衣食住のうち最優先は
石壁の隙間からビュービューと音を立て、冷たい風が肌を刺す。
ガタガタと音を立てる窓ガラスは、至る所にヒビが入っていて、今にも割れそうだ。
暖炉は起動しているのが不思議なくらい薄汚れていた。
「食堂はこっちよ」と院長に手を引かれて、院内を見回したわたしは、あまりの貧相さにあんぐりと開いた口が閉まらない。
なにこのみすぼらしい建物は!!
どうして国は何もしないの? !
朝ごはんを食べたら、「住」から手をつける!改築するんだから!
わたしは拳を強く握った。
連れられた部屋は、これまた古びた広間だった。
触れただけで軋む音を立てるテーブル。
その上には、すでに食器が並べてあった。
「わぁ!今日は牛乳がある!天使のおかげありがと!」
「…牛乳?」
「俺が朝から買いに行ったんだぞ!」
「ミアの歓迎会にって院長が奮発したのよ。」
「今日は豪華だね!」
「ごうか〜!」
後ろから追い抜いてきた子どもたちの歓喜に耳を疑った。
奮発で牛乳?
これが豪華?
目を見開いていると、院長が椅子をひいた。
「今日は私の隣にーー」
「アクア!アクアの隣にきて!ね!ね!」
「…ミアの隣…」
「順番だぞ!年齢順だから今日は院長で、明日は俺だ!」
「ジン…。そこは譲りなさいよ。」
「僕は待てるよ!待てる男はモテるからね!」
「ロッテも!ミアのとなりがいい!」
ぎゃあぎゃあと言い争う声など耳に入らない。
みんなの前にも置かれた椀の中身が、とても食べ物には見えないからだ。
黒ずんだ葉のかけらは食べられるはっぱ?
魚の骨が見えるけど何の魚?
得体の知れないふやけた何かが浮いてるんだけど…。
「なにコレ」
「スープよ?おかわりがなくてごめんね」
うっかり声に出ていたらしい。
院長は、眉を八の字にして申し訳なさそうに謝った。
「ちがう!いんちょうわるくない!わるいのはこのくに!」
バンッと怒り露にテーブルを叩き、外へと駆け出す。
信じられない!この国はこの子たちをなんだと思ってるの!国は人でしょう!子どもは宝でしょう!
前言撤回!「食」から改革を起こす!
ークロ!聞こえてるんでしょう!やるわよ!!
子どもたちは、アクア、ジェシカ、ジン、イザベル、テオ、ロッテの順で会話しています。
よければ2話前から読み返してみてください。