチェイスが終わって勝利を確信した俺は低順位だった春原の様子を確認する。

 

 おい、まじかよ⁉


 春原は今4位である。3週目に入った段階ではまだ最下位だったのに4位まで浮上している。しかも持っているアイテムは一定時間自動でコースを高速で走れるミサイル型のキャラクターになれるキラーと無敵状態になれるスターである。


 春原は順位が低いほうが強いアイテムが出やすいということに気づいて下位に潜伏していたということだ。しかも春原は強力なアイテムを温存したまま4位まで順位を上げた。長いコースとはいえ純粋な運転技術だけでここまで追い上げたのは驚異だ。


 おそらく琴音は春原に抜かされる。だが、俺は距離がまだ開いているからアイテムで追い上げるにはギリ足りない。


 ショートカットが使えればまだ勝算はあるが。


 いや、待てよ。


 思考がショートカットに至って春原が俺の画面を気にしていたのを思い出した。


 もしかして春原は俺の技術ではなくショートカットがどこにあるのかを探していたのではないか。


 その瞬間に春原はショートカットのコースに突っ込み、同時にキラーを使う。


 キラーを最高のタイミングで使用した春原はわずかな時間で2位まで追い上げ俺を抜かす射程圏内に入った。


「佐々木くんってまだゴールしてなかったの?

 それにあなたの車遅いわね」


 キラーの効果が切れるとすぐにスターを使う。琴音に体力ゲージを減らされた俺の車のスピードと体力マックスでなおかつスター状態の春原の車ではスピードに差がありすぎる。


 スターを使用して七色に光っている春原の車が迫っている。


 春原はスター状態で加速しているにもかかわらず減速せずにカーブを曲がり、俺に追いつき、そして追い越した。


 春原が鮮やかな七色に光ったままゴールテープを切って華麗な逆転劇は幕を閉じた。


「「イエーイ!」」


 なぜか、春原と琴音がハイタッチしている。


「素人に負けた気分はどう? 佐々木くん」


 振り返って春原は問いかけてきた。


 本人は余裕の表情で俺を見下しているつもりだろうが、逆転勝利を収めた余韻の笑顔を必死に抑えて澄ました顔をしようとしているのがほほえましく思える。


「どうもこうもないよ。完敗だ。お前、本当にこのゲームやったことないのか?」


「ないわよ」


「よくそれであの逆転方法が成功できたな」


 後方で強力なアイテムを狙って終盤で逆転する方法は「打開」と呼ばれている。テクニックとしては有名だが実現させる、ましてや1位を取るなんてかなりの難易度だ。


「私1人ではできなかった。竜胆さんのおかげね」


「琴音?」


 3人で部室でずっとゲームしていたが、2人が作戦会議をしている場面なんてなかった。


「この勝利はあたしのおかげで成り立ったんだから感謝してよね」


「どういうことだ?」


「あたしが説明してあげよう」


 自分の功績を知ってほしいらしく大仰な仕草で俺に説明を始める。


「まず、あたしがスノハラが何か狙っていると思ったのはスタートダッシュを失敗したところ。スノハラがしないようなミスをしたから逆に何か狙ってるって思った。

 狙いがあることを確信したのはスノハラがサンダーを使ったとき。あれは確実にあたしを援護するタイミングだった。そこでスノハラが見据えているのはあたしじゃなくてミッチーだって思った。

 そこからあたしがミッチーを追い越すんじゃなくてスノハラが追い越しやすいように車の体力ゲージを減らすようにした」


 琴音がキノコを持っているにも関わらず、抜かさず後ろから体力ゲージを減らし続けていた理由はそれだったのか。


「竜胆さんには感謝しているわ。体力ゲージを減らしてくれたおかげで佐々木くんの車の速度が落ちて最後に抜かすことができたのだから」


「やっぱりお前らってなんだかんだ仲良かったんだな」


「違うよ、ミッチー。敵の敵はラスボスって言うでしょ」


「結局敵じゃねーか。それを言うなら敵の敵は味方、な」


 言葉を交わさずに春原の行動の意図を読み取って、実行した頭脳プレーを見て琴音のことを見直したが違うようだ。


 琴音は野生の勘で動いただけだ。小さいころから武道をやっていて真剣勝負の機会が多かったから勝負どころを感覚的に見抜く力があり、それが発揮された。


 堂々と自分の行動を解説していたが後付けだろう。


「まあまあ、細かいことは良いではないか。

 最後の試合の功労者にして勝者はあたしだね」


「何を言っているのかしら?

 1位は私よ」


「形式的にみればそうだね。

 でも実質的な勝者はあたしだよ。スノハラはあたしがいなければ勝てなかったんだから。

 あたしの立場は試合に負けて勝負に勝ったって感じだよ。

 つまり実質的な1位はあたし!」


「いいえ、竜胆さんの助けがなかったとしても別のプランを練って私は勝てた」


「勝負が終わった後ならなんとでも言えますからね~」


「そこまで言うなら竜胆さんの助けがなくても勝てることを今から証明してあげる。

 佐々木くん、もう1レースやるから準備して」


 あーあ、また2人でバチバチやってるよ。喧嘩するほど仲が良いってやつか。


「やらねーよ。もう下校時刻だ。帰るぞ」


 春原と琴音がいがみ合っているのを聞きながら俺はゲームのソフトやコード、コントローラーを片付けた。


読んでいただきありがとうございます!


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次回の投稿は5月31日です!

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