食の改革
『いいか?コントロールしろよ?倒れるなよ?やりすぎるなよ?できるか??』
『もー!わかってる!集中するから静かにしてて!!』
よほど心配らしい。
クロがわたしの周りをウロウロする。
わたしは、大きく深呼吸して、乱れた息を整える。
そして、しゃがみこみ、地面に両手を当てた。
「開花!成熟の玉蜀黍!蕃茄!人蔘!豊かに実れ!!」
ッボン!ッボン!ッボン!
5メートルになるだろうか、目の前に野菜畑が出来上がった。
「ふぅ〜。じょうでき!」
魔力は…まだある!コントロール成功!!
額の汗を拭ったところで、頭上が曇った。
「ミアはやっぱり天使なのね!どうなってるの?!」
「…なぁベル、俺、幻が見える。これは夢か?」
「夢なんかじゃないわ!つねったほっぺが痛いもの!」
「うわぁ〜!王都でしか見たことない野菜がいっぱいだ!」
「すごいの〜たべていい?」
「…何これ…すごい…」
『…。魔力まだあるってお前、加減してこれか?』
いつの間にか、全員追いかけてきたらしい。
みんな感動している。クロ以外は。
「みんな、落ち着きなさい。」
院長がパンッと手を叩くと、一斉に声が止んだ。
「ミア、身体は大丈夫なの?!どこか痛いとか、苦しいとかない?」
ないよ、と答える前にぎゅっと抱き寄せられ、耳元で囁かれた。
「聖女エリザが唱える。精霊の息吹をここに。愛し子を癒やしたまえ回復」
どこからか、ふわっと風が吹いて、身体が軽くなるのがわかった。
身体が軽い!これが回復魔法!?
さっき聖女って言ったけど、院長は聖女なの?
それより精霊ってどこ?どこにいるの?見たい!!
鼻息が荒くなるわたしに、院長は「しー!」と唇に指を当てた。
「魔法のことは、あとで話をしましょうね。それで、あれは食べられるのですね?」
院長が野菜畑を指差す。
その目はギラリと光り獲物を狙うかのようだ。
「ん〜!天使ミアが取ってくれた蕃茄が一番おいしい〜」
「はーうまかった!よし!おかわりだ!!」
「っごくん!ジン、私の分もお願い〜」
「ジン兄はや!僕、先におかわり取ってくるよ。ロッテ何がいい?」
「とうもころしもっと〜」
「…これも…甘い…全部…おいしい」
「これ、本当に人蔘?なんて甘いの!」
『はぐはぐはぐっ!俺もおかわりだ!!』
子ども受けNo. 1の理由でセレクトした玉蜀黍は、一粒一粒がぷっくりしていて、ぷちぷち食感も良い感じ。
一口噛めばやめられない果物みたいな甘さが広がる。
うん、明日はこれでコーンスープにする。
次に、栄養素的にセレクトした人蔘。濃厚だけどさらっと甘い。今日は茹でたけど、生でもいけちゃう。
嫌われやすい野菜だけど、みんなキレイに完食している。
うん、おやつにキャロットケーキ作ろうか。
最後に、個人的に食べたかったからという理由でセレクトした蕃茄。
酸味と甘味がちょうどいい。
皮は剥かない派、皮につく果肉がもったいないのだよ。
かぶりつくと汁が飛ぶけど、ご愛嬌ということで♪
全部みんなに大好評で嬉しい!みんなのためになる魔法が使えて嬉しい!
わたしは、とびっきりの笑顔で、再び蕃茄を頬張った。
玉蜀黍と人蔘を蒸したのは、院長とベル、蕃茄を切ったのはジンとジェシカです。
そうです、ジンは切るだけしかできませんw