第74話 魔物の島のダンジョンを攻略
【異世界生活 53日 11:00】
明日乃に結界魔法と全体補助魔法をかけてもらい5階のラスボスに挑む。
ボスはレベル21のリザードマンを模したウッドゴーレムだ。
中級魔法を使われる危険性があるので、結界魔法を張って強行する感じだ。
「いくぞ」
「ああ」
俺がかけ声をかけ、一角が返事をし、みんな頷いて、扉を開けて走り出す。
このまま、結界魔法を頼りにボスに近接、俺と麗美さんで結界内から一気に倒し、あとは散開して残りの4体を倒す感じだ。
問題は敵がどう動くかだな。結界を理解し、逃げるか向かってくるか?
とりあえず、明日乃のペースに合わせて5人で結界から出ないようにしながら走る。
とりあえず、敵は逃げて時間稼ぎをする作戦をとるようだ、5対のウッドゴーレムが散開する。
そして、5体同時に魔法を放ってくる。
麗美さんの使える魔法、『氷矢の連撃』と『氷の矢」が4発だ。
激しい衝撃に結界が少し揺らめく。
「りゅう君、今の攻撃で結界張り直しさせられちゃったよ」
明日乃が息を切らせながらそう報告してくる。
「マズいな、こんな攻撃繰り返されたらお祈りポイント尽きるぞ」
俺はそうつぶやく。
「それは問題ありません。ウッドゴーレムの魔法は、魔物達と同じ方式、マナを使って魔法を発動する『原初魔法』でして、この方式の魔法は、一度使うと30分、体内のマナが乱れて、連射ができません。ウッドゴーレムもそれに準じ、魔法1回ごとにリキャストタイム30分という制限が付きます。もちろん、リュウジ様達もお祈りポイントではなくマナで魔法を使った場合は体内のマナの乱れが収まるまで30分間次の魔法が使えません」
秘書子さんが忙しい時にそんな説明をする。
「秘書子さんの話だとマナを使った魔法は30分間次が撃てなくなるらしい。詳しくは後で説明するが、魔法は気にしなくてよくなった、予定通りの作戦でボスを倒すぞ」
俺はかいつまんで説明し、そのまま結界と一緒に走り続け、ボスを壁際に追い込む。
ボスのリザードマン型ウッドゴーレムが、壁際に追い込まれ、観念したのか、俺達に向かってくる。
ボスは、この間倒した、リザードマンの首領らしき奴が着ていた青銅の鎧と同じような鎧を着ている。ただし、ダンジョンを管理する精霊のサービスなのか、兜は無しで弱点の核はむき出しだ。
「青銅の防具はとりあえず、麗美さんにひと揃えしてもらいたいから麗美さんがボスを倒してくれ」
俺は鎧を見て思い出したようにそう言う。
「了解よ、流司クン」
麗美さんがそう言って、ハルバードを構える。
まずは、俺が、青銅の盾で、ボスの両刃の斧を受け、首に斬りかかる。しかし、首は太く、木製で、傷がついた程度だ。
だが、そのダメージで、一瞬ボスの動きが止まる。
麗美さんにはその一瞬で充分だった。
俺の横をすり抜けるようにしながら、ハルバードを振り上げ、まっすぐ、ボスウッドゴーレムの額にある核を頭ごと叩き割る。
「よし、あとは、取り巻きのウッドゴーレムを各自倒せば終わりだ」
俺がそう言うと、明日乃以外の4人が四方に展開、結界を避けるように4つ角に逃げていたリザードマン型ウッドゴーレムに向かい走り出し、それぞれとどめを刺す。
一つ目のダンジョンの素早さ特化のワーラビット型のウッドゴーレムと違い、このダンジョンのウッドゴーレムは平均的なステータスなのか、純粋にレベル差が力の差になるようだ。しかもこちらは補助魔法がかかっている。1対1なら、誰も負けることはない。
「結構あっさりいけたわね」
麗美さんが気の抜けたようにそう言う。
「明日乃の結界があったしな。一つ目のダンジョンが強すぎたんだよ」
俺はそう言って笑う。素早さ特化は本当に性質がわるかったもんな。
「麗美姉、ドロップアイテム、青銅製の胸鎧だぞ。よかったね」
一角がそう言って、ボスが落とした青銅の防具を拾う。
他のウッドゴーレムは粗悪な青銅の槍かトカゲの肉を落とす。
「トカゲの肉はいらないんだけどな」
俺はがっかりする。
「まあ、もし、私達の島も食糧難になった時は、このダンジョンに潜れば最悪、カエルの肉とトカゲの肉が手に入ることは分かったんだから、飢えることはなくなったぞ」
一角がそう言って笑う。
「カエルの肉は食べたくないわね」
真望がそう言い、明日乃も嫌そうな顔で頷く。
まあ、本当に食料に困ったときはいいかもしれないな。あと、魚の肉も手に入るしな。
「それじゃあ、メインディッシュといきますか?」
麗美さんが嬉しそうに言い、ボス部屋の奥にある部屋をめざす。
みんなも慌ててドロップ品と木箱の青銅の槍の穂先だけ回収し麗美さんを追いかける。
ボス部屋の奥にある扉を開けると少し小さい部屋があり、その中央には石の台座があり、その上に、見慣れた金属製の筒が安置されている。
『水の精霊の迷宮を攻略した者への褒美として水の精霊の加護を宿した武器を与える』
石の台座にはそんな文言の書いてあるプレートが張ってある。一つ目のダンジョンと全く一緒だな。
ただし、この台座にはちゃんと変幻自在の武器が安置されている。
「本当はこんな感じで手に入れる物だったのね」
麗美さんがそう言って、俺が貸していた変幻自在の武器を俺に返してくれてから、ゆっくり石の台座の上にある筒を手に取る。
「俺の武器と違って、少し青いんだね」
俺は麗美さんが手に取った少し青みのかかった金属の筒を見ながらそう言う。
そして麗美さんは慣れた感じで、その青い筒を日本刀のような反った片刃の件にする。
「なんかしっくりくる気がするわ」
そう言って、麗美さんはその剣を軽く2~3回振る。
「おう、水の精霊のダンジョンも攻略したのか。早かったな。そしておめでとう」
そう言っていつもの日本人顔の半透明のおっさんが光りながら現れる。
「そして、なんか悪かったな。一つ目のダンジョンを難しくし過ぎたみたいで、このダンジョンが肩透かし食らったみたいになってしまって」
神様が申し訳なさそうにそう言う。
「ボス部屋で魔法使われること以外は一つ目のダンジョンの方が難しかったもんな」
一角が神様を責めるようにそう言う。
「悪い悪い。ウッドゴーレムって木製だろ? だから、素早さ特化にすると、木の硬さで自動的に防御力もある素早さ特化のウッドゴーレムになるなんて考えてもいなかったんだよ。しかも、このダンジョンは逆に防御力特化にしたつもりが、ウッドゴーレム自体の木の硬さのせいでたいして目立たず、防御を上げた分、のろまになったウッドゴーレム。そりゃ、最初のダンジョンより弱く感じるわけだな」
そう言って神様が笑う。
「というか、神様がダンジョンや魔物を作る理由が分からないんだけど? しかも魔物もダンジョンでレベルアップできるってどういう事?」
真望が直球で俺達が聞きたかったことを聞く。
「んー、まー、そうだな。前に秘書子さんが説明した通りだ。俺達神様の原動力となる信仰心、要はお前たちの願いの力なんだが、お前たちのレベルが上がるとその信仰心の量も増えるんだよ。だけど、倒す魔物がいないとお前たちのレベル上がらないし、魔物が弱いとレベルの上がりも悪いだろ? だから、魔物もレベルが上がるようにダンジョンを準備したって意味もある」
神様が顔の表情だけ申し訳なさそうにしてそう説明する。
「それに、秘書子さんの上司の神様、要はお前たちが元居た世界の神様が、異世界には魔物がいた方がいいっていうルールを作っちゃったから、俺の力じゃ魔物をどうにもできないんだよ。中間管理職の辛さってやつ? で、魔物がいるなら有効活用しようって、秘書子さんが言いだしてこうなったと」
神様は秘書子さんにも頭が上がらないらしい。部下なのか上司なのかよくわからないな。
この世界の神様の秘書っていうより、俺達のいた世界の神様の秘書ってことか?
この世界の神様は部長や課長で、秘書子さんは社長の秘書で社長から秘書を借りているみたいな感じなのかもしれないな。
俺は神様の口調からそんなことを想像する。
「せめて、武器はどうにかして欲しかったわ」
真望がさらに神様に不満を言う。
「まあ、魔物も必死に生きてるし、無抵抗でやられっぱなしもちょっと神様的に可哀想だろ?」
神様がそう言ってひたすら真望に謝る。
言っている意味が分からないが。
「とりあえず、魔物も必死で生き延びようと死ぬ気で襲ってくるから、お前たちも殺されないように必死で抵抗しろ。お祈りポイントの魔法で少し有利に戦えるようにしてあるし、無茶しなければ、そうそう死ぬことはないし、死なれると俺が困るしな」
そう言って、下手なウインクをするおっさん。
「とりあえず、神様や秘書子さんの上司の神様がこの世界のルールを決めちゃっているからどうにもならないって事でいいのかしら?」
麗美さんが今までの話を聞いてそう質問する。
「ああ、まあ、そんな感じだ。俺としてはお前たちにできるだけ協力するが、俺の力は世界を維持したり、成長させたりすることで精一杯であまり助けになるようなことはできない。そしてルール変更もあまりできない。お前達には今あるものと知恵を絞って何とか生き残り、魔物の数を減らし、そして自分自身を成長させて欲しい。勝手な話で悪いが頼むな」
神様がそう言って俺達に手お合わせて拝む。
神様に拝まれても困るんだけどな。
「それじゃあ、次は、この島の魔物を減らしつつ、このダンジョンで装備を固めて、南東にある3つめのダンジョンの攻略が次の目標だ。風の精霊の管理するダンジョンだから、イズミの武器が手に入るぞ」
神様がそう言って今後の方針を教えてくれる。
「ああ、それと、レイミ、お前の場合、持っている武器の正統な所有者だから、その武器で魔法を使うと精霊の協力でお祈りポイントが半分で済むようになるからお得だぞ、試してみろ」
神様がそう付け足す。
「マジか? そんなお得なら私専用の武器もすぐに取りに行かないと」
一角がそう言い、神様がその反応に満足そうな顔をする。
「ちなみに、リュウジもアスノも面倒臭い事したせいで、リュウジが持つ武器にはその効果はない。闇の精霊のダンジョンを攻略するまでお預けだな」
神様が冷やかすようにそう言う。俺はちょっとイラっとした。
「おっと、そろそろ、退散しないと、また力の無駄使いになる。それじゃあな、みんな。毎日のお祈りも楽しみにしてるぞ」
神様はそう言うと、背中を向けさっさと消えていく。
「私の魔法にかかるお祈りポイントが最後まで減らせないのは残念だね」
明日乃がそう言ってがっかりする。
「この変幻自在の武器の所有者が明日乃だって、最初に言ってくれればこんな面倒くさいことにならなかったのにな」
俺はそう言って神様と秘書子さんを恨む。
「まあ、とりあえず、帰りましょ? 拠点に戻って私の眷属ってやつを召喚したいしね」
麗美さんがうきうきでそう言う。
「そうだね。落ち着いたところで召喚した方がいいだろうね。そして、眷属がまた増えれば作業とかだいぶ楽になるしな」
俺はそう言って笑う。
実際、レオやシロが夜の見張りをやってくれることでみんなも熟睡できるようになったし、朝早くから作業できるようになったし、薪とか、必要なものをこっそり拾ってきてくれているから助かっているんだよな。作業の手伝いも簡単なものならしてくれるし。
「眷属の手が肉球じゃなかったらもう少し色々できるんだけどね」
真望がそう言ってため息をつく。
麻糸を紡いだり麻布を織ったりする細かい作業はさすがにレオやシロにはできないからな。肉球は見かけ通り不器用だった。
「まあ、肉球、可愛いし、いいんじゃない?」
麗美さんはあまり気にしていないらしい。
「じゃあ、帰ろう。荷物もいっぱいだし、お祈りポイントもだいぶ減っちゃったし、これ以上の魔物狩りは難しそうだしな」
俺はそう言って、魔物狩りとダンジョン探索の終了を宣言する。
次話に続く。




